第二回口頭弁論---その5---喫煙室 | 【続】ネコ裁判  「隣のネコも訴えられました。」

第二回口頭弁論---その5---喫煙室

2006-06-17 13:44:02


コーヒーも頂いたので、またゾロゾロと4人で一階裏玄関横の喫煙室へ向かう。


タバコを吸うのはワタシとヨシヒロさんだけなので、

芝田君達はガラス張りの喫煙室の外のソファーへ腰掛ける。


ポケットからタバコを取り出した時……ハッと思いついた。

時計を見ると15分前……。


タロウ     「細川さん……ゆっくり吸ってて下さい。

         ちょっと思い出した事があるんで……。」


出したばかりのタバコを、もう一度ポケットにねじ込み……喫煙室を飛び出す。

そして裁判所を出ると、小走りで駐車場へ向かう。


一体何を思いついたか……。


「川畑は到着してるか?」って事だ。


コーヒータイム前、ヨシヒロさんが出席表にサインをした時……そこにはまだ川畑のサインは無かった。

まぁワタシの裁判の時も、出席表にサインがしてあった試しは無いのだが……。


現在開廷15分前。

もう来ていてもおかしくないだろう。


2階に戻って出席表を確認するよりも……前述の件もある。

駐車場に川畑号が停まっているかどうかを確認する方が間違いが無い。




簡易・家庭裁判所が一緒になったカツヲ裁判所。

封筒や書類などに「できるだけ公共交通機関を」との注意書きはあるが……

駐車場は随分広く作ってある。


その収納台数……第一第二と合わせれば、ざっと100台ほどは入るであろう。




出来る限り駐車場の脇を通って……人目につかないように停まっている車をチェックする。

この段階で遭遇なんて最悪だ。


川畑号はオープンカーなので、屋根は勿論「問題の幌」。

他の車と比べて随分目立つ。

遠目にも確認できる事が、ほんの少し幸いである。



捜索開始2分……。


見つけたっ!!

川畑号だっ!!

ナンバーも確認っ!!

間違いないっ!!


周りをキョロキョロと伺う。


川畑らしき人影は無い。


どうやら「ワタシ達が地下でコーヒーを飲んでいる間に到着し、2階事務室へ直行」と

予想するのが妥当な様子だ。


そう……ギリギリまで、ワタシが細川さんの証人だという事を知られたくない。

それはほんのちょっとのイタズラ心と……少しでもヤツを動揺させたいからだ。


証人としてワタシが廷内へ入った瞬間の……ビックリする川畑の顔。

想像するだけでもワクワクするではないかっ!!


それがうっかり……駐車場から直結する裏玄関……その脇にあるガラス張りの喫煙室で

被告と隠し玉のはずの証人が、煙を吹かしている様子を見られるのは……どうにも格好悪いではないか。



また小走りで元来た道を戻る。

喫煙室へ着くと、ヨシヒロさんは一服して出てくるトコロだった。


細川ヨシヒロ 「なんだ?電話か?」

タロウ     「まぁ……そんなところです。」


そう言いながら咄嗟にポケットからケータイを取り出してごまかす。


細川ヨシヒロ 「じゃあオレ……先に二階に上がってるから……。」


そう言うと、芝田君達に声を掛けて一緒にエレベーターに乗っていった。




ふぅ~~~。


喫煙室に入ると、すぐにタバコに火をつけ……ケータイで時間を確認する。


「お……10分切ったな……。電源も切っとかなきゃ……。」




ボケーっとエレベーターホールを眺める。


「これに乗る人乗る人が……みんな悩みやトラブルを抱えてるんだな……。」


ちょっと感傷に浸ってみた丁度その時だった。


一番奥のエレベータのドアが開くと……まっすぐコチラに向かってくる男が一人……。

左手に黒のカバン。

歩きながら右手で胸ポケットからタバコを取り出し……一直線にコチラに向かってくる。


あれ?

どこかで見た格好……。

どこかで見た顔……。


そう……この喫煙室に脇目も振らずに猛進してくるこの男……なんと「川畑」……。




以下次号。