ある日本共産党批判 | 日月抄ー読書雑感

ある日本共産党批判

「週刊朝日」 (5月5日~12日合併号)は[赤い共産党の黒い内幕]という題で、03年、日本共産党役員をセクハラ事件で罷免され、参議院議員を辞職。昨年7月離党した筆坂秀世氏へのインタビューを載せている。筆坂氏は先日、新潮社から「日本共産党」を出版しその内情を暴露したばかりである。この内容については不破哲三氏が赤旗で「筆坂秀世氏の本を読んで」 という題で批判を加えている。

私はこのような暴露物の本は嫌いで読む気はしないが、週刊朝日のインタビューを読み、セクハラ問題の真相、処分問題、不破氏の絶対的権力、秘書問題などその次元の低い内容にうんざりしてしまった。

私は決して共産党を全面的に支持するものではなく、むしろ常に誤謬性のない考えや、反対意見に耳を貸そうとしない態度にも疑問をもっている。かって日本共産党を離党した安東仁兵衛を思い出し、彼の書いた「戦後日本共産党私記」を書架から取り出し読み返してみた。

安東は学生時代、「日本共産党東大細胞」のキャップとして活躍した人物である。この本を読むと安東は独自性を発揮し必ずしも党中央に従わなかったことが分かる。結局、安東はイタリアのトリアッチが唱えた構造改革を参考にした民主主義的社会主義革命路線を標榜するが、修正主義の批判を受け、一枚岩を標榜する党中央から受け入れらず離党してしまう。

安東はこの本でそのいきさつを理論対立を中心に描いている。そこには共産党中央の体質批判もあるが、彼の政治的信念や愚直に生きた姿が描かれている。彼は離党後も「アンジン」の名前で親しまれその理論実現に生涯をかけている。この本を著したのも離党後10年を経てからのことである。「私記」とは言いながら戦後日本の共産党史の内容になっている。

しかるに筆坂氏は離党1年も経っていないのに「日本共産党」の題名で書物を著している。その内容からしてまさに私記というべきもではないか。26日の赤旗は『週刊朝日』編集子の不見識」 を載せている。日本共産党を擁護する気持ちはないが、セクハラ問題を冤罪という筆坂氏に無理があり、なぜ週刊朝日がこれを載せたのか疑問が残る。

安東仁兵衛著  戦後日本共産党私記  文春文庫1995年5月刊