一勝九敗 | One of 泡沫書評ブログ

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一勝九敗 (新潮文庫)/柳井 正
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すさまじいバイタリティで、字を追っているだけで疲れた。


本書はもはやだれでも知っている「ユニクロ」の成長譚であり、また失敗の記録である。はっきり言って、これを真似できたら、わたしにも明日から世界に打って出ることのできる経営者になれる。しかし、その日は永遠に来ないだろう。


柳井さんの経営のキモは至ってシンプルだ。常に走り続ける。変化し続ける。現状に満足しない。立ち止まらない。楽天の三木谷さんも同じようなことを言っていたが、柳井さんの場合はそのレベルが段違いに思える。こうした「経営標語」は、言うは易く行うは難しの典型だが、実際どのくらいの企業がこれと同じようなことを出来るというのだろうか。わたしなど、文字を追っているだけでしんどいのに、実際にこれと同じ経営をしろと言われたら絶対に「結構です」と答えるだろう(年棒5億とか言われても無理。凡人がやったら確実に過労死する)。


たぶん多くの人も、絶対、途中で日和見になるか、脱落するだろう。だってファーストリテイリングの幹部ですら柳井さんについていけずに、どんどん脱落しているのだから。柳井さんはその辺の心境をはっきり書いていないが、長く苦楽を共にしてきた腹心の部下が「やっぱりひよったか・・・」と、内心は結構こたえたのではないだろうか。これこそがリアルな国際競争なのだろうが、日本的なメンタリティはこういうのに非常に弱いと思う。ここでブレずにやれる柳井さんは、友人としては微妙だが、経営者、リーダとしては超一流だ。


残念だが今の「ロスジェネ」世代はこれを読んでも共感しないのではないだろうか。行間からにじみ出る超競争的なバイタリティが生理的に受け付けないような気もする。日本が経済的に衰退していくのも、こういうエゴイストが自然発生的に出てこないところにあるのかもしれない。仮に、万が一労働市場の流動化が促進されたとしても、GDPを押し上げるようなリーディングカンパニーがいくつかないと残念な結果になる。


日本のビジネス書を読むなら、オーナー社長のが断然面白い。お勧めです。


ちなみに後ろの方にある「企業家十戒」「経営者十戒」は、読んでもいいが、サラリーマンは読んだだけでめまいがすると思う。疲れているときは読むべきではないw