なぜ阿弥陀仏は発明されたのか? | 釈迦牟尼スーパースター ~仏教のつれづれ~

なぜ阿弥陀仏は発明されたのか?

昔から、お寺でたくさんの「阿弥陀如来像」を見てきました。
娘心に「あなた様は、どちら様?」と思ったものです。

お釈迦さまは実在の人物ですが、
日本ではお釈迦さまより人気がある「阿弥陀様」とは誰なの?と。


阿弥陀仏は、推定・紀元1世紀界隈のインド人が考えた、
「想像上の仏」なわけですよね。

でも、なぜお釈迦さまだけで満足できずに、
阿弥陀仏を”発明”したのでしょうか?



釈迦むに・スーパースター ~仏教のつれづれ~  私の好きな浄瑠璃寺の阿弥陀仏、ズラリ9体も。


以下は、『仏典をよむ』(末木文美士著)の2章「無量寿経」をもとに、
自己流で書いたメモです。


阿弥陀が登場する主な経典は、
「無量寿経」「観無量寿経」「阿弥陀経」(いわゆる浄土三部経)があります。
「無量寿経」と「阿弥陀経」はサンスクリット語仏典もあるのでインド成立、
「観無量寿経」は漢訳しかなく、中国などで成立した可能性が大きい。
(一番古い漢訳「大阿弥陀経」の成立が2世紀と推定される)


そのとき次に世自在王仏という名の仏がいた(中略)。
そのとき、ある国王が仏の説法を聞き、心に喜んで、
最高の正しい真実の悟りに向かう心を発して、
国王の位を捨て、沙門(出家修行者)となって、法蔵と名乗った。」


つまり、
阿弥陀も、もともと国王だった!(釈迦のアナロジーでしょうね)
・如来になる前、前世は「法蔵」という名前だった!
・自分で悟りを開いた釈迦と違って、
 「世自在王仏」というお師匠さんがいた


へ~。そうだったのか。


で、阿弥陀は長いあいだ思惟を重ねて、「理想の仏国土構想」を確立します。
どのぐらい長く思惟していたかというと、五劫=約216億年!! 長い!


その構想には48項目あって(「阿弥陀の48願」)、
特に「18願」=心から阿弥陀を信じて、阿弥陀の国に生まれたいなら、
10回思念するだけで実現する=は後々に影響を与え、物議をかもします。
(後の、浄土宗・浄土真宗は、この第18願から来てるんですね)



釈迦むに・スーパースター ~仏教のつれづれ~ 「五劫

思惟阿弥陀如来像」の特徴は、どれも髪がもっこりしてること(写真は東大寺)。

200億年以上も考えていたので髪が伸び放題なのだ。  

                      


歴史的にみると、阿弥陀の語源は、サンスクリット語の
アミターバ」(無量の光明)と「アミターユス」(無量の寿命)。
その前半「アミタ」の音写が「阿弥陀」。
起源の違う2つの仏を、合体させたものと思われます。



◆ なぜ「阿弥陀」が必要になったのか? ◆


紀元1世紀ころのインド人は、なぜ阿弥陀を発明する必要があったのでしょう?


・釈迦が亡くなって約500年。次の仏=弥勒が登場するのは56億7000万年後。
 仏不在のまま、そんなに待ちきれない!
 現在も生きていて、私たちを救済してくれる仏が欲しい。


・仏教では、一つの世界に、仏は一人だけと決まっている。
 だったら、「世界は他にもたくさんある」ことにすれば、
 同時にいくらでも仏がいてもOKではないか。


・同時に複数の仏がいることにすれば、
 私たちも輪廻中どこかで仏と出会って「誓願を立てて
 仏に承認されて、修行ののちに仏になれるかも」。



阿弥陀は、西方浄土にいるとされています。
実は当初、東方にも「阿閦仏」の「妙喜世界」があるとされましたが
これは広まらずに廃れてしまいました。
やっぱり、「死後に浄土に行く」→「日の沈む西に浄土がある」
というほうが、説得力があるのでしょうか。


仏が、ある方角にいて、姿を持った外在的な存在だと見るのは、
末木先生いわく
「仏教の正当をはずれたものともいえる。
それに固執した中国の僧・善導と、彼に師事した日本の法然によって、
広まったが、仏教哲学的にはきわめて理論付けにくい」。

ですが、この「他者の存在を前提とする」ところが、

大乗仏教の本質である、と末木先生は言います。



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