その男㊽ | neppu.com

その男㊽

ここにきて、宣言しておくようだ。

 

「その男㊿で「その男」が過去を振り返るのは終わりだ」

 

ということを。

 

これを含めて残り3度の更新となるようだ。

 

随分と区切り良く終わるのは、狙ったわけではなく偶然だ。

 

まさかここまで長くなるとは思っていなかったようだ「その男」は。

 

ホテル生活終了間近となって、更新頻度が一気に高くなったことがそれを証明している。

 

振り返り始めは、一日一回しか更新していなかったくらいだ。

 

これでも書きたいことを削っている。

 

まだまだ書きたいことはあるが、うまく書ける自信も、時間もないため、やめておくようだ。

 

「その男」の振り返りの時期が、一カ月前まで迫っている。

 

現在に迫ってきている。

 

ゴールは間近だ。

 

 

 

久しぶりの海外遠征だ。

 

しかし一年前と状況はあまりにも変わっていた。

 

スムーズに海外へいけない。

 

PCR検査、陰性証明、入国に必要な書類、FISへ健康報告するための登録。

 

いままでやったことのない準備が多々あった。

 

すごいストレスだ。

 

移動中は常に不安がまとわりつく。

 

PCRの陰性証明を提示しなければいけなかったからだ。

 

幸い、思ったよりもスムーズに入ることができ、練習をした。

 

しかし、現地についてからも大きな問題が起きた。

 

「その男」が世界選手権前に合宿をしていたオーストリアのゼーフェルト。

 

ゼーフェルトはチロル地方にある。

 

「その男」が滞在中、チロル地方が変異株の感染拡大危険地域に指定された。

 

すぐに移動をしなければ、チロル地方から違う地域に言った場合、隔離期間が発生するようだ。

 

今の「その男」のような状態になるのだ。

 

すぐに移動する必要があった。

 

練習環境なども加味し、2度移動する必要があった。

 

現地入りする前から落ち着かない日々が続いた。

 

 

いつも以上に重みを感じた。

 

用意されたジャパンのウェアに袖を通す時だ。

 

もちろん重量ではない。

 

日本を代表のマークを背負うことにだ。

 

しばらくチームを離れていたからだろう。

 

誇らしくも思った。

 

もう一度袖を通すチャンスを得たことに。

 

「その男」は昨シーズンもジャパンを着てレースに出ている。

 

しかし、同様に世界選手権から代表入りした宇田は実に6年ぶりの代表となる。

 

「おい宇田、お前引退したんだろ?なんでここにいるんだ?引退選手が何でここまで来ちまうんだ?」

 

からかった。

 

あまり知られていないかもしれないが、宇田と「その男」は数年一緒の所属先で競技をしている。

 

その時は練習パートナーとして共に汗を流した。

 

そんなこともあり、一緒に来られたことがうれしかったようだ、「その男」は。

 

 

会場に行った初日。

 

ニヤニヤが止まらなかったようだ。

 

何度も一人でつぶやいた。

 

 

「いやー最高。やっぱりこれだよ。やっぱりここだよ。」

 

 

つぶやいたというレベルの声の大きさではなかったようだ。

 

久しぶりに会う海外選手、海外コーチも喜んでくれる。

 

何度ハグをしただろうか。

 

 

「シーズンインからずっと日本で退屈だった。やっとここに帰ってこられたよ!」

 

 

退屈?

 

 

どの口が言う。

 

 

あれだけ苦しんだ日々を忘れたのか、「その男」

 

天気が良く、気温が高かったこと、レースまでまだ時間があるということで、会場のムードもどこかのんびりしている。

 

その流れに、「その男」も身を任せた。

 

以前とはちょっと違う感覚だった。

 

周りの空気に身を任せるだなんて。

 

少なからず、周りの景色を楽しむことすらできなかった去年とは違いを感じていた。

 

 

 

そうだ。

 

忘れていた。

 

今大会のメンバーを。

 

 

宮沢、馬場、宇田、「その男」

 

 

2015年世界選手権は宮沢、宇田、レンティング、「その男」

 

6年前のレンティングが馬場に変わった形だ。

 

2019年は宮沢、馬場、カイチ君、「その男」

 

カイチ君と宇田が変わった形だ。

 

改めてメンバーを振り返っても、宇田が入ることで随分と不思議な構造になる。

 

前回初選出されたカイチ君がそうだった。

 

 

「続けることでチャンスが巡ってくる。」

 

 

いや、違うか。

 

 

「「真摯に」続けることでチャンスが巡ってくる」

 

 

かな?

 

今回の宇田もそうだろう。

 

そのチャンスを彼自身の力で勝ち取ったのだ。

 

 

「その男」にとって6度目の世界選手権となる。

 

今回は特別な世界選手権と感じているようだ。

 

過去5回の世界選手権は、ワールドカップの成績で権利を獲得していた。

 

ワールドカップで良い成績を取りたいと思う過程で、ワールドカップポイントを獲得していた。

 

それにより、気が付けば基準をクリアしていたような感じだ。

 

しかし、今回は全く違う。

 

 

「何が何でも全日本選手権で優勝して、世界選手権に出場する」

 

 

と決め、予選会からの出場で勝ち取った権利だ。

 

出場までの過程があまりにも違いすぎる。

 

故に、特別に思っていたようだ。

 

特別に感じているのにも関わらず、緊張をいつもよりも感じられない。

 

ここに来る前にイメージしていた姿とは全く別物だ。

 

なぜなのかは、なんとなくわかる気がする、「その男」には。

 

 

「以前よりもやる気がない、気持ちが入っていない」

 

 

というわけではないということだけは断っておく。

 

 

2021年2月27日。

 

いよいよ「その男」にとって、特別な世界選手権の初戦が始まる。