第二回口頭弁論---その4---売店 | 【続】ネコ裁判  「隣のネコも訴えられました。」

第二回口頭弁論---その4---売店

2006-06-17 13:21:39


ソファーで待っている芝田君たちと合流する。


芝田      「どうでした?」

タロウ     「ああ……。」


親指と人差し指で丸を作ってOKサインを出す。


芝田      「そうですか……っ!そりゃ良かった……。」


横のカナコちゃんも小さく安堵の表情。


肝心要のヨシヒロさんはと言うと……まだカチコチ具合が微妙に残ってはいるが……

とりあえず一山越えてホッとしている様子だ。


タロウ     「ところでどうする?」

芝田      「そうですねぇ……。」


まだ開始時間まで40分もある……。


タロウ     「お茶でも飲みますか……。」

芝田      「いいですねぇ……。」

細川ヨシヒロ 「ああ……そうしよう。」


ワタシ達には暇を潰す40分間ではあるが……いきなりの証人申請と新しい書類を出された

裁判所にとっては短い確認の時間である。


もしもっとギリギリで出していたら……多分有無を言わさず次回に回されただろう。




地下一階へ降りる。


そこには売店を兼ねた小さな喫茶店がある。

官庁街の……しかも裁判所にあるこのビル唯一無二の店。


売店の機能として主なものに、切手・印紙の販売がある。


裁判所での手続きで直接現金を支払う事は無い。

費用は全て、印紙で支払われるのだ。


又、切手は「訴えた側」が事前に物納する事となっている。

原告・被告への郵送費用に主に使われるのだ。


ショーウインドウには、何十年鎮座しているかわからないロウで出来たサンプル。

ホコリも被り、色もあせている。


唯一無二の独占状態であるが故に……正直、色気もそっけも雰囲気も無い。

店頭におばちゃんが座っていなければ、開いているのかどうかも判らない勢いだ。


芝田      「おばちゃん……やってる?」

おばちゃん  「ん……あぁ……やって……いらっしゃい……。」


先頭を切る芝田君に、ゾロゾロと続く。




すすけたプラスチックのグラスに入れられたお冷が4つ運ばれてくる。


おばちゃん  「ご注文は?」

タロウ     「ホット4つ。」

芝田      「あっ……。」


その言葉をさえぎる芝田君。


芝田      「カナコ……お前……ぬるめやんな?」

カナコ     「ええ……まぁ……でもお冷入れますから……。」

芝田      「あっっ!!あっか~~~んっっ!!」


オデコを抱える芝田君。


芝田      「ええか……カナコ……っ!!」

カナコ     「なんですか?」

芝田      「コーヒーってのはな……煎れる人によって、こだわりの濃さというか味わいというか……

         そんなもんがあんねんてっ!!

カナコ     「はぁ……。」

芝田      「それをコッチの都合で薄めて飲むってのは、作ってくれた人への侮辱やってっ!!」


いや……そんな大層なブツが出てくるとは思えないが……。


タロウ     「じゃあ……ホット3つとぬるめの1つ。」

おばちゃん  「あい……。」


返事をすると、小さく笑いながら厨房へと消えていくおばちゃん。


細川ヨシヒロ 「芝田君は、いつでもマイペースで明るいなぁ……。」


小さくつぶやく。


芝田      「えっ!?ボクですかっ!?

         ……まぁそれしか取り得もないんで……。」


照れくさそうに笑う。


細川ヨシヒロ 「……おぅ……お前も一本どうだ?」


胸のポケットからクシャっとなったタバコを取り出すと……


芝田      「いや……ボク吸わないもんで……すいません……。」


と断る。


タロウ     「『吸わない』から『すいません』か……。」

カナコ     「フフッ……。」


素早くカナコちゃんが反応する。


一拍遅れて……


芝田      「プッッ!!……ちょっとオッサンくさいですよ……タロウさん……っ!!」


と芝田君が反応。


細川ヨシヒロ 「??????」


と……最後まで気づかないヨシヒロさん。


タロウ     「おばちゃ~~んっ!!灰皿っ!!」


厨房からチラリと顔を覗かせると……


おばちゃん  「ごめんねぇ……ココ禁煙なんよ……。」


と折り返す。


あら……。


おばちゃん  「タバコは外か、一階の喫煙室でね……。」

タロウ     「…………了解っす……。」

細川ヨシヒロ 「……………。」


どんどん喫煙者の行動範囲が制限されていく世の中である。


タロウ     「コーヒー飲んだら、一緒に行きましょうか?」

細川ヨシヒロ 「ああ……。」


まぁ40分なんて時間は、あっという間に潰せそうだ。




以下次号。