戦法指南 | 【続】ネコ裁判  「隣のネコも訴えられました。」

戦法指南

2006-05-31 12:26:01


ヒデ      「だってそうじゃん山田屋さん。」


そう言って三つ折った右手の指を示し……


ヒデ      「『4つ目からお金掛かるんですか?』『普段からそういう料金体制なんですか?』

         『ちょっと待ってくださいね』って計3つ……質問したでしょ。」


指を一本ずつ折って解説する……。


タロウ     「ちょっとっ!!勘弁してくださいよっ!!

         ……そんな裁判に関係無い質問をカウントするなんて……。」


まさにぬか喜び。

せっかくのチャンスがキツネにつままれたみたいである。


ヒデ      「でもオレは別に『裁判に関係するかどうか』って限定した覚えは無いぜ。

         『裁判に関係するかどうか』を先入観で区切ったのは山田屋さんの勝手だぜ。」


まぁ確かに……。


呆気に取られるワタシの顔を見て、クマさんもヒデさんと一緒に笑っている。


クマ      「始めっからコイツは山田屋さんの相談にマジメに答えるつもりなんて無かったのさ……。

         いつもこうだ……人をおちょくって楽しんでやがる。」


そう言ってカウンターの上に置いてあるヒデさんのサングラスを悪戯っぽく鼻に引っ掛けると……


クマ      「普段着のこの格好と一発目のカマシが、全部を語ってるだろ?」


そう言ってワタシを慰める。


ヒデ      「おいおいおい……っ!そんな言い方すると、オレが意地悪な悪人の

         オッサンみたいに聞こえるだろっ!!」


懸命に否定するヒデさんだが……顔が笑っている。

まんざらでもないらしい。


ヒデ      「まぁハムカツと人の良さそうなアンタの為に……ちょっとだけアドバイスしてやるとさ……。」


一転、真面目な表情になる。


ヒデ      「次回は原告・被告・証人の尋問があるんだって言ってたよな?」

タロウ     「ええ……そうです。」

ヒデ      「だったら書面も書証も律儀に2週間前に出す必要なんか無いよ……。

         いや……むしろ出したら勿体無いぜ……。」

タロウ     「えっ?」


予想外の返答である。


驚くワタシに驚いたようにヒデさんは続ける。


ヒデ      「あのさぁ……山田屋さん……。」

タロウ     「はい?」

ヒデ      「一応裁判所としては『2週間前までに出して下さい』とは言うだろうけどさ……

         真面目に言う通りに出してたら、即、相手側に送達されちゃうぜ。」

タロウ     「まぁ……そうでしょうね……。」


ワタシの裁判の時も弁論期日前に、原告から書面が特別送達で郵送されてきたので
その仕組みはわかっている。


ちょっぴり太ったポンチョの書記官も、提出されたらすぐに相手方に送ると言っていた。


ヒデ      「アンタが提出しようとしているモノってさぁ……今度の尋問で尋ねる内容とカブってるだろ?」

タロウ     「まぁ……はい……。」

ヒデ      「そんなモノが事前に相手に届いちゃったらさ……コッチが何聞くかを

         バラしているようなもんだぞ。」

タロウ     「あっ……。」


確かにそうだ。

本人の受け答えから曖昧な点や矛盾した点を引っ張り出す為の尋問タイムである。


予め質問事項が判っていたら……いや少なくとも予想できたら……

それを補う回答を用意する事はいとも簡単だ。


ヒデ      「少なくとも証人の書証・書面なんてものは……当日まで隠しときゃいいんだよ。

         当日ちょっと早めに裁判所に行って、提出すればOKさ。

         ……もし万が一、何か言われたら……『今日しか証人と受け取り出来る日が

         ありませんでした』とか何とか言っておけばいいんだよ。」

タロウ     「確かに……。」


時にウソも方便か。


ヒデ      「……それに別段2回で裁判終わらせなきゃならない事情はコッチには無い。

         まぁ裁判所としては早く片付けたいだろうが……そんな事はコッチには関係無いからな。」


ちなみにワタシの際は、3回目に裁判官が噴火して終わった。


ヒデ      「3回だろうと4回だろうとやってやればいいのさ。

         コッチは定年後のノンビリオヤジだ……ボケ防止の頭の体操くらいに思っておけよ。」


ヨシヒロさん……ヒドイ言われようである。


ヒデ      「それからさぁ……山田屋さん、もう一つ良い事を教えてやるよ……。」

タロウ     「えっ!?……なんでしょう?」

ヒデ      「もし2週間前に、律儀に書面を出しておきたいって言うんならさ……。」

タロウ     「はい……。」

ヒデ      「……あ~~~~そうだなぁ…………。」


一瞬周りを見渡して考えると……


ヒデ      「山田屋さん……トランプある?」


え?

トランプ?




以下次号。