第二回口頭弁論---その12---原告証人 | 【続】ネコ裁判  「隣のネコも訴えられました。」

第二回口頭弁論---その12---原告証人

2006-06-17 14:06:05


足早に書記官が戻ってくる。

手にはワタシのファイルが握られていた。


裁判官にファイルを示して、原本の確認作業をする。

同様に原告川畑にも確認させると……ファイルは被告であるヨシヒロさんの机の上に置かれた。


書記官    「では次に……コチラを……。」


川畑に書類を一枚……。

ヨシヒロさんにも書類を一枚……。


相手方の証人を認めますという旨の書類のようだ。


書記官    「署名と捺印をお願いします。」

細川ヨシヒロ 「あ……はい……。」


ジャケットの胸ポケットボールペン……ポケットから印鑑を取り出し滞りなく署名捺印する。

川畑も同様に署名捺印をしている様子。


その様子を見ていた裁判官が……


裁判官    「あ……そういえば前回、押してなかったヤツがあったよね?」


と書記官に問う。


書記官    「ええ……ああ……宣誓書ですね……。」


書記官用の机の上に積まれた書類。

その中から実に手早く一枚を抜き取ると……川畑に渡した。


書記官    「コチラにもお願いします。」

川畑      「ああ……はい……。」


署名は前回済んでいるので、捺印だけ。

書記官は、押された宣誓書を確認すると……積まれた書類の中に手早く戻した。


裁判官    「えーっと……じゃあ原告証人から始めようか……原告証人さん……コチラに来て。」

ボールペンの後ろでモミアゲをカキカキしながら肩肘を付いて傍聴席のカツヲオート君に話し掛ける。


カツヲ     「はい……。」


間仕切りドアを超えて……落ち着かない様子で証言台へ歩を進めるカツヲオート君。

その様子を川畑が、自信に満ち溢れた目で見つめている。


裁判官    「え―――。では原告側証人……そちら真ん中の証言台で、
         住所・氏名・年齢・生年月日・職業を仰って下さい。」

カツヲ     「はい……。」


コホン……。


小さく咳払いをすると、カツヲオート君は始めた。


カツヲ     「住所は……カツヲ市ハマチ区ヘラブナ町6-7-8メゾンコメット208号。

         谷口イサム……歳は26……昭和54年9月9日生まれ……職業は……
         株式会社カツヲオートで整備工をしています。」


カツヲオート君は、谷口と言うらしい。

少し声は震えていたが……まぁ口調はしっかりとしていた。


続けて裁判官の指示で、宣誓書を読み上げる。


裁判官    「随分緊張している様子だけど……大丈夫?」


少し笑いながら問いかける裁判官。


谷口      「あっ!!はい……。」


ピクリとして即答する。


裁判官    「今、アナタが読み上げたとおり……ウソついたりしますと、イロイロとアナタに

         不利益な事になりますから……そこだけはどうかよろしくね……。」

谷口      「はい。」

前回川畑に見せたピシッパシッ感とは随分と違う裁判官。

果たしてタダの気分屋なのか……それとも緊張している証人を気遣ってのモノなのか……。

その真意は定かではない。


裁判官    「じゃあそこにどうぞ座って。」


手の平にボールペンを持ったまま、証言台のイスに座るように促す。


裁判官    「えーっと……じゃあどうしようかな……。」


そう言うと手元の書類をパラパラとめくり……


裁判官    「まぁいいや……先に原告……尋問して。」


チラリと川畑を見ると……少し斜めに座り直す。


川畑      「はい。」


席に着いたまま、自信満々で返答する川畑。

いよいよ証人尋問が始まった。




以下次号。