東証にシステム改革迫る -きっかけ?- | にっけいしんぶん新聞

東証にシステム改革迫る -きっかけ?-

有識者懇 売買単位見直し注文 -7面-

金融庁は6日、証券取引所の経営改革を議論する有識者懇談会の初会合を開きました。取引システムに関する障害が増えていることをふまえて東京、大阪の両証券取引所がシステム処理能力の向上や能力増強に向けた取り組みを報告しました。また株式売買単位の見直しや誤発注を防ぐ仕組みの確立を求める声も出ました。

このところ連日、誤発注の一因として株式売買単位が幾種類にも分かれていることが槍玉にあがっています。
株式の売買に際しては取引単位というのがあるのですが、昔は千株単位が主流でしたが、最近は1株単位から10株、50株、100株、500株、1000株、3000株単位と銘柄によって様々になっており、「プロでも混乱する」というこのことが誤発注を招いているというのです。

しかし本当にそうなのでしょうか。

たしかに、この銘柄は千株単位だっけ、百株単位だっけ、と時に記者も分からないことがありますが、これによって株数を間違えて注文を出すなんてことはありません。
1千万円分の買い注文を出すのに、千株単位だろうが1株単位だろうが、単位が原因で株数を間違えるなんてことは考えられないからです。
仮に千株単位の銘柄を百株単位だと思って100株刻みの注文をしたとても、証券会社の端末が受け付けてくれないのですぐに誤りと気づくので実害は考えられません。
証券会社の担当にしても、売買単位があやふやだからといって客から受けた注文を余分に注文してしまうということもないでしょう。

証券会社の端末の仕様の詳細はわかりませんが、しかし記者が証券会社の発注端末に入力しているトレーダーさんに取材したところ、売買単位数が分かりにくいことが原因で発注ミスをすることは考えにくい、とおっしゃっていました。
証券会社によっては間違えやすい端末があるというならそちらを直せばすむことで、売買単位のほうを見直すというのは筋違いです。

現実的にも銘柄によって1株の株価に数百円から数百万円まで大きな隔たりがあり、現状で売買単位の統一は困難です。100万円の株を百株や千株単位で取引するのは無理な話ですし、逆に1株単位に統一するというのは、議決権を行使できる最低単位を百株や千株にしている企業にとっては問題があります。
上場企業の株券が廃止される2009年以降に向けての検討課題として挙げるのはいいとしても、誤発注対策というのはいかがなものかと思います。

そもそも、ここもとの大規模な誤発注騒ぎを振り返ってみると、みずほ証券のジェイコム株は株数と株価を逆に入力、大和SMBCの三井住友FG株は三井住友海上株との銘柄間違いと、売買単位など全く関係ありませんでした。
日興シティの日本製紙G株についてはたしかに株数の誤りでしたが、そもそも50万円の「株価」を500円と勝手に勘違いして2株買うところを2000株の買い注文を出しているのです。
昔の人間からすれば日本紙は3ケタの銘柄(何年か前に千株を1株に併合(=単位のくくりなおし)して株価が千倍になった)という先入観があるとはいえ、証券関係者が株価をろくに確認しないで株を買おうとしている時点で問題外です。売買単位はまったく関係ありません。

いったいなぜ売買単位の乱立が誤発注を招いているなどという話になっているのでしょうか。
なんとなく、という以上に具体的な事例や根拠があるのでしょうか。
それとも誰かの単なる責任転嫁なのでしょうか。
正直、よくわかりません。

もともと日経新聞では昨年あたりから株価の隔たりがあまりに大きいことに疑問を呈していて、取引し易い単価になるよう株式をくくりなおして取引単位を統一すべきだという意見記事も掲載されています。本紙でも以前取りあげたように、たとえば新日鉄(現在400円台、千株単位)は千株を一株に、ソニー(現在5000円台、百株単位)は百株を一株にしていずれも数十万円の株として1株単位で売買するようにしたほうが初心者にもわかりやすいのではないかなどと提言しているのですが、記者もそのこと自体については悪いとは思っておりません。

しかしながらここへきてどういうわけか誤発注の問題と絡められてしまっていることには、戸惑いを感じているところであります。