大阪2児遺棄事件 - IZA!産経新聞【2010/07/31 15:25】連日の悲鳴…やがて泣き | NEWS STAND

大阪2児遺棄事件 - IZA!産経新聞【2010/07/31 15:25】連日の悲鳴…やがて泣き

IZA!産経新聞【2010/07/31 15:25】より記事引用

【連日の悲鳴…やがて泣き声はやんだ おしゃれな街の死角】



華やかな若者たちでにぎわう街の真ん中で

誰にも看取られないまま幼い命が失われていた。

大阪市西区で幼児2人が遺体で発見された事件では

連日続く悲鳴のような泣き声と異臭に、マンションの住人の多くが

異変を感じながら、悲劇を防げなかった。

住人たちへの取材からは、都会の希薄な人間関係と

他人の家庭に踏み込むことの難しさが改めて浮かび上がる。

(八木択真)



事件発覚から一夜明けた31日朝、事件現場のワンルームマンション周辺は

平穏さを取り戻しつつあった。

下村早苗容疑者(23)の部屋を調べるために捜査員らが建物に入ったほかは

出入りも少なく、通行人も立ち入りを制限するテープに視線を送って

通り過ぎるだけで、足を止める人はほとんどいない。


かつては家具の街として栄えた大阪・ミナミの南堀江。

近年は最先端のブティックや雑貨店がこぞって進出し、流行の服に身を包んだ

若者たちが個性を競うように行き交う。

ミナミの新しい顔として、大阪でも屈指のおしゃれな街に変容を遂げた。


現場のマンションは、地区の目抜き通りにある。

オートロックに立体駐車場を完備した近代的な造りで

住人の多くは、街に魅せられて移り住んできた一人暮らしの若者たちだ。

しかし周囲の華やかな雰囲気に埋もれ、意識しなければ

そこにマンションがあることには気がつきにくい。


下村容疑者と同じ3階に住む女性会社員(27)が異常に気付いたのは

今年の初めごろだった。

連日のように聞こえる子供の泣き声と、使用済みのおむつを放置したような異臭。

女性は管理会社に「虐待かもしれない。何かあったら遅い」と訴えた。


管理会社はチラシなどで注意喚起したが状況は変わらなかった。

受話器が上がっていたのか、子供がそれにすがるしかなかったのか

インターホン越しに、「ママー、ママー」という声や

激しい泣き声が廊下に響く異常な状態が続いたという。


女性によると、泣き声は1カ月ほど前にぴたりと聞こえなくなった。

同時に部屋を閉め切っていてもにおうほどに異臭がきつくなった。

たまりかねて別の管理会社に通報したことで事件が発覚した。

尋常でない泣き声には、近い階の住人のほとんどが気付いていた。

児童相談所や警察に数件の通報があったことも判明している。


しかし住人同士が顔を合わすことすら少ない都会のマンションで

他人の生活に立ち入って、異常の原因を確認するすべはなかなか見つからない。

この女性も「もし虐待じゃなかったら問題になるかもと思って」と振り返り

「どうにかしてあげたかった」と自分を責める。


家族連れが住むとは思えないマンションの雰囲気も

虐待を疑う気持ちに水を差した。


マンション前で花を手向けていた近くに住む女性(39)も

「気付いてあげられなかったことがショックで…。

こんなことは二度と繰り返してはいけない」と涙をぬぐった。