詩人が街にやってきた | 日月抄ー読書雑感

詩人が街にやってきた

秋田県大館市城西小学校で15日、同市出身の吉田文憲さんら3人の詩人による「詩人ライブ」が開かれた。自らの作品を朗読したほか、児童の詩を鑑賞し、5年生70人に詩の持つ言葉の楽しさや重みを伝えた。ライブの様子は録画され、同時に児童が生の詩に触れる様子がインターネットを通じて、全国に配信された。これは、芸術や情報メディアの創作に取り組む「コミュニケーション未来研究会」主催。同会では「詩人が街にやってきた」と題し、全国の学校などに詩人を派遣する事業を展開。毎回、活動の様子をインターネットを通じてライブ中継している。一昨年、子どもゆめ基金の助成を受けて始まった事業は、同市で7カ所目の開催だという。

そのホームページ「詩人が町にやってきた」 にはその趣旨が次のよう書かれている。
「ほとんどの人が詩と初めて出会うのが小学校の教科書です。その出会いをさらに豊かなものにするのが、詩人の肉声で語られる自作朗読に触れることです。活字だけでは読み取れなかった、感情の襞までも朗読は伝えてくれます。今回の企画は、詩人たちが触れあうことの少ない地方の小学校の教室や、町の小ホールなどで子どもたちを前に朗読し、さらにその情景をインターネットライブにより全国の子どもたちと共有する機会をつくりたいということから出発しました。」

当日秋田県比内町出身の吉田さんは前夜書いた「比内、ピナイ、灰」という詩を朗読した。

ぼくが十歳まで育った町 ぼくの生まれた町
そのピナイが消えたら
ぼくの生まれた場所もなくなってしまったきがした。
名前とは愛するものの呼び名ではなかろうか・・・
比内、ピナイ *比内はアイヌ語ピナイが語源と言われる。

これは市町村合併により「比内」の名前が消え去ろうとしていることへの驚きと愛惜の詩である。吉田さんには「花輪線へ」という詩がある。それは故郷を離れた懐かしさを叙情的に歌いあげている。(吉田文憲詩集)。吉田さんは現在現代詩の最前線にいる詩人であり、宮沢賢治研究者としても知られている方である。小学校の子供たちが詩人たちとお互いに自作の詩を朗読しながら触れ合うという行事は、子供の琴線にふれるまとない機会である。

吉田文憲著 吉田文憲詩集  思潮社 (1993-04-20出版)