スイス国内にスイス人、非スイス人とちらほら友人ができ始めた。

友達作りの第一歩に何が必要かってそれは「コミュニケーションスキル」である。
素晴らしい思想や魅力的な人柄を持っていても、それを相手に伝えることができなければ友達は作れないのである。その手段は流暢な言葉表現でなくても、筆談でも手話でもそれは構わないのである。とにかくコミュニケーションを図るスキルがなんらか必要なのである。

その次に必要なのが「思想」や「人柄」であり、いくら10カ国語を話せても、その人に魅力がなければ挨拶で終わってしまう。

私はこの国の、いやこの地域の言語を流暢に操ることができない。はっきり言って全く分からない。
とりあえず、集中的に学んだ高地ドイツ語(いわゆる、ドイツで話されているドイツ語)はなんとか理解できるし、簡単なやりとりならやれる。しかし、スイスドイツ語は全く分からない。よって、高地ドイツ語も今のレベル以上を取得する努力をやめることに随分前に決めた。

そうやって割り切ったところ、私本来の人間性というものを堂々と英語か日本語かフランス語で表現できるようになり、その結果、この3つの言語を理解する友達が続々と増えてきていたのである。友達のタイプをざっとカテゴライズすると、

①スイス在住の日本人
②スイス在住の英語かフランス語を話す外国人
③英語、日本語、フランス語を話すスイス人

あたりまえだが、このようになる。

幸運なことにジャーナリストの長坂道子さんと早い時期に偶然知り合いになれたこともあり、①タイプの友人は彼女のサークルにいる人たちで、皆、ユニークで知的な方々ばかりである。私より皆さん少し年上の先輩方なので、それはそれは学ばせて頂くことが多くて非常に嬉しい限りなのである。

②タイプの友人はほぼ、お隣の国、ドイツ人かフランス人、アメリカ人である。1人だけ中国人がいる。会うと決まってスイスの文句をひとしきり言って、最後に「でもいい国よね」と溜飲を下げるのである。ただ、この間、仲良しのドイツ人ご近所友人、Nicoleがとうとう音を上げてドイツに帰ってしまったが...。

③タイプの友人は実は二人しかいない。1人はDelphineというハーバードロースクール卒業(かおりん、ジェフに知ってるか聞いてみて~)の才媛スイス人女性で、なんと日本語を始め6カ国語を話す、何とも羨ましい素敵な人である。もう1人は、近所に住む英語を話すスイス人女性。彼女の英語はつたないながらも、コミュニケーションには問題ないし、人柄がチャーミングなのですぐ打ち解けて友人になった。旦那さんの仕事が遅いときはよく家にきてご飯を食べるほどである。

と、こんな感じで着々と自分ワールドを築いて、スイス生活を楽しみ始めていたところ、

義母が、「ドイツ語圏にいるのだからドイツ語を学ぶべきだ」と「Must」を使って主張し始めたのである。
私は聞き流し知らんぷりの天才なのでしらばっくれていたが、さすがに会う度に百回ぐらい言われたら、ちょっと私の考えを主張しておかなければと重い腰を上げたのである。

「ドイツ語は私にとって4カ国語め。しかもいくら頑張っても高地ドイツ語とは違うドイツ語。毎日ドイツ語でコミュニケーションとらなきゃとストレスをためる生活より、3カ国語話す自分に自信を持って明るく生活したい。」

とオブラートに包んで謙虚に言ったつもりだが、義母は

「それじゃ、スイスに友達できないじゃない。」

と面白いことを言うので、

「あら、お義母さんは3カ国語話しますよね。私、自分の3カ国語で友達間に合ってます。そもそも、スイスにいてフランス語と英語が取得できないようなレベルの友達なんて必要ないんですよ!!!!」

と応戦してしまった。大人げない応戦だとは思ったが、義母を黙らせるにはこれぐらい言わないと仕方なかったのである。

前述の長坂道子さんは、日本語、英語、ドイツ語、フランス語としっかり取得なさっているわけで、私は3カ国語ぐらいで偉そうに義母に意見している場合ではないのは重々承知している。しかし、今現在は、これで手一杯なのである。そのうち、ドイツ語もゆるゆる身につけて行こうと軽い目標を立ててはいるが、ストレスをためない程度にという前振りが入る。

まあ、義母にしてみたら、息子の文化を軽んじているとでも見えているのかもしれないので、気持ちは分かるが...。嫁姑は世界中どこでも色々あるということである。