~ 自動車ガラスは安全ガラス ~



      自動車のガラスは『安全ガラス』なんです。




もしも自動車の窓に、建物に使われているような普通のガラスが取り付けられていたとしたら、事故が起こってガラスが割れた場合に大変な怪我をしてしまいます。

考えるだけでも恐ろしいですね。


ご安心ください。


自動車のガラスは、建物に使われている普通板ガラスと外観は変わりませんが、まったく違う性質を持った『安全ガラス』なのです。


「普通板ガラス」は、割れると、その端部は刃物よりも鋭利で非常に危険です。


自動車には、万が一割れても、乗っている人に大きなダメージを与えることの無い、『安全ガラス』が取り付けられています。





『安全ガラス』ってどんなガラス?




安全ガラスには大きく分けると、合わせガラス強化ガラスがあります。




合わせガラス



主にフロントガラスに使われています。

2枚のガラスを張り合わせ、中間にポリビニルブチラール(PVB)という透明のフィルム状の膜が挟み込まれています。

この膜があることによって、ガラスが割れても飛散せず、破片の端部が露出することがありません。


また、運転者や同乗者が、頭部をフロントガラスに強打した場合でも、突き抜けることを防ぎ、致命的な怪我を避けることが出来ます。



強化ガラス


ドアガラスやリヤガラスには強化ガラスが使われています。


  強化ガラスは衝撃に強いので、割れにくいという点で安全なガラスです。

万が一割れた場合でも、破片が粒状になるので、怪我をする危険性が格段に少なくなります。


強化ガラスは、以前はフロントガラスにも使用されていましたが、割れた場合、一瞬にして全面にヒビが走り、視界が妨げられてしまいますので、走行中に割れると非常に危険でした。


1987年以降生産の新車には、法令によりフロントガラスには必ず合わせガラスが装着されるようになりました。



『自動車用安全ガラス』については

    日本工業規格 JIS  R3211 に詳細に規定されています。

  


強化ガラスってどんなガラス?



【どんなところに使われているの?】


街を歩いていると視界の中にガラスが存在しない瞬間はほとんどありませんね。様々なところに使用されているガラスですが、安全のため強度が必要なところには、強化ガラスが使われています。

では、どんなところに使われているのでしょうか?


二つの代表的な例を挙げてみます。


1. デパートや銀行、コンビニ、商店の入り口の扉でエッジ部分(ガラスの端部)がむき出しになっているガラス。


2. 自動車のドアガラス(前面のガラス以外の部分)



◇◇ グラスマン 魂 ◇◇


1の店舗の入り口は、お店の中がよく見通せるように、サッシの部分を出来るだけ少なくしてガラスだけの構造にしたいという設計者の思いがあります。そのために、扉のガラスをサッシにはめ込まずに、むき出しの状態で使用しています。したがって、ガラス単体で十分な強度を持たせることが必要となり、主に厚さ12ミリの強化ガラスが使われています。


2の自動車のドアガラスは、常にいろいろな衝撃を受ける環境にあります。ドアの開閉、パワーウィンドの開閉、事故による衝撃、盗難による衝撃など、普通のガラスでは強度が足りませんので、強化ガラスが使用されています。







【どのくらい強いの?】



同じ厚さの普通の板ガラスと比較すると、強化ガラスは、35倍の衝撃強度があります。

素手でたたいたくらいでは到底割れません。12ミリの強化ガラスは、大人が野球のバットでたたいても、跳ね返されてしまい、割ることは出来ません。また、熱に対しては5ミリの普通板ガラスが使用限度60℃であるのに対して5ミリ強化ガラスは170℃となっています。







【強化ガラスの作り方】



普通板ガラスを仕上がり寸法に切断します。(強化加工した後は切断できません。)

加熱炉で軟化温度(650℃)まで加熱する。

表面に冷却された空気をいっきに吹きつけ、急冷する。






【急冷すると『何故』強くなるの?】




鉄も焼入れをすると硬くなりますが、どのようなメカニズムで強くなるのでしょう?

冷気を吹き付けることによって軟化していた板ガラスは表面部分が中心部よりも先に固まります。その後中心部に近い部分が徐々に固まってゆきます。

 ガラスは固まってゆく過程で収縮します。表面部は急冷されるので収縮率は小さく、中心部はゆっくり固まってゆきますので、収縮率が大きくなります。

 表面部分が固まった後も、中心部分はさらに収縮してゆくので、表面部には引っ張ろうとする力が生じます。つまりガラス表面と中心部の収縮率が異なるので表面に引張応力が生じることになります。



  ← ← 引っ張り応力 → →  

 → →  縮もうとする力  ← ← 強化ガラス断面 

← ← 引っ張り応力 → →


図1.強化ガラス内部の残留応力


                





【障子紙のメカニズム】


何故、ガラスの表面に引っ張る力が残っていると強度が増すのでしょうか。

引っ張り応力について、理解しやすい考え方があります。


最近はあまりすることが無くなりましたが、障子紙の張替え作業の様子が参考になります。障子紙を貼ったあとに霧吹きで水をかけます。 紙は乾くと縮むので木枠にひっぱられるかたちになり、太鼓の皮のようにピーンと張った状態になります。強化ガラスの表面はこのような状況になっているのです。

 幕を強い力で引っ張り、ピーンと張ることによって、外部からの衝撃をはねかえしてしまうのです。力いっぱい振り下ろした「ばち」を跳ね返してしまう太鼓の皮のようなイメージです。





 不思議な割れ方 


【割れると全体が粉々になります】


強化ガラスも強度には限界がありますので、限度を超える大きな力が加われば割れてしまいます。そしてその割れ方に不思議な特徴があります。一ヶ所に限度を超える衝撃が加わるとひび割れが瞬時に全体に広がり粒状の破片となります。したがって普通板ガラスのように割れた破片で大怪我をする危険がありません。

 強化ガラスには、出荷の際、JISマークが刻印されますので、四隅のうちどこかにマークがありますので、時間があったら探してみてください。



ガラスが『平ら』なのは何故だろう


自動車や建物に使われているガラスはどれも厚さが均一で、ほぼ完全な平滑面です。

 身近にあって見慣れているものなので、不思議に感じることはないと思いますが、ちょっと考えて見ます。


           ◇ ガラスが凸凹だとどう見える? ◇


 湖や池の水面に映る景色は、無風で波が無く水面が平らなときには、まさに鏡のように映りますが、小石のひとつでも投じれば、波紋によってたちどころにその映像は乱れます。

ガラスを通してみる映像も同じように、ガラスが平らであることで向こう側の景色が自然に見えるのです。


 ビルやショーウィンドウの大きなガラスは、平坦で厚さが均一であることによって向こう側の景色や商品が自然に見えています。


では、何故板ガラスはゆがみも無く平らなのでしょう


             その理由はガラスの製造方法にあります。



          ◇ 溶けたガラスを浮かばせる?


            目からうろこの『フロート製法』


 溶解窯で約1600度の熱で溶解したガラスをガラスより比重の大きな溶融金属(すず)の上に連続的に流し込みます。ガラスは浮かびながら広がり、流れてゆく過程で温度が下がり、固化し、完全な平面で均一な厚みとなります。1959年にイギリスのピルキントンブラザーズ社によりこの製法が開発されました。


日本でフロート窯を持っているガラスメーカーは、

旭硝子、日本板硝子、セントラル硝子の3社です。


      ~ ガラスは 何故 透明なのか ~




なぜ、硝子の向こう側にあるものが見えるのか、不思議に思ったことはありません   か?

ちょっと理屈っぽい話になりますが、考えて見ましょう。





                 ◇ 透明とは? ◇


ある物質の向こう側から観測者側へ光(可視光線)が吸収や散乱をせずに透過するとき、その物質は可視光線に対して透明ということになります。


 そして光は電磁波の一種であるということを念頭に置くと判りやすくなります。


つまり人間にとっての透明の物質とは、可視光線(波長:380nm~780nm)と呼ばれる領域の電磁波を透過する物質ということになります。




           ◇ 私たちが感じている 光 と 色 ◇


私たちは普段、光や色をどのような仕組みで感じ取っているのか考えて見ます。

物体に光が入射されると、特定の波長の光は吸収され、それ以外の波長の光は反射されます。そして物体によって反射、吸収される波長は異なります。


一方、観測者側では、眼球を通って網膜に達した光を感じ取ります。

感じ取った光をその波長によって脳がそれぞれの色として認識します。そしてその物体が何色であるかを判断しているのです。



            ◇ 色は脳の中で作られる ◇


つまり、光(電磁波)そのものに色は付いておらず、観測者が受信した電磁波の波長によって、脳が初めて色として認識し、その人が感じ取るのです。



人間が色として感じることの出来る波長は380ナノメートルから780ナノメートルの範囲で、色の順番は下記のようになっています。


         紫外線 380nm 紫 藍 青 緑 黄 橙 赤 780nm 赤外線


このように整理してみると、ガラスが何故透明なのか、理解しやすいのではないでしょうか。


人体の仕組みのすごさには驚かされますが

人間の網膜の画素数や脳の画像処理能力はコンピュータにたとえるとどのくらいになるのか興味深いところです。











透過率って何?


◇ 車検の規定

  フロントガラスと運転席、助手席のドアガラスは

  可視光線透過率が70パーセント以上無ければ

  車検は、パスしません。


◇ 可視光線とは

  太陽光線の中でも人間の目が感じることの出来る光のことです。

  この光によって明るさや色、対象物の存在を視覚として

  感じることが出来ます。


   見ようとする対象物との間に何も無い状態のときは

  透過率100パーセント

  光を通さないもので遮った状態を

  透過率0パーセントとします

  その間の透過率の度合いを

  パーセンテージであらわしたものが

  可視光線透過率となります。


◆ 可視光線透過率測定器

  写真のような測定器でガラスを挟み込み

  透過率を測ることが出来ます。

  デジタル式なので、車検の合否もはっきり

  出てしまいます。


  透明のフィルムを貼っても透過率は

  わずかに下がりますので要注意です。 


◇◇ グラスマン 魂 ◇◇-透過率測定器1