悪性リンパ腫と末梢神経病変 | 神経内科専門医の日々のつぶやき

神経内科専門医の日々のつぶやき

専門医取得したのでタイトル変更しました。「かけだし」気分はもうやめなくては。

tyu-rittp悪性リンパ腫と末梢神経病変tyu-rittp

Clinicopathological features of neuropathy associated with lymphoma(Brain 2013: 136; 2563–2578)では、悪性リンパ腫の神経病変(原発性、浸潤性、腫瘍随伴症候群)について、感覚障害の分布や検査所見、病理所見などについてまとめています。


悪性リンパ腫はリンパ性白血病と同様リンパ球に由来する悪性腫瘍です。
白血病と異なるのは、血液やリンパ液にのって全身をまわり、リンパ節を中心に浸潤し、増大します。
悪性リンパ腫は、神経系のあらゆる部分に影響を与え、様々な神経症状を引き起こします。この論文では、悪性リンパ腫の末梢神経系への影響をまとめています。

悪性リンパ腫できたしうる末梢神経障害のパターン(臨床症状、電気生理学検査の特徴)が、免疫グロブリン治療で効果のある慢性炎症性脱髄性多発神経炎の診断基準を満たすことがあり、誤診につながる可能性を示唆しています。

悪性リンパ腫は悪性度の高い疾患であり、早期診断と治療介入が望ましいので、末梢神経障害に悪性リンパ腫の可能性を常に考慮する必要性を述べています。

以下、論文の要約です。

この論文では、リンパ腫の治療から生じる合併症(抗がん剤、放射線治療による神経障害)とは関係なく、非ホジキンリンパ腫に関連する末梢神経障害を呈した32人の患者についてまとめています。
9人の患者は、末梢神経系へのリンパ腫細胞の直接浸潤(神経リンパ腫症)を認めました。
これらの患者は、神経の近位部リンパ腫細胞の浸潤を認め、脱髄所見を呈していました。
このほかに6人の患者が、PET検査で神経リンパ腫症と考えられました。
神経リンパ腫症と診断された患者は自発痛が日常生活の障害をきたします。
5人の患者は、一次末梢神経病変がリンパ腫細胞の浸潤なしで観察されたため、腫瘍随伴性神経障害を呈していると考えられました。
この5人のうち3人の患者は、慢性炎症性脱髄性多発神経炎を呈し、1人は感覚神経障害を呈し、1人は血管炎性ニューロパチーの特徴を呈していました。
このほかの12人の患者のうち、10人は多発性単ニューロパチーを呈していました。
これらの患者は腫瘍随伴性神経障害というよりも、神経リンパ腫症と同様の臨床的および電気生理学的特徴を示しました。
32人のうち11人(神経リンパ腫症の5人の患者を含む)は、慢性炎症性脱髄性多発神経炎の電気生理学的診断基準を満たしました。
これらの中には、神経リンパ腫症も含め、最初は免疫グロブリン療法とステロイドに治療効果を認めた患者がいます。

悪性リンパ腫の患者は、さまざまな神経障害性のパターンを示しますが、神経リンパ腫症は、神経障害の主な原因です。
神経リンパ腫症での脱髄性パターンおよび免疫治療への病初期の治療効果は、慢性炎症性脱髄性多発神経炎と誤診されることがよくあります。
慢性炎症性脱髄性多発神経障害の診断基準が満たされている場合であっても、特に疼痛を訴える患者では、悪性リンパ腫の可能性が考慮されるべきとこの論文では述べています。