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ながらくブログを書いていないので書き方を忘れてしまった。文章と言うのは意外に(?)書こうと思っても書けないものだ。プロのモノカキが早死にするのも頷ける。書かなければいけないと追い詰められるものほど辛いものはないだろう。こういうのは書きたいときに書きたいだけ書いて適当にUPできるから続くのだ。ひとたび職業売文家となったが最後、それ以外の収入がない場合は本当に書くことが好きでなければやっていけないだろう。想像以上に書いて稼ぐというのは大変そうである。
と初っ端から脱線してしまったが、今日はどうでもいい漫画の紹介をしたい。本日発売の『げんしけん』である。時間がないので内容の説明は省く。要するにオタクの漫画である。オタク向けの、オタクが出てくる漫画。それだけ。
わたしは『げんしけん』という作品の主人公は、前々から斑目晴信その人であると確信していた。斑目を除く他の登場人物の突飛なキャラクタ造形は、本質を描くためのただの目くらましにすぎないと主張したい。作者は『四年生』や『五年生』といった純文学(?)漫画でデビューし、アフタヌーンで連載するという屈折した(笑)漫画化である。直球を投げてくるはずがないではないか。前半はともかく、後半、作者は斑目を描くことが本作を描くモチベーションであったとわたしは確信する。
斑目は見た目アレな典型的オタクとして象徴的に描かれているわけだが、意外に一般的な常識とバランス感覚を持ち合わせているというのがかれの魅力なのだ。思いだしてみてほしい、あなたの後ろ暗い大学生活を。斑目のような過去を持っていたのではないだろうか。少なくとも重なる部分があるはずだ。
初めて直接かつ積極的に関わるようになった(と思われる)女性=咲ちゃんに横恋慕するあたりがリアルなオタク性をいかんなく表現している。しかも本心を伝えられずに言えずにもきゅもきゅしたり、つい意地悪な発言をしたり、メンタリティが小学生みたいなところもまさにオタクだ。リアル、あまりにもリアル。リアル過ぎて死にたくなる。思いだしてみてほしい、あなたの後ろ暗い大学生活を。。。
彼女ができる笹原などの存在はむしろ邪道であり、これなど物語の進行上やむにやまれず生み出された「サイドストーリ」にすぎない。オタクが『げんしけん』を読むのは、斑目に自らの過去を投影しているからなのだ。本作は実は斑目のための物語であり、主人公として一般に認知される笹原や荻上さんたちは、むしろ斑目の内面をあぶり出すための舞台装置にすぎない。斑目の内面はついに一度たりとも直接的に語られることはなかったが、春日部さんへの想いはサイレントに表現されていた(思いだしてほしい、斑目は第一部で結局一度たりとも春日部さんへの想いらしきものを口に出さなかった)。読者はこうしたプラトニックな斑目に自らを投影しつつも、同時に傍観者として斑目の行動をみてもきゅもきゅしていたはずだ。
第二部はその斑目の物語を回収する作品である。オタク諸君は安心して第二部を読んでほしい(笑)。
ちなみにアフタヌーンと言えば同日に『ラブやん』も出ています。今から6年前にWikipediaの『ラブやん』の初稿を書いたのはいい思い出である。
ラブやん(15) (アフタヌーンKC)/田丸 浩史

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