2013年1月8日ごろのことだったと思う。

1月12日に母が退院することが決まった。

年明けに病院に戻ってからしきりに母が「早く帰りたい」と言うので、

父が医師と相談して母の想いを尊重することにした。

擬似抗がん剤治療 も終わり、病院で出来ることといえば延命治療である栄養点滴くらいだったからということもあった。

「何かあったらいつでも入院してください。」と医師が言った。


2013年1月5日に母の余命を聞いてから、

私は母に余命を伝えたほうがいいと思っていた。

母に生きること、死ぬことについて、祖母との関係が今のままでいいのか考えて欲しかった。

父は余命を伝えることに反対していた。

今まで余命のことを聞いても曖昧にしてはっきり言おうとしていなかった。

そんな父に自分の想いを伝えるチャンスを伺っていた。


【14】余命宣告について

【15】魂の視点 に詳しく書いていますので、よろしければご覧下さい。)



1月10日のことだった。

「ただいまー。」
「あ、おかえり。」

私が仕事から家に帰ると、仕事が休みの父がちょうど居間にいた。

居間の食卓で本を読んでいた様子だった。私も少しして居間の椅子に座った。

今がチャンスだと思った。


「お父さん、お母さんの余命の事なんやけど。」

私は話を切り出した。

「もーニコちゃん、言わんでええって!」

話を最後まで聞くことなく、いきなり声を荒らげた父に対してムカッときた。

「言わんでええん?なんで?

お父さん面倒なことになるのが嫌なだけじゃないん!?」

想いを伝えるのではなく怒りから父を責めた。

父も反発した。

「そうじゃないって!お母さんに言っても受け止められへんって!」

「そんなことないって!」

「ニコちゃん、もう時期が過ぎとおって。」

「そんなことない!」

「言ってどうするん!?

もしお母さんがそれ聞いてショックではよ死んでも責任取られへんで!?」


そう言われてぐっとなった。言葉に詰まった。

確かにそうかもしれないと思い、返す言葉も見つからなかった。


父は居間の机にあったパソコンを開き始めた。


そんな父を見て、

「・・・私はお母さんに余命を伝えて、

お母さんに生きることとか死ぬこととか考えて欲しいんや。」と強く言った。

すると父はパソコンをしながらこちらを見ずに言った。

「そんなん自己満足やわ。」

私はカチン!ときた。

「この分からずや!!」

怒鳴り声をあげ思わず泣いた。

「自己満足でもなんでもないわ!!

私はお母さんに考えて欲しいんや!おばあちゃんのことも!

今のままで死ぬなんかかわいそうやわ!!」

泣きながら大声をあげる私の様子に驚いたのか、

父は動きを止めて黙っていた。

我に返った私は、深呼吸して言った。


「・・・ごめん。でもお父さんの気持ちを押してまでお母さんに言おうとは思ってへんから。」


「ありがとう。」


父は言った。


やってしまった・・・と思った。

想いを伝えるどころか、感情のまま責めてしまった。

「責めてるときは言葉と行為にしない」

そう学んだことが活かせてないと思った。

深呼吸はため息に変わった。


・・・どうしよう。

余命を伝える方法は取れない。

確かにお母さんが死を受け止められずショックで早く死ぬことだってありうる。

けど、おばあちゃんとの仲も何も変わることのないまま、お母さんが死んだら・・・。


またため息が出た。

時間だけが過ぎてくようで不安と焦りを抱えていた。



つづく