ただの日記だよ😉

サドの『美徳の不幸』、いわゆるジュスティーヌ物語は、彼女が美徳あふれる精神で生きていこうとしたばっかりに不幸に見舞われ続けるという小説である。
(私が読んだのは岩波文庫版である)

彼女はまあ面白いほどに不幸に見舞われ、性的暴力を受け続ける。
サドの暴力描写はかなり過激なため、それでも生きているジュスティーヌの強靭さに感嘆するほどだ。エロ漫画のような強靭な肉体を持ったがゆえ、死ぬことも許されず苦痛を受け続ける、なんと優しいジュスティーヌ。彼女は美徳にあふれているだけで、決して幼少時に被害経験があるわけではないが、彼女がなぜ、恐ろしい人々の餌食になりつづけたのか、読者ならわかるであろう。加害者目線に立ったら非常に狙いやすい、危機管理意識が恐ろしく低い、馬鹿な女なのだ。美しくて馬鹿で(彼女の知能は高い。しかし人の「悪意を信じる」ことができない、悪を見つめることが出来ない、サドがこういう奴大っ嫌いっていうのがわかるね)、後ろ盾のない女。孤児なのだ。現代日本でもこのような女が不幸に見舞われ続ける話は、リアリティがない、とは言えないだろう。(なんかふと、『嫌われ松子の一生』を思い出したぞ、せつない……)


ジュスティーヌの強靭な肉体と精神と、彼女を襲う不幸そのものの主張と彼女の勇気と、美麗かつハイテンションな文体がとても楽しい小説ですぞ!!
これをまあ豪華部屋とはいえ監獄で書き続けたサドの精神力強い、書くことで興奮していたとしか思えない、サイテーだけど、あなたの書くものは好きよ、サイテーだけど(若いころ売春婦に変な薬飲ませようとしたとか鶏姦しようとして、逃げ出した売春婦に訴えられてやんの、なんか「放蕩貴族としては普通」って澁澤龍彦は擁護してたけど、それでも売春婦かわいそうだろ…裁判になっちゃった時点でひでーよ。。サドの作品はサイコーだけどもよう、結局彼は悪徳による利益はあまり得られなかったという点で別に悪人ではないし、悪徳を満喫したわけではないし、というのはまあ萌えポイントというか生涯も魅力のうちなのかもね、くそ~~ソドム未完だし最後超テキトーだしまじ悔しいわ、あれをちゃんと完成させて、変態語りにきちんと始末つけてほしかったよおおおお)

ジュスチーヌまたは美徳の不幸 (岩波文庫)/岩波書店

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これはただの前置きで、はっきりいって連想したというだけで本題とは関係ない。虐待被害者のその後の人生、スティグマについて、だ。
あくまで私の偏った観察範囲であるが、性虐待経験者がその後性被害に遭う話、「そんなこと人生においてなんどもあるはずない」などと、ネタ扱いされたり、たとえば精神病患者の体験談が妄想と片付けられるのを目にしたことがある。(正確には、読んだことがある、か)
家庭内の暴力が何を破壊しているのか、
様々な虐待を扱った『誰も懲りない』という漫画を言及したことから思い出したので紹介する。




子どもの性虐待と人権/明石書店

¥2,160
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この本を読んだのはもうずいぶん前だが、性虐待体験談なんて重い話はそんなに読みたくない。(漫画でありフィクションという前提がある『誰も懲りない』ですら精神を疲弊させる)
この第二章について、Twitterで少し言及したのできちんと紹介しようと思う。
(これが本題だ!前置きながい!!)



児童性虐待サバイバー再被害の社会心理構造

卑近な(特にネットで見かけるような)事例でいえば、少し心に傷があるような少女がちやほやしてくれる大人と性行為に至る、そういうのもりっぱな性被害だが、そう思わない人々もいる。
こういうわかりにくい性被害だけではなく、どうみても「強姦」でも被害者は責められるのだから、繰り返しの被害は、いわんや。
さて、性虐待サバイバー再被害のはなしをビジュアルとして素晴らしい表現をしたのが曽根富美子である。
とにかく読んで欲しい。性的な匂いをぷんぷんさせる中学生、性的に誘惑する、過激な発言をする、彼女の性被害は自業自得ではないか、と、周囲が思ってしまう構造まで素晴らしく描いている。



ほんっとほんっと素晴らしいから……!!!

曽根富美子傑作選 子どもたち!~今そこにある暴力~: (上) (ぶんか社コミック文庫)/ぶんか社

¥価格不明
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今Kindleセール中だよ!!!
この漫画をね、読んでもらうと超わかりやすいから、読んでみて欲しいんだけどっ

性虐待に遭った児童が起こしてしまいがちな「解離」と「危機状況察知機能障害」
酷い虐待やトラウマから多重人格者になる、というのは多く知られていると思うが、これは最も重篤な解離障害である。
突然無反応になったり、凍りついたり、固まる子供たち、これは解離によるものだ。
虐待経験のある女性のほうがそうでない女性より、身体的暴力・性暴力被害に遭いやすいというデータもある。(フランク・パトラム『解離』が参考文献に出ているので、ここもぜひ)

解離―若年期における病理と治療/みすず書房

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(追記、わかりにくかったけど、以下、『子どもの性虐待と人権』の話に戻ります)
被害者の解離症状の深刻さ、世間や司法の無理解
そして「制裁」的嗜虐欲……
ジュスティーヌに対してあらゆる方法で心身を侵犯する人々は彼女の美徳への制裁欲求によってその悪徳を正当化する。「隙」がある「落ち度」がある者に制裁を。嗜虐欲の一種だが、普遍的な欲求だ。(そういうポルノもたっくさんあるしね)
加害者の構造について書いてあるので面白い。

(ラカンがいっぱい引用されているのでラカン嫌いは注意)

(また全ての主張において著者と同意見ではないというのも、書いておくよん)


そして昨日私が道徳の教本のページで書いた元ネタが、これですのでっ!
作者の中村珍さんがうまくできてるって言ってくれたぜやったあ(^^♪


(二次創作褒められた自慢)

こういう話です!!



誰も懲りない/太田出版

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すごくいいけどわりとやられる漫画だから要注意だぞっ!!