「チェルビ」第四十八話 恋愛連載小説 | 「おっちゃん王国」NTG(大人になりきれないおっちゃん)のブログ

「チェルビ」第四十八話 恋愛連載小説

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もーりぃ嬢のとこ で、大きくなったチェルビが見られる! ありがとです♪





僕たちを乗せたワゴン車が、深夜の街を走り抜ける。


向かっている先は、クライアントのビルだ。


このクライアントは、得意先の中でも、トップクラスの大口客だ。


仕分け作業の時に、伝票にその名前が印されているのをよく見かける。


「早川君、すまんな」


「いえ・・・」


工藤主任が、おかしなことになってしまった成り行きを説明しはじめた。


クライアントのわがままが、コトの始まりらしい。


年始に掲載予定の雑誌広告を、前倒ししたいと言ってきた。


昨日で、年末発行分は締切っている。


クライアント担当者が、直接、神崎マネージャーに嘆願したが、当然、神崎マネージャーは断りを入れた。


しかし、神崎マネージャーは、なぜか、ほとんどゼロの可能性に賭けてみる気になった。


実は、掲載スペースの余裕があったこともあり、できれば掲載したいという気持ちもあった。


システムの操作とデータの完成という条件が揃えば、何とかなるかもしれない。


会社に電話してみると、期待も予想もしていなかった展開が待っていた。


僕が、何とかする可能性を高めてしまうという事態が発生した。


神崎マネージャーは、成功すると判断した。




僕の周りで、僕の中で、何が起ころうとしているのか、全くわからない。


気持ちは、昂ぶり続けることをやめない。


「今頃、神崎のやつ、絶対喜んでるやろな」


「喜ぶのは、まだ早いですよ」


「大丈夫や。早川君やったら、いけるって」


「ありがとうございます。まあ、ドロ舟に乗った気でいてください」


工藤主任は、いつもの大声で笑っている。


僕は、缶コーヒーを飲みながら、頭の中で、作業の段取をシミュレーションしていた。


神崎マネージャーは、システムを操作するために、別の場所に向かっている。


クライアントのビルに到着した。


「すみません。無理、言いまして・・・」


担当者の男性は、水野と名乗った。


水野さんは、僕と工藤主任を、ビルの裏にある従業員通用口に案内してくれた。


エレベーターで五階まで昇った。


誰もいない事務所の蛍光灯は、全て灯っていて、部屋全体が明るい。


透明のパーティションで区切られたスペースに入ると、外からの音が遮断されていて、とても静かだ。


早速、パソコンのあるデスクに向かった。


ディスプレイに映し出されたデータを、水野さんに確認してもらった。


二度のチェックでも問題なかった。


データを完成させていく。


工藤主任が、携帯電話で神崎マネージャーと連絡をとっている。


「早川君、いけるか?」


工藤主任から携帯電話を受け取った。


神崎マネージャーの指示通り、オンライン入稿ソフトを立ち上げる。


神崎マネージャーは、一時的にシステムをロック解除して、アップロードサーバーを開放したことを伝えてきた。


パスワードを入力して、ログインした。


ディスプレイは、膨大なデータリストを表示しはじめた。


その中の一つを、完成したデータとすり替える作業を始める。


終了した。


電話の向こうで、神崎マネージャーが、僕に任務完了を告げた。


「ありがとうございます」


水野さんは、紙コップに入ったホットコーヒーを用意してくれた。


一口目から、おいしく感じなかったのは、木下さんからもらった缶コーヒーを飲んだばかりだからだ。


もう一つの原因は、安堵感からくる空腹のせいだ。


疲労感に包まれた僕は、何の味でもいいので、ラーメンを食べたかった。






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