【山本直人氏 インタビュー①:マス広告が不調な理由】
ネットトレンド研究室インタビュー第3弾。
今回は山本直人氏にインタビューしました。
全4回に分けてマーケティングについてのお話をお伺いしました。
山本直人氏については、下記URLをご参照下さいませ。
naoto_yamamoto:自己紹介およびこれまでの経歴について
Q 新刊「売れないのは誰のせい?―最新マーケティング入門 」(新潮新書)を拝読しました。
「全く売れなかった商品の広告を作ったクリエイターが表彰されて、
足を棒にした営業マンはどう思うのだろうか?」という部分が
特に面白かったです。
今、マス広告の売上が除々に下がっていて、インターネットが理由だと
言われているのですが、本当にそうなのでしょうか?
ネットはドライバーのひとつではあると思います。
但し、マス広告が伸び悩んでいる理由は複合的なのではないでしょうか?
今までマス広告が効かないことがあっても許されていたのは、
商品がそこそこ売れてたからではないかと思うんです。
それが今メディア環境の変化が起きていて大変だということになっていますよね。
でも、90年代にメディアの変化の前に起こったのは流通の変化なんです。
流通の規制緩和があって組織小売が出てきた事です。
巨大なスーパーのチェーンを組織小売というのですが、
彼らが商品を大量に安く売っている。
これはメーカーが安く売れるような取引条件をのんでいるからなのです。
その値引きするお金がどこから出てきているかというと、
出元としては広告と同じなんですよ。
営業利益を重視して考えれば、広告費を使って売っても値引きをして売っても
経費を使うという意味では同じなんですから、より効率的で営業利益率を高められる方法を選択しますよね?
ヨーグルトのような日用品が典型だと思うのですが、私は毎日食べるけれど
特にお気に入りのブランドというのはありません。
そのため、その日の特売のものを購入することが多いです。
商品への関与度が高い消費者の割合が少なく
必要だけど切らしているものは安いほうを選んだりしますよね。
とすると、そういう商品は販促費を投下したほうがいいのではないか
という仮説が成り立ちます。
企業の側もデータを検証していて、値引きと広告のどちらが効くかを
今シミュレーションしているのです。
Q ちょうどイメージでいくか?実弾でいくか?のような形でしょうか?
そうですね。
確か2-3年前だと思うのですが、某ティッシュがブランド広告を
実施したことがあります。
理屈の上ではブランディングがうまくいった分だけ値段が高くても
売れるはずなのですが、実際は難しいですよね。
ティッシュなども結局は、原材料高騰の影響で各社揃って値上げになります。差別化で利益を上げることができないから、一斉値上げなのでしょう。
Q 流通の変化、インターネットの他にはどのような理由が
考えられますか?
もうひとつは普及率の問題もあると思います。
マス広告は「それが生活に必要なんですよ」というメッセージを
広く伝えるのに便利だったという仮説です。
だから、IT製品もそうだと思うのですがケータイの普及期、
PCの普及期にはマス広告は効いていたと思うんですよ。
ただ普及期が終わってしまうと売れなくなってしまうという
ことはメーカーも分かっていて、だから2・3年毎に
OSをアップグレードしたりしていましたよね。
OSが変わるというのは最近なかなか話題にならなくなってしまいましたが。
普及が一通り終わると、どれくらい買い換えるかは関与度によって変わります。
毎日パソコンを使う人なら毎年変えるかもしれませんが、
全然使わない人は買い換えませんよね。
そうなった時に、売る側の戦略としてニーズにずっとこたえていけば
活路があるのだと思うのですが、実際にはキャンペーンのために
無理やり広告をうったりしますよね。
春のキャンペーンです。今度は夏だ。という風に。
効果も何も関係なく、費用があるから使うというような。
市場が飽和している時点で、「普及してますよ」という同調効果を担う
マスの役割はある程度終わりなんではないかと思います。
市場が開拓されきって皆が持っているという風になると、
マス広告の役割はもう終わっている。
ビールが鮮度を謳ったのも同じ時期じゃないかと思うんですよ。
ビール市場の開拓が終わった後に、論点をずらしたわけですよね。
Q 「ビール」という商品の普及は終わったけど、「鮮度の良いビール」
というものはまだ普及していなかったわけですよね?
そうですね。
(了)
【関連】
インタビュー中の山本氏の新刊は、amazonでも販売されています。
今回は山本直人氏にインタビューしました。
全4回に分けてマーケティングについてのお話をお伺いしました。
山本直人氏については、下記URLをご参照下さいませ。
naoto_yamamoto:自己紹介およびこれまでの経歴について
Q 新刊「売れないのは誰のせい?―最新マーケティング入門 」(新潮新書)を拝読しました。
「全く売れなかった商品の広告を作ったクリエイターが表彰されて、
足を棒にした営業マンはどう思うのだろうか?」という部分が
特に面白かったです。
今、マス広告の売上が除々に下がっていて、インターネットが理由だと
言われているのですが、本当にそうなのでしょうか?
ネットはドライバーのひとつではあると思います。
但し、マス広告が伸び悩んでいる理由は複合的なのではないでしょうか?
今までマス広告が効かないことがあっても許されていたのは、
商品がそこそこ売れてたからではないかと思うんです。
それが今メディア環境の変化が起きていて大変だということになっていますよね。
でも、90年代にメディアの変化の前に起こったのは流通の変化なんです。
流通の規制緩和があって組織小売が出てきた事です。
巨大なスーパーのチェーンを組織小売というのですが、
彼らが商品を大量に安く売っている。
これはメーカーが安く売れるような取引条件をのんでいるからなのです。
その値引きするお金がどこから出てきているかというと、
出元としては広告と同じなんですよ。
営業利益を重視して考えれば、広告費を使って売っても値引きをして売っても
経費を使うという意味では同じなんですから、より効率的で営業利益率を高められる方法を選択しますよね?
ヨーグルトのような日用品が典型だと思うのですが、私は毎日食べるけれど
特にお気に入りのブランドというのはありません。
そのため、その日の特売のものを購入することが多いです。
商品への関与度が高い消費者の割合が少なく
必要だけど切らしているものは安いほうを選んだりしますよね。
とすると、そういう商品は販促費を投下したほうがいいのではないか
という仮説が成り立ちます。
企業の側もデータを検証していて、値引きと広告のどちらが効くかを
今シミュレーションしているのです。
Q ちょうどイメージでいくか?実弾でいくか?のような形でしょうか?
そうですね。
確か2-3年前だと思うのですが、某ティッシュがブランド広告を
実施したことがあります。
理屈の上ではブランディングがうまくいった分だけ値段が高くても
売れるはずなのですが、実際は難しいですよね。
ティッシュなども結局は、原材料高騰の影響で各社揃って値上げになります。差別化で利益を上げることができないから、一斉値上げなのでしょう。
Q 流通の変化、インターネットの他にはどのような理由が
考えられますか?
もうひとつは普及率の問題もあると思います。
マス広告は「それが生活に必要なんですよ」というメッセージを
広く伝えるのに便利だったという仮説です。
だから、IT製品もそうだと思うのですがケータイの普及期、
PCの普及期にはマス広告は効いていたと思うんですよ。
ただ普及期が終わってしまうと売れなくなってしまうという
ことはメーカーも分かっていて、だから2・3年毎に
OSをアップグレードしたりしていましたよね。
OSが変わるというのは最近なかなか話題にならなくなってしまいましたが。
普及が一通り終わると、どれくらい買い換えるかは関与度によって変わります。
毎日パソコンを使う人なら毎年変えるかもしれませんが、
全然使わない人は買い換えませんよね。
そうなった時に、売る側の戦略としてニーズにずっとこたえていけば
活路があるのだと思うのですが、実際にはキャンペーンのために
無理やり広告をうったりしますよね。
春のキャンペーンです。今度は夏だ。という風に。
効果も何も関係なく、費用があるから使うというような。
市場が飽和している時点で、「普及してますよ」という同調効果を担う
マスの役割はある程度終わりなんではないかと思います。
市場が開拓されきって皆が持っているという風になると、
マス広告の役割はもう終わっている。
ビールが鮮度を謳ったのも同じ時期じゃないかと思うんですよ。
ビール市場の開拓が終わった後に、論点をずらしたわけですよね。
Q 「ビール」という商品の普及は終わったけど、「鮮度の良いビール」
というものはまだ普及していなかったわけですよね?
そうですね。
(了)
【関連】
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