その日は確かに疲れていた……
俺はアイドルだった。

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世界を激震させたバブルの終わり、いや恐慌のはじまりか、そんな夜に俺は繁華街に立ち尽くしていたのさ……

レディースデー、よい響きだ。
女神マーキュリーに感謝しつつ、例の券を買い、近所をぶらついていた。
岩塩を買う。
塩がなければ人は生きていけない。

俺は目が悪い。
アイメイクが溶けコンタクトは曇っていた。

替えは、あるはずだ。
しかしポーチの中にはひとつだけ。

曇りが酷いのは、左だ。
左目に装着する。 右はなんとかなるだろう。
この判断ミスが、悲劇のはじまりだった。

時間がきた。映画館に戻る。
暗闇の中、ショーがはじまる。
予告編の時点で、右目は悲鳴をあげていた。
仕方あるまい。右目を裸眼にする。

見えない……ぼやける……
字幕は……なんとか目を凝らすと判別できる……

しかし、3Dメガネ越しの視聴は想像以上に視力を使い、私は中盤で離脱したのだ……
目を瞑る……
簡単な英語ならわかる……こうやって目を休ませよう……
ああ……暗闇が……
暗闇が……







終劇。


1500円、これが見えない映画、前半のみの値段だった。俺は俺に負けた。
コンタクトの替えは両目分必要だ。

後日、鞄の底にもうひとつのコンタクトを発見する。
コンタクトは両目分あったのだ!!!

俺は俺に負けた。


砦に戻るんだ!!
最後の記憶はここだ。

俺はニシッス
マッド・ニシッス

物語はまだ終わっていない。