夏らしい暑さに喜びを感じて外へ出る、もう夕方だった。
憂鬱を抑えることは不可能だった。
ただ寄り添うことしかできない。

嫌なことばっかり言ってしまって嫌になって、嫌になって嫌になって、ああ、嫌だ。
見るもの全てが私を嫌っているように見えて、妄想だ、でも、妄想は、強い。

微妙に度数が気に食わない眼鏡しか見つからず、眼の奥が疲れる。
どうしてこんなに愚かなんだろうと思う。こんなはずではなかったのだ、全てこんなはずではなかったのだ。

目を閉じると庭があって、その庭で小さな王国のようなものを作っている。
ごっこ遊びをしていた、あの庭。
庭で、ひとり、土をいじる。

あの日に、すぐ、戻ることができる。

ランドセルを 毎日 からう
使っているパソコンはボンダイブルー
まだインターネットのことなんか知らなくって、イラストレーターでお店やさんごっこ
ひとりあそび、おうちでは、お店やさんごっこ、していたの、架空のお店のポスターを作る
学校の、ポスターも作るの、図書新聞、
図書係だったから、図書新聞を作ったの、おすすめの本を紹介したの
スキャナーを使ったのよ、すごいでしょ、本の表紙の、画像があるの
自慢、自慢してた

ああ、ああ、ああ、全てこんなはずではなかったのに。
記憶に逃げ込んでも、似たことをしているから、笑けてくる。
いつかちゃんと毎日現実が現実であると認識できますようにと、過去の私に願掛けをする。さようなら、他人のような私。君は一体、誰?

夕方のこの、風が好きだった。
緑と土の匂いが好きだった。
庭はもうないけれど、私は私の王国をまた作りたいのかもしれない。
それも全部ウソなのかもしれないね。