ナイストス | 【続】ネコ裁判  「隣のネコも訴えられました。」

ナイストス

2006-05-31 12:06:01


「ビックリするような仕事」って事は……「予想外」だと言う事だ。

本職の方に「本職ですか?」と聞けば、怒らせる原因になってしまうが……「それはない」と

たった今、クマさんが消去してくれた。

ならばあえて、思ったままを答えてみるだけだ。


タロウ     「え?……てっきりアッチ関係の仕事の方だと思いましたけど……。」

ヒデ      「ほっ?」

タロウ     「ですから『アッチ関係』です……ホラ『や』の付く……。」

ヒデ      「あ……やっぱりそう見える?」

タロウ     「はい。」


ココまで言われて回答に辿り着いた様子。


ヒデ      「……『アッチ関係』はひどいだろう……。」


と苦笑い。


ヒデ      「でも思った事を思い切って言う人みたいだな……アンタ。」

タロウ     「まぁ……。」


どうやら好印象らしい。


そして、今の一瞬の会話の中で……随分と深読みして回答を探したとは思われなかったようだ。


クマ      「コイツさぁ……こう見えても弁護士なんだよ……。」

タロウ     「っっっっっっっっっ!!!!!!!!!!!」


弁護士?

このイカツイ「や」の人みたいなオッサンが、弁護士!?


うちの客には「や」の人に見える堅気の仕事の人はたくさん来る。

代表選手だと、警察官だったり……先生だったりだ。


だが弁護士でこの「ナリ」はマズイだろう……。

TVに出ている橋本弁護士などは、法廷にもジーンズで行くらしいが……かなり特殊な部類だと思われる。


だがこのヒデさんのいでたちは……それ以上の存在だ。


タロウ     「そっち方面専門ですか?」


今度は素直に聞いてみる。


ヒデ      「いや……そうでもないよ。」


笑いながら答える。


タロウ     「裁判所にもその格好で?」

ヒデ      「いや……普段はもうちょっと地味なスーツで。」


なるほど。


クマ      「な?……予想外だっただろ?」

タロウ     「ええ……かなり。」


そうクマさんに返事をしながら……頭の中では別の事を考えている。

……そう……弁護士先生ならば、2~3……いやもっともっと、お尋ねしたい事があるのだ。


クマ      「そう言えばこの山田屋さんなんだけど……去年裁判やったんだよな。」


おおっ!!

クマさんナイストスっ!!


ヒデ      「へぇ~~~。どんな?」

タロウ     「損害賠償請求で、うちが訴えられたんですけど……。」

ヒデ      「ふ~~~ん……。」

タロウ     「しかもネコが原因で……。」

ヒデ      「ネコ?……なんでネコ?………おかしな事件だな……こりゃまた。」


既に仕事そっちのけで、クマさんとヒデさんの会話に浸かる。

一緒に来たミキちゃんは、お茶をすすりながら聞き入っている。


横目で母ヨシコに「チェンジ」の合図を送ると「仕方ないな」の表情をしながらユミコに指示。

ユミコは奥へと、半引退生活をしている父ハジメを呼びに行く。


ワタシの調理ポジションにヨシコが入り……洗い場担当だったヨシコのポジションにハジメが滑り込む。

緊急時の「持ち場チェンジ」が完成である。


家族経営だと、こういった融通が利くからありがたい。




カクカクシカジカこういうわけで……裁判のあらましをヒデさんに説明する。




首を捻りながらヒデさん……


ヒデ      「裁判所の人も大変だなぁ……。」


シミジミと呟いた。


タロウ     「こういう裁判、経験した事あります?」


タロウ仕込みヨシコ作のハムカツ定食をカウンター越しに配膳しながら聞いてみる。


ヒデ      「俺はないなぁ……知ってる弁護士が、鳥を原告にして訴えたってのは

         聞いた事があるけど……。」

タロウ     「鳥?」


味噌汁を箸でクルクルかき混ぜながら……


ヒデ      「ああ……なんでも渡り鳥の権利を守るだどうだとかで……。」


ネコ裁判ならぬトリ裁判である。


ヒデ      「まぁ……何にしても当事者と引っ張り出された人は大変だよなぁ……。」


まぁ鳥とネコは、全然気にしてはいないと思うが……


クマ      「山田屋さん……そういえば、この前も裁判の云々でコピーに来てたんだよな?」

タロウ     「え……ええそうです。」


再びナイストスなクマさんである。


タロウ     「実はヒデさん……今も裁判に関わってましてね……。」

ヒデ      「え?……まだ続いてんの?……控訴?」

タロウ     「いえいえいえ……ワタシの件は終わったんですけど……。」




と……カクカクシカジカ細川さんの現状を説明する。




ヒデ      「大変だなぁ……お宅の町内……。」

タロウ     「ええ……まぁ……。」


そしてクマさんに向かって……


タロウ     「またちょっとコピーさせてもらいたいんですけど……いいですか?」


ちょっぴり腰を引き気味に聞いてみる。


クマ      「ああ……いつでもええよ。……ボクはいない時があるかもしれんけど……

         ミキちゃんはほぼ必ずいるから……彼女に言って。」


無条件自由化条約締結。

大好きなハムカツを頬張りながら二つ返事で答える。


クマ      「なっ!ミキちゃんいつもいるだろ。」

ミキ      「ええ。」


口の中のハムカツをゴクリと飲み込むと……


クマ      「今度は何のコピーなのよ?」


と興味津々。


タロウ     「ええ……次回本人尋問・証人尋問がある予定ですので……。」

クマ      「なんならヒデに見てもらえば?」


おぉっ!!

三度も見事なトスっ!!

……ひょっとしてクマさん狙って連れて来たのではないのか?


ヒデ      「えっ?オレ???……いいよ……いいよ見てやるよ……但し……。」


ただし?


ヒデ      「それは『仕事』としてって事かい?」

タロウ     「え?」




以下次号。


※ 今回の「橋本」表記は誤りではなくワザとです。