親友のHIVアクティビストに相談した。
HIVアクティビストとは
HIV陽性者本人であって、なおかつHIV陽性者やエイズ患者のために
社会的な活動・人権活動などを行なう人たちのこと。
親友は、自身が10代前半でレイプ被害に遭い、
瀕死の重傷を負うだけでなく、
HIVに感染し、そして子どもを出産した。
「HIV POSITIVE(陽性)とは、POSITIVE(前向き)に
生きる人生なのよ」
と多くの人に伝え続けながらも、
彼女自身もいろいろなコンプレックスや、
否定的な感情と、日々向かい合い、
葛藤しながら生きている彼女。
彼女だったら、フィアメーラとしっかりと
話ができるんじゃないか、と思った。
彼女はすぐに駆けつけてくれた。
スタッフたちも事情を知った。
泣いたスタッフもいた。
フィアメーラの話しやすい母国語のズールー語で
長いこと、親友は話をしていった。
とりあえずフィアメーラは、普段のスタッフとのやりとりでは
見せない態度で、ウンウンとうなずいて話をきいていた。
私たちは話し合い、
もっと彼女に、たくさんの
みんなが、ありのままのフィアメーラを愛していること を
伝えて抱きしめていこうと決めた。
それからの日々、フィアメーラはクリクリの坊主頭だった髪を伸ばすことになった。
アフリカ人たちは、もともととてもお洒落。
髪の毛の強いカールをうまく利用して、美しい編みこみを作っていく。
スタッフが、定期的に思い思いの髪型で、彼女をお洒落させた。
おのずと、フィアメーラが、スタッフとじっくりと一緒に過ごす
時間が増えた。
髪を編みこまれている最中のフィアメーラは、口をへの字にまげて
かしこまって座り、私が話しかけても無視して、静かに神妙に座っている。
いとおしさを感じる相手の髪に人は触れたくなることがある。
また、髪に触っているうちに、いとおしさも増すのかもしれない。
髪を触られる方も、それに合わせるように心を開いていく。
ちょっとした魔法。
数ヶ月のうちに、フィアメーラの大人への痛烈な口答えが減っていき、
スタッフが彼女を怒ることも、少なくなっていった。