JAL新会長は禅のお坊さん
今日、あのJALが会社更生法を申請、つまり”倒産”しました。
新会長としてJAL再建を担うのは、
ご存知のとおり京セラ・KDDI創業者の稲盛和夫氏です。
民主党の支援者でもあるので、その関係で頼んだのでしょう。
稲盛氏がいちおう僧侶でもある、というのはよく知られています。
65歳で”出家宣言”をして、97年に臨済宗妙心寺派の円福寺で得度しています。
(妙心寺派というと、私が何度か講座にいった花園大学と同じですね)
”お坊さん”がJALを再建するというのも、すごい話です。
稲盛氏は、すばらしい経営者だという評価が多いのですが、
一方で、宗教がかっていてなんか気持ち悪い、という指摘をしたのが、
名著『カルト資本主義』を書いたジャーナリストの斎藤貴男さんです。
この本では、「稲盛和夫という呪術師」という章を設けて、
稲盛氏が主催する「稲和塾」の取材や、
稲盛氏自身のインタビューもしています。
「稲和塾」には、多数のベンチャー経営者などが入っていて、
「京セラ・フィロソフィー」を学ぶ場で、
稲盛氏の言葉に、数百人が涙を流さんばかりの勢いだそうです。
この本に出てくる稲盛氏の言葉を引用すると、
「面白いことに、利他になったら決して損はしないんですね」
「これはもう見事に宇宙ってのはそうなってます。
徹底して利他で行ったら、自分も潤うようになっとんです」
「(社員の)長時間の拘束はまったくない。しかし自発的に
夜更けまで働くことは、各人の燃える情熱の表現だ」
ね、なんか気持ち悪いでしょう?
最後のやつとか、過労死裁判で必ず会社が出す言い分です。
利他で儲かれば、そりゃハッピーですが、実際に働いている人なら、
「宇宙ってのはそうなってないですよ」とわかるはずです。
下請けのコストを下げさせる、社員をリストラする、
自社製品のいいところだけをオーバーに宣伝して売る、
それを「世のため人のため」と自分に言い聞かせながら、
なんとか儲けを出すのが仕事の日常なのであります。
たとえば『ダンマパタ』の最初のすばらしい一節、
「ものごとは心にもとづき、心を主とし、心によって作り出される」
だって、会社はよく、似たようなことをいうわけです。
たとえばサービス残業もノルマ競争も、
「自分の成長の機会だと思ってやれ」と言うわけですよね。
社員も、そう信じてやるわけですよね。
著者の斎藤貴男氏(この人も若干エキセントリックなのですが)は、
宗教、ニューエイジ思想が、企業経営に利用されることの
気持ち悪さ・危険性を、『カルト資本主義』で突いています。
- カルト資本主義 (文春文庫)/斎藤 貴男
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紀元前500年にお釈迦さまが説いた教えを、
その2000年以上あとにまったく違う文脈で出てきた資本主義=企業が
安易に流用するのは、お釈迦さまに失礼なんじゃないでしょうか?
もちろん私は稲盛さんにお会いしたことがないですが、
みなさんの言うように立派な経営者なのでしょう。
これから、JALは1万人以上をリストラしないといけないそうですが、
稲盛氏はそれも立派に「利他の心」でやり抜かれることでしょう。
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