にれのや式に解説する 『インディ・ジョーンズ クリスタル・スカルの王国』。 | げたにれの “日日是言語学”

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やたらにコトバにコーデーする、げたのにれのや、ごまめのつぶやきです。

   インディ1







『インディ・ジョーンズ クリスタル・スカルの王国』 を見てきました。


   “Indiana Jones and the Kingdom of the Crystal Skull”


ですね。いかにもデッチアゲっぽい邦題も、実は、原題のママなのでした。


〓日本では 「インディ・ジョーンズ」 で通ってますけど、



   Indiana Jones [ ˌɪndi'ænə ˌdʒoʊnz ]

          [ ˌ インディ ' アナ ˌ ヂョウンズ ]  インディアナ・ジョーンズ



が正当ですよね。アッシは、なぜか、「インディアナ・ジョーンズ」 と言うクセがあって、昔、ものすごくコケにされたことがありまして…… それをネにもってコーデーしておるわけです。


〓本名は、


   Henry Walton Jones, Jr. [ ' ヘヌリィ ' ウォるトゥヌ ' ヂョウンズ ˌ ヂュニヤ ]



です。先だって亡くなった米国のSF的作家 カート・ヴォネガットも


   Kurt Vonnegut, Jr. 「カート・ヴォネガット・ジュニア」


でした。


〓基本的なことですけど、父親と子どものフルネームが 「そっくり同じ場合」、これを呼び分けるために、父親に Sr. (シニア Senior)、息子に Jr. (ジュニア Junior) をつけます。
〓あるいは、ファーストネーム+ファミリーネームが同じになる場合にも使う例が見られます。


〓三代以上、まるっきり同じ名前が続く場合は、 III (the Third)、 IV (the Fourth) となります。米国の黒人歌手、アッシャーの本名は、


   Usher Raymond IV 「アッシャー・レイモンド4世」


です。彼の家系では、代々、 Usher という変わった名前が受け継がれてきているんですね。


〓「ルイ14世」 Louis XIV (de France) のごとき、ヨーロッパの王族・貴族などの代数表記がその起源と言えますが、これは、


   個人を特定する名前が、過去の人物と同一である場合に付けられるもの


なのです。だから、


   山田ルイ53世


という名乗りは不合理ではありません。フランス貴族の de France などは、以前にも書いたように、「領地を示す称号」 で、のちに 「姓」 に転じます。なので、


   山の中の田んぼに領地を持つ、数えて53代目のルイ


であれば、「山田ルイ53世」 で、いっこうにかまわない。ただ、大貴族というより、田舎の地主という感じですが。


〓逆にオカシイのが、


   ルパン三世


なんですね。つまり、 Lupin [ りゅ ' パん ] というのはフランス語の姓であり、「個人を特定する名前」 ではありません。だから、これに III (the Third) を付けては理屈に合わないのです。


〓“ルパン三世” が、海外で、


   Arsène Lupin III


と書かれるのは、ヨーロッパ系の文化を受け継いだ社会では、


   III が付くなら、姓も名も同じなのが常識


だからです。



          ブーケ1     ブーケ1     ブーケ1



〓ハナシを戻しますぜ シラー

〓ジョージ・ルーカスの本名は、


   George Walton Lucas, Jr.


です。インディアナ・ジョーンズは、


   Henry Walton Jones, Jr.


でしたね。


〓インディアナ・ジョーンズは、子どものころ Junior と呼ばれるのがイヤで、飼い犬の名前である Indiana を名乗りました。この Indiana というのは、ジョージ・ルーカスが実生活で飼っていた犬の名前でもありました。


   「Junior と呼ばれるのがイヤだった」 というのはジョージ・ルーカス自身の経験


だったかもしれません。


Indiana というのはラテン語で “インド人 (インディアン) の土地” という意味です。 terra [ ' テッラ ] 「土地」 が女性名詞なので、ラテン語では地名に 「形容詞の女性形」 を使っていました。それが、現代ヨーロッパのほとんどの言語の慣用になっています。
〓ジョージ・ルーカスの飼っていた 「インディアナ」 は、“チューバッカ” のモデルにもなったそうです。



   チューバッカ



〓ところで、 Indy という略称は、 Indiana を縮めたものですね。なぜ、縮めるか、と言えば、


   名前が長いと呼ぶのにメンドウだから


です。つまり、日本では当たり前の


   Indy Jones 「インディ・ジョーンズ」 という呼び方はオカシイ


のです。つまり、


   Indiana Jones 「フルネーム」
     
     
   Indy       「略称」 (愛称)



ということでしょ? 実際、映画の中で、 “Indy Jones” という言い方は使われていないハズです。

〓米国・英語限定で Google 検索してみましょうか。


   Indy Jones                               327,000件
   Indiana Jones                          2,680,000件
   ――――――――――――――――――――
   Indy "Indiana Jones" ―"Indy Jones"  1,290,000件



〓どうでしょう。米国でも “Indy Jones” と呼ぶ例は多いようですが、1ケタ少ない。日本語で言えば、「清水ミチコ」 さんを


   清水ミッちゃん


と呼ぶようなものです。ありえなくはないが、若干ヘンでしょ。



          あじさい       あじさい       あじさい



〓と、なんか、ものすごく遠回りしてきましたが、ケイト・ブランシェットの 「イリーナ・スパルコ」 について書きたかったのです。あのね、


   アッシは、パンフレットを読むまで、ロシア人による吹き替え


だと思ってたんです。ところが、事実は、彼女じしんがセリフをしゃべっているんです。


〓もともと、ロシア語のセリフはそんなに長くないです。それでも、母音がハッキリしていて、アクセントのある母音が強く、長く響くロシア語の特徴がよく出ていました。


〓それと、“ロシア語訛りの英語” もなかなかでした。ロシア人の英語の特徴は、ナンと言っても、


   巻き舌の R


です。これをやらないロシア人は、あまりいないでしょう。英語の r は、巻き舌の R でも通じるので、直す必要を感じないんだと思います。


〓だいたい、ソ連邦が消滅する以前の 1980年代までは、普通のロシア人で英語が理解できるヒトはほとんどいませんでした。政治的にも、経済的にも、海外旅行をするのがむずかしかったソビエト市民にとって、英語ができたところで 「それがナンになる?」 みたいなところがあったハズです。ロシア人は、まったくの英語オンチだった。

〓それと、英語の [ w ] を [ v ] にしてしまうのもロシア語話者の特徴のひとつです。


   vonce [ ' ヴァンス ] ← once
   vont [ ' ヴォント ] ← want


〓ところが、語末の [ v ] となると、今度は、無声化して [ f ] にしてしまいます。


   haf [ ' ハフ ] ← have


〓ところがところが、ウクライナ人の場合は、事情がちがいます。ウクライナ語は、ロシア語と違って、“語末の子音が無声化する” という現象を発達させなかったので、ウクライナ語話者は、語末の [ v ] を [ ʋ ] と発音します。


   [ ʋ ]


〓これは、 [ v ] の閉鎖がゆるんだ子音です。日本人が、英語を学ぶときに、 [ f ][ v ] の音を 「前歯を、下くちびるに付けて発音しなさい」 と言われますが、この発音の


   前歯が、下くちびるから離れてしまった音が [ ʋ ]


です。聴覚的には、 [ v ] と [ w ] の中間のような音。この子音を持つ有名な言語はオランダ語で、 w の字で記されるのが [ ʋ ] です。ちなみに v で記されるのが [ v ] なので、たとえば、ゴッホの名前を日本人が正確に発音しようとするなら、相当に、こんがらがります。



   Vincent Willem Van Gogh [ 'vɪnsɛnt 'ʋɪləm vɑn 'ɣɔx ]
      [ ' ヴィンセント ' ウィらム ヴァン ' ごふ ]

      ※現代アムステルダム音では、 [ v ] は無声化して、 [ f ] に近く響き、
       また、 [ ɣ ] も無声化して [ x ] に近いらしい。


      ※しかし、 v ― w ― f、 g [ ɣ ] ― ch [ x ] は音素として区別されている
       ようなので、 v が f とまったく同じ音になった、というようなことではないらしい。



〓困ったもんですが、英語のように [ w ] と [ v ] を区別する言語はあっても、 [ ʋ ] と [ w ] を区別する言語はないようなので、 [ ʋ ] は [ w ] だと覚えたほうが得策かもしれません。


〓で、ウクライナ人が、ロシア語を話すと、語末の  -v が [ ʋ ] になるワケです。また、少し専門的になりますが、「子音の前にある в 」 も [ ʋ ] になります。


   все [ 'ʋsɛ ] [ ウ ' セー ]  ロシア人なら [ 'fsʲe ] [ フ ' シェー ]
   вовк [ 'vɔʋk ] [ ' ヴォウク ]  ロシア人なら [ 'vofk ] [ ' ヴォーフク ]





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Indiana Jones: You're not from around here, are you?
インディ・ジョーンズ 「アンタァ、ここらのニンゲンじゃないね?」


Irina Spalko: Where is it you imagine I am from... Doctor Jones.
イリーナ・スパルコ 「じゃあ、どこだと思うの? ドクター・ジョーンズ」


Indiana Jones: Well the way you're sinkin' your teeth into those

v-ouble-u's, I should think Eastern Ukraine.
インディ・ジョーンズ 「ダブリューのときの歯と唇のぐあいから言うと、そうだな、東ウクライナだと思うが」
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〓これは、冒頭の米軍の倉庫での会話ですね。これは、インディがウクライナ人の発音のクセを知っていて、イリーナ・スパルコの出身地を言い当てる、という凝った設定なのです。つまり、イリーナ・スパルコが、英語の w [ w ] を [ ʋ ] で発音している、ということを言っているんでしょう。



〓「東ウクライナ」 というのは、コサックの揺籃 (ようらん) の地です。ウクライナ東部は、土地が肥えているにもかかわらず、古い時代に、チュルク人がこのあたりを蹂躙 (じゅうりん) し、略奪や奴隷狩りをおこなったために、一時、無人の地だったことがあります。
〓のちに、


   チュルク人に対抗できるだけの自衛力を備えた “逃亡農民” が住み着く


ようになりましたが、この人たちが 「コサック」 となります。


〓ウクライナは、ポーランド領だったとは言え、コサックが隆盛をきわめた時代、東ウクライナにはポーランドの支配は及ばず、実質的な独立地帯でした。
〓このような歴史から、東ウクライナには、民族そのものが勇猛果敢な戦闘集団であるという、独特の 「コサック」 というエスニシティが生まれました。

〓こうした東ウクライナのコサックの代表的集団が 「ザポロージエ・コサック」 です。


   запорожские казаки  zaporózhskije kazakí
          [ ザパ ' ローしスキイェ カザ ' キー ] ザポロージエ・コサック


〓「ザポロージエ」 というのは、



   за- za- [ ザ~ ] 接頭辞。「~の向こうの」
     +
   порог porog [ パ ' ローク ] 「川瀬、早瀬」
     +
   -ье -'je [ ~イエ ] 接尾辞。「~の地域」
     ↓
   запорожье zaporózhje [ ザパ ' ローじイェ ] 「早瀬の向こうの地域」



〓“早瀬” というのは、ドニエプル川の早瀬のことで、ドニエプル川の向こうにはポーランドの実権が及ばなかったことを示しています。




ウクライナ方言地図



〓ウクライナ語の方言地図を見ると、ザポロージエを中心として、東ウクライナの広大な地域で 「ステップ方言」 というものが話されていることがわかりますが、残念ながら、この地域で в v がどのように発音されているかについての具体的な記述は見つかりませんでした。


〓まあ、ウクライナ語全体の特徴として話を進めるならば、


   vonce [ ' ヴァンス ] ← once  ※ロシア人と同じ
   haw [ ' ハウ ] ← have  ※ロシア人ならば haf


というようなウクライナ訛りの英語音というものが想定できます。つまり、ドクター・ジョーンズはこれを聞き取った、というワケです。


〓インディのセリフの中に、


   v-ouble-u


という見慣れない単語がでてきます。あわてて辞書を引いても出てきません。
〓ブロークンに英語を覚えた外国人、あるいは、ウッカリ者のネイティヴの中には、


   W という文字の名前が wouble-u である


と覚えているヒトが多いらしいんです。 wouble u を検索すると 590件ヒットします。日本語で言うなら、


   赤い靴をはいた女の子を連れていったのが、
     「ヒイジイサン」 だとか 「いいジイサン」 だとか覚えている


のと同じようなものですね。


B は beeD は dee だから、 W も wouble-u だろうというカン違いです。インディは、外国人のカン違いの wouble-u を引用したうえに、 [ w ] を [ v ] に変えて、


   vouble-u 「ヴァブリュー」


というふうに、イリーナ・スパルコを “オチョクッている” という寸法です。なんという芸の細かいシナリオ……



          クローバー       クローバー       クローバー




   スパルコ


〓英語で Irina Spalko と書いた場合、これが、ロシア語では、2通りの綴りが想定できます。


   Ирина Спалько  Irina Spal'ko [ イ ' リーナ ス ' パりカ ] 3170件
   Ирина Спалко  Irina Spalko [ イ ' リーナ ス ' パるカ ] 1090件

       ※件数は、 Google Russia の国内限定による検索



〓ロシア語の ь 「軟音符」 が、英綴 (えいてい) では、通常、無視されるのが原因です。しかし、 Спалко 「スパルコ」 であろうと、 Спалько 「スパリコ」 であろうと、残念ながら、ロシアやウクライナに実在する姓ではありません。


〓エリック・ヴァン・ラストベイダー Eric Van Lustbader という米国の作家のスパイ小説に、ハンガリーのスパイで、


   Stepan Spalko 「ステパン・スパルコ」


という人物が登場するらしいのですが、 Stepan というのは、ロシア人、ウクライナ人に独自の名前であり、妙な関連性を示しています。


Спалко, Спалько という姓は、ロシア語・ウクライナ語に語源を求めても、それらしい単語は浮かんできません。ただ、


   Сталин Stalin [ ス ' ターりン ]
     ↑
   сталь stal' [ ス ' ターり ] 「鋼鉄」


という語源を考えると、 сталь stal' 「スターリ」 を1文字置き換えて、


   спаль spal' [ ス ' パーり ]
     ↓
   Спалько Spal'ko [ ス ' パーりコ ]


という造語は可能かと思います。


-ин -in という接尾辞は、女性名詞から 「物主形容詞」 をつくるためのもので、姓にも流用されます。男性名詞の場合の -ов -ov に相当します。
〓また、 -ко -ko というのはウクライナにおける 「指小辞、および、姓をつくる接尾辞」 です。 -ин -in で姓をつくらないウクライナ語で、「スターリン」 に対応する語形をつくると、こうなる、ということかもしれません。




〓ケイト・ブランシェットのロシア語について、どんな感想があるのか、 Google を渉猟 (しょうりょう) してみました。



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The movie was okay, but I had a few problems with it... minor spoilers...


Irina Spalko's (Cate Blanchett) Russian accent was terrible. It was worse than Boris and Natasha in Rocky and Bullwinkle. It frequently went from Russian to psuedo-British in the middle of lines. And then sometimes going from trying to sound British to an American accent.  I could barely listen to her.


Also, what was up with the lack of subtitles for the Russian? I was the only one in the group I went with who understood what they were saying (I speak a fair amount of Russian). Even then, it was hard for me to keep up with everything they said. My friends who don't speak Russian were just like "what the hell are they saying?"



映画は悪くないけど、若干の問題があった…… たいしたことじゃないけど……


イリーナ・スパルコ (ケイト・ブランシェット) のロシア語訛りはひどかった。ロッキー&ブルウィンクルのボリスとナターシャよりひどかった。セリフの途中で、たびたび、ロシア語から疑似英語に変わる。さらに、ときどき、英国音から米国音に訛りを変えようとする。彼女のセリフは、ほとんど理解できなかった。


それにロシア語のセリフについての字幕がないのはどういうこと? いっしょに見に行ったグループの中で、ロシア人の言っていることが理解できたのはわたしだけだった。(ロシア語はかなり話せるので) それでさえ、彼らの言うことをすべて理解するのはタイヘンだった。ロシア語がわからない友人たちは、「いったい何て言ってるの?」 とこぼしていた。


…… 後略 ……
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〓これは、たぶん、米国人ですね。「ケイト・ブランシェット」 のロシア語訛りが terrible だというのは、英語のネイティヴとして聞き取れん!と言っているんですね。




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This was HORRIBLE!! Even going into the theater with low expectations knowing that nothing could match up to Raiders, I was highly disappointed. I wanted my money back within the first 15 minutes. The only good parts were the motorcycle chase and the Indy-Marion bickering towards the end of the movie. The entire opening scene with the Russians felt like Ford wasn't even trying- a B-list actor could have done better. Blanchett's "Russian" accent was painful to listen to. And there were so many holes in the plot! ......


Posted by Meghan Milburn May 29, 08 02:10 PM



これはひどい!! 「レイダース」 にかなうようなものは何も期待できないと思って映画館に行ったのに、それでも落胆しました。最初の 15分で、金返せ、という気分だった。よかったのは、バイクとクルマのチェイス、それに終わりあたりのインディとマリオンの言い争いのシーンだけです。ロシア兵たちの登場するオープニングのシーンは、ハリソン・フォードにヤル気がないようにさえ感じました。B級役者でも、もうちょっとマシな演技ができたでしょう。ケイト・ブランシェットの 「ロシア語訛り」 は聴き取るのがつらかった。それにプロットには数々のアナが! ……後略……
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〓どうも、英語のネイティヴは、ケイト・ブランシェットのロシア語訛りが嫌いらしい。



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"Индиану Джонса и королевство хрустального черепа" посмотрела и мне очень понравилось.  Очень я этот фильм ждала и ужасно боялась разочароваться (судя по недовольным крикам во френдленте многим это всё же удалось).  По фильму ничего писать не буду ибо рецензиями весь интернет завален, к тому же фильм из категории "за гранью добра и зла", лучше самим сходить в кино и составить своё мнение.  Но если что, вот тут у zlobuster отличная рецензия, согласна с ней полностью.


Между прочим Кейт Бланшет в оригинале отлично говорит по-русски, никаких дурацких "походьте".  И по-английски - с таким прикольным русским акцентом.


Понедельник, 26 Мая 2008 г. 17:07



『インディ・ジョーンズ クリスタル・スカルの王国』 見てきました。[動詞の語尾が女性であることを示しています] とてもよかった。この映画に対する期待がとても大きかったので、期待はずれだったらどうしようとビクビクしていました。(ネット友だちの多くが不満の声を上げていたから。それでも成功作だと思う) インターネットには評論が山とあるので、わたしは映画について何も書くつもりはありません。それに、この映画は “善悪の彼岸” のタイプなので、ひとりで映画館に行って、自分の考えをまとめたほうがいいでしょう。でも、zlobuster (ネット評論家の名前) さんの優れた評論がどのようなものであろうとも、わたしは彼女にまったく同意します。


ちなみに、ケイト・ブランシェットは、まったくバカげた “походьте” などと発音しながら、吹き替えなしで、みごとにロシア語をしゃべっていました。また、英語では、とてもおかしなロシア語訛りでしゃべっていました。
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〓このロシア女性は、自省的なヒトらしい。ストレートな米国人にくらべて、ケイト・ブランシェットをケナすのか、ほめるのか、よくわからないですが、どうやら、ロシア語は聴き取れているらしい。

「バカげた “походьте”」 というのは、イリーナ・スパルコが映画の中で発
する第一声です。


   “А ну походьте!”
    「ア ヌー パホーッチェ!」


と言っていたらしい。インターネットのロシア語のページで話題になっているヒトコトです。
〓正しくは、


   “А ну походите!”
    「ア ヌー パハヂーチェ!」


〓「さあ、歩け!」 というほどの意味です。ロシア人には、これがずいぶん、「バカっぽく」 聞こえたらしい。 походьте 「パホーッチェ」 の検索件数 940件です。




〓パンフレットを見ると、ケイト・ブランシェットのコトバとして、


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ロシア風のアクセントについては、オーバーな感じにはしたくなかったので、いつも心配だった。
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という一文がありますが、これね、ビミョウに意味がわからなかったでしょ。彼女が英語で言ったのは、


   Russian accent [ ˌ ラッシャン ' アク ˌ セント ] 「ロシア語訛り」


のことなんです。


〓日本人は、“アクセント” というと、もうこれはテンから 「単語の強勢」 のことだと思ってしまう。しかし、現在の英語の一般的な用法としては、


   accent [ ' アク , セント ] 「訛り」
   stress [ スト ' レス ] 「アクセント」



となります。

accent “訛り” を “アクセント” と訳してしまうのは、


   スカタンな翻訳者のやる “基礎的な誤り”


なんです。つまり、ケイト・ブランシェットはこう言いたいんです。


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ロシア訛りがオーバーにならないように、いつも気をつけていた。
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〓クレジットを見ると、


   dialect coach to Ms. Blanchett : Tim Monich


とある。この 「ティム・モニッチ」 という人物、かつては、多少、役者もしていたようだけれども、今は、 dialect coach としてハリウッドでは有名らしい。どんな人物か詳しいことはわからないんですね。バイオグラフィのたぐいが見つかりません。
dialect coach というと、日本語の 「方言指導」 のようになっちゃいますけど、米国の場合は、「いろいろな国の出身者の訛り」 みたいなものが含まれるようです。実は、


   Монич Monich [ ' モーニチ ]


というのはロシア系の姓なんです。しかし、彼が移民何世なのかもわからない。



          UFO       UFO       UFO



〓なんだか、とりとめのない一文になりましたが、何か 『インディ・ジョーンズ』 について参考になることがありましたでござんしょうか?