箱庭の空

箱庭の空

小さな世界。

不規則に更新します。
オリジナルや二次創作の小説を載せています。
応援していただけると励みになります。
また、それ以外に、ソーシャルゲームやADVゲームの感想も多く書きます。
ごくたまにイラストを描きます。

 資本主義は元々嫌いだった。
 理想とされた社会主義にも絶望した。

 そんな中でも気が楽な時は少しだけあった。
「歌、歌って」
 自分の好きな歌。
 あの人にならねだれた。
 でも、気付くと知らない歌ばかりになっていた。

 本気でやっていると失望するのも早い。

 また、新しい「好きなもの」を作らないといけないのか。
 それを思うと涙が出た。
 人と同じでないにしても感情はあるらしい。


 そんな話を、教会の前でするから弟アリオールはアリオールらしいのだとソーカルは思った。
 一日経っても、もみの木やひいらぎを初めとして生誕祭の飾り付けがまだある。最後にそれを祝ったのはいつだっただろうか。
 自分達の誕生日さえ祝わないのに、そうする理由もない。二月のチョコレートだって適当だ。

「人間がもしもいなかったら世界は平和だって言うけど」

 ちょうどそんなことが書いてあった。

「ティラノサウルスやアノマロカリスとか、そういう奴等がいるのに本当に平和なのかな」

 お気に入りの、進化のゲームで彼らは何回も滅びている。そういう所が好きだ。
 弟は、微かに笑っているような表情を浮かべた。

「神が作り出した悪の最たるものが人間、ということでしょうかね」

 アルマジロを悪魔の動物だというのを知ったのは、つい先日家で飼おうと個人輸入してからだ。

「悪の象徴みたいのが何を言ってるのさ」

 ソーカルは弟に笑い返した。

 教会の庇には、銀色の星々が吊るされ、夕暮れに光を受けてまたたいている。

 幾ら試しても手元に来たピンクのアルマジロは、丸くならなかった。

「月が出ていますね……」

 前を向いた弟が声を上げた。
 右手の、小さな丘の木々の上にくっきりと輝く満月が浮かんでいた。

「あ、本当だ」

 近くて、思いの外大きく、模様すら見てとれる程の存在感。

「兎が餅つきしてる……のかな。そういう風にも見えるもんなんだな」

 アリオールは答えずにその月に向かって歩みを進めていく。帰路でもあるわけだが。

「寒くなってきたね」

 会話はしたいが、何を話したいか分からないことが時々ソーカルにはある。

「紅茶淹れるよ、日曜に買ってきた葉っぱで。そんで……ミルクティーにしよ、あったまるから」

 今日は冷たい風もなく、散歩に向いていた。
 そんなことは、どうでも良く。

私は、何事もぐずぐずしているので、思い立った時、もしくは行動できた時、既に時期に遅れている。

そういうことが多い。

今回は秋のお祭りに焦点を合わせ、10月末に間に合わせて書き上げることを目標として話を考え、すぐ打ち込んでいった。

ASAP。

こうしてハロウィン🎃のために物語を作ることができた。

小説の本文は、二つのサイトに重複して同じ文章を載せることになるので、noteの記事へのリンクとする。

 

 

 

秋の収穫祭に、この世のものではないものが混ざってくる。

この発想は、西洋の「ハロウィン」に限らないと思う。

ハロウィンは日本のお盆なのだという説明がされることが多いが、仏教の影響があり、先祖霊はお盆に帰ってくることになっている、ということである。

また、全く別の話だが、ゴーストタウンと呼ばれても本当にゴーストが住んでいるとは限らない。

そういうことで、現代日本の情景を用いて作った。

 

どういう情況かが伝わり、文章の意味が通ること、加えて、明瞭さの塩梅を意識しつつ、同語反復を避け、異なる言葉を選んで表現しようと試みた。

案を練っている時、また、書き進めている時、それが楽しかった。

 

仮装をしたら、誰かが分からない匿名性を帯びることになる。

そして、典型的には、いたずらをしない対価としてお菓子を求める。

もしくは、禍やけがれを払い、福を置いていく。

よそから来た人との取引が社会の基本である。

いつか読んだことを、自己流でそのように解釈しまとめつつ、小説の内容に反映したつもりである。

 

ホラーはスプラッタや、おどろおどろしいお化けが出てくる話に限ったものではないと思うので、私のは「世にも奇妙な物語」などのショートショートや「学校の怪談」に近いものになっている。

そういう意味では、怖い話が苦手な人も安心して読める仕上がりである。

 

長々と書いたが、本文はそんなに長い文章ではないので、是非、お時間のある時に読んでいただけると嬉しい。

「よつのは」、猫宮ののが目当てで始めた。
紹介してくれた友人のお勧めも、ののだったように思う。

のンさんこと「のの」の使う関西弁は、イントネーションが標準語のそれと違う。
演じている榊原ゆいさんが兵庫県の人なので、神戸弁なのだろうか。

回想シーンは、迂回して込められた感情が伝わってくる。
軽口のようでやさしい台詞回し。
かつてのゲームは、キャラクターの絵が可愛らしいだけではなく、こうした所が魅力で、文化だったのではないか。

ののは関西弁だけでなく、主人公の兄からの餞別をあくまで断るところも「らしい」ように思う。
些細な反応と言葉遣いにも表れてくる気がする。

柚ねぇは全てにおいてボケていてほぇほぇしまくり。
ののの見た目と彼女のキャラは、何となく、オーガストに似ているような。
お菓子に喜ぶところがかわいらしい。

祭は気持ちのいい毒舌、ツンデレ。
刺さってくるがそれが逆に面白い。
何故、三年後に豹変したのか、とても気になる。

幼馴染ばかりが集まり再会するのは、「Clover Day's」と似ているのかも?
(したことがないので実際のところは分からないが。)

以上、8月21日23時。

ののは、幼かわいい。
自覚があるのが尚更良く、お化け屋敷でのアピールはいじらしかった。
三年前、皆に対して秘密を持ち、隠していたのが切ない。
ランドセル風の鞄がやばい、ロリン。
体も「つるぺた」。
少し前まで抵抗感のあった、こういうキャラが普通に見られるようになってきた。
どころか、何となく共感さえ。

三年前に編入試験を受けていて、現在もそれぞれ別の学校に在学中だという設定。
どういう学校制度になっているのだろう……?
六年制なのだろうか。
編入試験で、主人公がサイン、コサインを使っているから高一相当。

わざとのののみを連れて、タイムカプセルを探す。
他のヒントも気になるが、攻略とかルートがきっとあるのだと思う。
そこに、少しずつ祭と衣織が関わってきて、軽妙に話が進む。
衣織は勿論、主人公の挑発でトランプ勝負に容易く乗ってしまう祭も分かりやすい。

主人公、何かにつけて全てスケベでよろしい。

初めはアクセントなどに違和感もあったが、ののの関西弁が心地良くなってきた。
こんな風に語りかけられてみたい。
「ここ」や「まーくん」の発音がいい。

ののに「どない?」と突きつけられた、彼女が描いた絵は、衝撃的……。
芸術というよりも漫画風。
こういう絵だとは思わなかった。
美術部で許容されているというのが、どういうわけなのか。

以上、8月23日21時。

引っ越しが多かったのの。
関西弁を笑わず、聞きたいと言ってくれた主人公達のお陰で、毎日が楽しくなった。
家の片付けを始めとした家事も、きっかけだった。
この話はしんと心に沁みた。
主人公がつけた落ちもあったが、それは、関西弁で悪口を言うために聞きたかったというもので、料理の塩みたいだった。

現在と、三年前の回想が交互に来る構成は、私は好きだ。
自分も、日常や会話の中で不意に思い出すことがあるから。
服装(制服の違い)でどちらなのか視覚的にも分かるようになっているのが良い。

以上、8月24日23時。

よく分からない学校制度、「学園」を逆手に取った、非現実による現実の抽象化。
夏休みの終わりに、タイムカプセルを探す。
ずっと一緒にいた仲間と、これからも一緒にいたかったがそういうわけにもいかなくなる。
「学園」が存在しなくても、起こり得ること。
とても寂しい。

山本真美先生のキャラがとてもおもしろい。
見た目はあれだし、不潔でだらしない人のようだが、こういう人がいたら学校が楽しそう。
いじれるし、おふざけも許されそうだ。
実は……生徒思いのいい人……、ということはないか。
奥さんは恋人、そういうもんじゃないかと当然に言う主人公が良い。

タイムカプセルには何を入れるものだろう。
見たくないもの、見られたくないもの、大事なもの、時が経つと恥ずかしいもの……。

廃校のセンチメンタル。
いつまでも同じまま残ってはいないということの象徴。

回想で、ののが柚ねぇに大阪に引っ越すことを伝える場面、目が熱くなった。

廃園という言葉で(全く同じ意味ではないが)、「巨神と誓女」の「廃園の巨神」を思い出す。
鉄骨みたいなものでできていて、飛行機を飛ばしたり、結婚を操作したりしてくるすごいやつ。

祭の、全てが悪口と言ってもいいくらいの台詞が小気味良くて仕方ない。
本気でもあり冗談でもあり、信頼関係に基づく発言でもある。
こういう友もあってもいいかもしれない。
後に現れたツンデレという類型なのだろうが、それで括って表現するには少々勿体ない。

廃校後の、有志による体育祭に沢山集まる、そんな青春。
よく考えるとありそうにない、しかし嘘だと思った上で楽しむいい話なのだろう。
そして、その時の主人公をかっこよかったと言ってくれるののに「萌え」。

冗談から始まってしまったヌードデッサンと、ののの反応がおもしろい。
主人公の的を外した告白もおかしかった。

以上、8月25日25時。

ヌードデッサンからエロシーンへの移行の流れは自然。
こういう入り方なら切ったようではない。

もぞもぞする、三年前と現在のエロシーン。
現実ではなく恐らく幻。
その証拠に、暑さが感じられない(三日間ずっと同じ制服だし、探検していてもそのような描写がない)。
しかし、タイムカプセル探しは遅々として進まず、三日目にぽっと結果が出る。
途中で昼寝したりなど。
まるで、夏休みの宿題だ。
そのぼーっとした感覚にだけ夏の情景がある。

以上、8月26日18時。

終わった。
バス停に行く途中で、保留していたあきすとぜねこ。
音楽が、寂しい風景を際立たせる。
三年前も最後だったし、今回もこれで最後。
さくさくっと読んでいって、良かった。
思い出いっぱいの、去っていく夏が感じられる終わり方。
発言はいやらしいが、いたずら的でいやらしくない。
最後までずっとお茶目なのの。

くどすぎず簡単にまとまったいい話だった。
よく考えるとおかしいところもあるが、それでいい。

後日談、というか、あの時こうだったら、という仮定での話がある。

音信不通になってしまった理由。
嘘でも、本当でも。

カプセルに入っていた『すきな人』の文字。
いつかは見せたい秘密だっただろう。
ほのぼのとこそばゆい。

自分が好かれていることに、自信がないのの。
身体のせい、のようだが、誰でも抱くことのある不安。

えっちシーンは情緒がある。
大切なのはイメージ、似合うかどうか、とは自分好みの説得だ。
つるぺたの「つる」の方がはっきり文で書かれるのは珍しいような。

台所は大事な、ののの場所。
そこは佐藤先生にも、他のお隣さんにも渡したくない。
象徴として、気持ちが分かる。

「奇跡」を口にするのの。
目パチ、口パクがあるのに気付く。
立ち絵にあったのにも初めに驚いたが、一枚絵にもあるのか。
それだけでなく、カットインや多彩な立ち絵の表情、ののが小さくなり遠ざかる演出など凝っている。
使用エンジンの吉里吉里、こんなことまでできてしまうのか。
重くなく、読みやすくもある。

初々しい、二人の行動と会話。

以上、8月27日19時半。

さらっと話される野球観戦のエピソードにほろっとした。
守ってくれる手だ、という。

「もう一つのよつのは」でのえっちシーンは気恥ずかしい。
連続だし……しかしこれがおまけ。
好かれていることには自信が持てた、と、そういう落としどころ。

とてもいい誠の提案。
これこそ安直なハッピーエンド。
将来のことを見据えて、こういう大学の志望動機もある。
と、思ったらオチが。
息が抜けて笑えてしまった。

同棲生活のほの甘さ、「バイナリィ・ポット」の奈都子(なっちゃん)ルートのラストに似ている。
よき締め。
「お隣さん」なのだから当然に世話を焼く、そういうもの。

この子(のの)、四月生まれなのね。

次は衣織の話のよう。
でも、ののが目当てだったので、一度切る。
夏休み期間の終わりにこの話を読め、ほのかな情趣があって良かった。
関西弁の少女と廃校で過ごす三日間。

以上、9月2日20時40分。

動作が軽いと書いたが、それはWindows10だからのようで、発売された頃は重かったそう。

以上、9月6日23時40分。

公式サイト:
http://www.iam-hiquality.com/soft/02leaf/index2.html
2006年1月27日発売。