紙メディアと電子メディア | 日月抄ー読書雑感

紙メディアと電子メディア

総務省は19日、インターネットの国内ブログ登録数(9月末日)は約473万人に達したと発表した。3月末に比べて約4割増加し急増していることが分かる。またブログに似たSNS(social networking service)も半年で3倍以上増え399万人になったそうだ。ホームページよりも利用しやすく、登録者が日記や随筆あるいは意見を書き、それに対するコメント、トラックバックができる仕組みになっており、私も利用している。

最近は世に倦む日日 のように鋭い社会評論のブログが多くの読者を集めている。またこのブログの提唱でSTOP THE KOIZUMI に参加するブログも増え、ブログの横のつながりも出てきている。これは今までにない世論形成の形態である。従来はオピニオン・リーダーと言えばマスコミ、特に新聞が大きな役割を果たしてきたが、木鐸としての性格を失い、これに飽き足らない層が増えてきたのではないか。

最近,元毎日新聞社編集長の歌川令三氏が「新聞がなくなる日」を著した。それによると紙メディアと電子メディアの違いは,後者が桁外れに情報発信量が大きく、伝達速度が速い事。さらに受信、発信ができる双方向性ができることであると述べている。ブログはまさにそれである。歌川氏はこれに危機を感じてこのような題名になったものと思われるが,ブログのような電子メディアがすべてよいというわけではないと思う。

新聞は「公器」として確かな意見を述べることができるのに対してブログのほとんどは「匿名性」が強いということである。いわば「私的」な言説で責任が伴わない危険性がある。これが世論となることは恐ろしいことである。「STOP THE KOIZUMI」に集うブログは真面目なものが多く世論形成の役割を果たすのではないかと期待している。しかし、かって電子メディアから発した「自己責任」が飛び火しマスコミを席捲したこは記憶に新しく、単なるプロパガンダに終わる危険性もある。問題は私的意見がどのように公共性を築くのかにかかっているような気がする。そして新聞も電子メディアより優位性を保つためには権力に左右されることなく主体的にオピニオンリーダーとしての役割を果たすことではないか。

歌川令三著  新聞がなくなる日  草思社 2005年9月刊