「新世界の住人」ことよしこちゃん曰く。


「九子ちゃん。北広島に新しく三井が出来たことにより、北海道にはアウトレットモールが三軒になったそうじゃないか……で、あんたの住んでる室蘭では“丸井さん”が閉店した。デパート閉店。アウトレットモール花盛り。北海道民の買い物事情というものが変わったんかいな」


「わかっとる。それ以上は言わんでもええ。あんたとは長い付き合いや。四つの頃、お隣に住んだのが運のつき。腐れ縁だと思うてあきらめてる。でもな、よしこちゃん。実はな……私もいっぺん行きたいと思ってたとこ」


「おおっ。やっと、その気になってくれたんか」

「やっと、その気に……っていっても北広島のアウトレットは先月22日にできたばかしや」


「時節柄……」

「お日柄もよろしいようで……」


「なんのこっちゃ……もし、快く行ってくれるのだったら、そちらに行った際、哲屋でやきとり追加してもいいよ」


「たれ?」

「うん。たれ」


「8本?」

「うん。8本」


哲屋のやきとり8本にまんまと釣られて私、九子は一日に二軒のアウトレットモールをはしごするという快挙に挑戦した。


本州にお住まいのみなさん。

言っておくが北海道は広い。


俄かに信じられないかもしれないだろうが、四国と九州を足してもまだ「でっかいどう。北海道」の面積にはほど遠いのである。


しかも、“さらに”信じられないことに「道民」は本州で4県ぐらいまたいだ距離をあっさりと日帰りしてのけたりする。


しかも車で、だ。


斯様に広い北海道に「アウトレットモール3軒、おかしくないんじゃねぇ?」と言われる向きもある。


既存のアウトレットモールは小樽市、千歳市の二市で展開していた。

同市は札幌JCTから距離にしてそれぞれ38.3㌔、34.8㌔。


そして今回、先月22日にオープンした北広島アウトレットモールは札幌から11.9㌔、北広島市大曲に位置する。


千歳と北広島の両アウトレットは共存できるのか。

パイを奪い合うことはないのか。

実際に行って調査してみた。


午前8時。出発は室蘭・蘭東地区からである。

国道36号線をひた走る。


午前9時50分。千歳アウトレットモール“レラ”に到着。


開店は10時である。


ぶらぶらと歩きながらどの店に入ろうか算段する。

歩いていて気付いたことは、閉店しているお店が多いこと。


今回、北広島がオープンすることになり、30店舗ほど閉店し、うち20店舗はレラから撤退した後、北広島に移転したという。

上記を鑑みても規模はレラの方が若干大きい。


ニューオープンの店としてフラダンスのお店と紳士カジュアル服を扱うお店があった。

とりあえず、今回、押さえておこうと思う。


フラダンス店の入口で待っていると、気の早い5、6人のグループがやってきた。

50、60代か。フラダンスを習っている人なのだろう。

にぎやかにおしゃべりに花を咲かせている。


今回、車で2軒のアウトレットを制覇するという試みのため、マイカーを利用したが、室蘭から新千歳空港行きのバスが出ているため、バスで何度かレラには来ている。


室蘭・東町ターミナルから空港まで一時間半。

空港からレラまで無料送迎バスで10分。

なかなか便利である。


ちなみにここで特筆したいのは、レラー空港間の運転手さんはきっちりと時間を守る人らしく、5分前には停留所に到着している。

立派な心がけである。


午前中はレラ。空港で昼食。午後からもレラ。

一通り店内を回る。


テレビでは各局、こぞって「北広島特集」を流していたため、あえて混雑を避け、こちらに流れてきているのか。

北広島オープンの翌日というのに人が多い。


コーチの紙袋を持った中国人団体客もちらほらと見受けられる。


午後4時半。

レラから出発し北広島へと向かう。

予め仕入れてきた「新千歳から40分」としう情報を恃みにサブロク線を只管、走る。

道沿いに「北広島アウトレットモール。次の信号を左」の表示があり、左折。

すると、一応、舗装されているのだが農道のような幅の狭い道。


なんなんだっ。

畑の中の農道のような道を今度は只管、走る。


迷ったのか。自分。

あたりはだんだん暗くなってくる。


大丈夫なのか。

自分を奮い起すため、歌を歌う。

こんな時には「キリンレモン」のテーマソングだ。

これを歌うと元気が出る。


歌いながら「ダイエットペプシ」をぐびりと飲(や)る。

(普段、タン酸は飲まないが、ルクルーゼのおまけが欲しくてつい買ったものだ。ピンク色のが人気らしい)


ようやく45分後にアウトレットモールの第3? 駐車場に辿り着く。

車を降りて警備員のおじさんに「アウトレットはどこですか」ととりあえず聞いてみる。

アウトレットの駐車場に車を停めたのに質問するなんてバカみたいだけど……。


「あの黄色い建物です」

指差す方角を見るとかなり遠い。



はあー。

思わずため息をつく。

こちらの気持ちを察してか「すいません」と謝るおじさん。

いや、別におじさんのせいではありませんから。


駐車場からアウトレット本体まで歩いて10分。

途中、アークスでお茶を一本仕入れる。

ほうほうの体で辿りつきながらもしっかりお店をチェックした。


到着したのが5時すぎ。

さきほどまで混み合っていたようで「駐車場に入るのに3時間もかかったよ」と話しているご婦人もいる。


アウトレットモールには珍しい「日本初の屋内型」、2階建てで展開している。

雪の多い北海道には嬉しい「全天候型」である。

しかし、「全天候型」がかえって閉そく感を生み出し人ごみを助長させているかのようで聊か残念である。


人はレラより多い。





1階は高級店、2階は若者向けのカジュアルショップと住み分けができているのか。

ドルチェ&ガッパーナやバーバリーなど高級店もあり、目の保養にはなりそうだ。

買えないけど……。


コーチやダックスなどレラにも同じお店がある。

コーチのスタッフに話を伺うと「レラとは商品や仕入れなどが若干異なります」とのこと。

また、「アメリカ(コーチはアメリカでデザインされている)で完売した商品が今回、販売しております」と店頭入口付近に目立つように平台展開されていた。


ちなみにその商品はピンク色の皮でできたお花の模様がちりばめられているもの。

(ちなみについ先日、同じものがレラでも販売されていた! アウトレット婆を甘く見てはいけない)


季節がらなのかワゴン内に目玉商品としてTシャツが多くみられた。

中にはオープン記念価格として、レディース・フリーサイズ500円というものもある。



レラは中国人などの観光客が比較的多く、一方、北広島は札幌圏から車で来ている家族連れやカップルが多いように感じられた。


パイを奪い合うというより、一方は新千歳空港から10分、一方は札幌に近いと言う立地条件から住み分けはできそうだ。


というか、函館・苫小牧・室蘭からだとレラの方がだんぜん近い。


道南バスによると「企画モノとして、北広島アウトレット行きバスは運行したことはありますが、今後、直通を運行することは今のところありません」とか。


また、中央バスでも室蘭からの「運行予定はない」「札幌の大谷地まで行って、そこからバスに乗ってください」とのこと。


北広島行きの直行バスがないのは札幌圏しか見えてないのか。あるいはレラの客層に配慮したものなのか。

結局、地元に百貨店はないし、暫く、「ちょっとレラまで買い物に」という生活が続きそうだ。


※この記事は先月23日に取材したものです。



【文責・九子】