【インタビュー】「七夜待」でヒロイン彩子を演じる 長谷川京子 | 芸能ニュースタレントニュース大好きのエンターテイメント情報ブログ

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 ■30歳、素直な自分を

 今年、30歳になった。新作の映画「七夜待(ななよまち)」で同じ年齢のヒロイン「彩子」を演じた。役作りとして、不安に揺れ動く彩子の心情に自分の心をそのまま委ねることにしたという。

 「女性にとって30歳は誰もが迎える大きな転換期。失敗が許される20代前半とは違う。仕事では転職を考えたり、女性としては結婚、出産なども考える重要な通り道なんです」。30歳の転換期。自身も結婚を決意、新たな人生を歩み始めた。

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 演出方法は変わっていた。これまで出演した映画やテレビドラマでは経験したことがない未知の手法に戸惑った。

 「台本がない、役の設定もない。じゃあ、いったい私は誰を演じればいいのか。かなり悩みましたね」。悩んだ結果、こんな答えにたどり着く。「結局、自分でいればいい、自分でいるしかない」と。

 戸惑いの表情、いらだった表情、怒りの表情を押し殺さず、むき出しの感情をスクリーンから発散させる。自分のままをさらけ出す覚悟を決めたその演技は見る者を圧倒する迫力に満ちている。

 昨年、「殯(もがり)の森」でカンヌ国際映画祭グランプリを受賞した河瀬直美監督から主演に指名された。ストーリーは30歳となった「彩子」が人生をリセットするためタイのバンコクを訪れ、異国の文化や人々に触れあいながら、新しい自分を探し出す-という内容だ。

 「各シーンの撮影直前にメモを渡されるだけ。脚本もなく、セリフも決まっていませんでした」

 例えば彩子がバンコクに到着する場面。メモにはこう書かれていた。「駅に着いたら観光案内所に行き、受け付けの人の言う通りにしてください」

 日本語は通じない。右往左往し、不安を隠さない彼女の表情がそのままスクリーンに映し出される。

 「役というベールなくして自分を表現することはこんなにも難しいものなのかと改めて知らされました」と苦笑した。

 女性監督との仕事は初めて。撮影監督もフランス人女性だった。「女性にしか分からないニュアンスってあるでしょ。理屈では分からない感覚。この作品は、河瀬監督とだからこそ表現できた女性ならではの映画。どうしても男性監督は自分の理想の女性像を女優に求めてしまいますから」

 試写を見終わった後、自分の演技を振り返りこう思った。「まるで予測ができない、まだ自分でも見たことのない表情をそこに見つけた」。恥ずかしそうにほほ笑んだが、口元には自信がにじみ出た。

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 ファッションモデルから女優の道へ。日本のスーパーモデルの女優デビューは鮮烈だった。一方で“ハセキョウ”と親しみを込めた愛称で呼ばれ、健康的で明るいキャラクターのイメージも固まっていく。

 「自分の中でも知らず知らずのうちに“こうでなければいけない”という考えが染みついてしまった」。ドラマや映画での役作りには、この固定観念がブレーキになっていると気づいていた。「でも、これを壊していく作業は本当に難しいんですよね」と吐露する。

 が、河瀬監督の演出で“吹っ切れた”。「もっと素直に自分を出していこう。“ハセキョウ”というイメージで見てくれる人に、常に自分の新しい何かを見せたい。見てくれる人を飽きさせたくない。そう思えるようになりました」

 新たなハセキョウが演じたい役は?

 「演じたい役を考えたことはないんです。ただ演じる上で一貫して言えるのは自分が思うすてきな女性を体現したい。それだけです」(文 戸津井康之)

                   ◇

【プロフィル】長谷川京子

 はせがわ・きょうこ 昭和53年、千葉県生まれ。ファッション誌の専属モデルとして活動を開始。平成12年、テレビドラマ「らぶ・ちゃっと」(フジ系)で女優デビューし、映画では「大帝の剣」(19年)、「愛の流刑地」(同)などに出演。現在、放送中のテレビドラマ「SCANDAL」(TBS系)に出演している。映画「七夜待」は全国で公開中。

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