大盛りバトル---後編--- | 【続】ネコ裁判  「隣のネコも訴えられました。」

大盛りバトル---後編---

---前編はコチラから ---


タロウ     「大盛りだけど……どうしたの?」

ユミコ     「いや……『大盛りか?』って聞かれたから……。」


そう言うと、そのおばちゃんに「大盛りです」と告げに行くユミコ。


10秒後……ユミコが配膳したはずのドンブリを持って帰ってきました。


ユミコ     「『もっと大盛りにして』ってさ……。」

タロウ     「はぁ!?」


帰ってきたドンブリのご飯は、一口食べたらしく……焼きそばのソースがちょっぴりついています。


そのドンブリのご飯の量を再確認してみますが……

どう見ても女性の……しかもおばちゃんには多過ぎるご飯の量です。


でもひょっとしたら……テレビに出てくるような大食いチャンピオンおばちゃんという線も否定できません。


タロウ     「足らなかったら『おかわり』入れますからって言っておいて。」


ユミコは持ってきたままのドンブリを持って、もう一度おばちゃんの席に向かいました。


……………また10秒後……ユミコがドンブリを持ったまま帰ってきました。

ちょっぴり不思議そうな顔をしながら怒っています。


ユミコ     「このドンブリにつけてってさ……。」

タロウ     「へ?」

ユミコ     「『おかわり入れますから』って言ったんだけど……そしたら『全部食べるから

         このドンブリに入れて』って突っ返されちゃった。」

タロウ     「……………。」


え―――――――――。

それは要するに……ワタシに「大盛り挑戦状」を叩き付けたって事でしょうか?


とはいえ、すぐに乗るわけにはいきません。

若い肉体労働系バリバリのお客さんならまだしも……相手は50くらいのおばちゃんですから……。


タロウ     「もう一回確認してみて。」

ユミコ     「え……あ……うん……。」


……………。


ユミコ     「『早くつけろ』ってさ。」


カチーン。


ああそうかいっ!!

ホントにいいんだなっ!!

キッチリ喰うてもらおうかいっ!!


ソースのついたご飯の上に、さらにご飯を盛り付けます。


シャモジに2杯……3杯……4杯……。


ユミコの一週間のお米消費量です。

ええ……おばけのQちゃんも一杯でゲンナリする程の山盛りです。


ユミコ     「タロちゃんそれ以上は……。」


小声でストップがかかります。


そう……一度つけたご飯は二度とお釜に戻せません。
例えそれがノータッチであっても当然戻せません。


もし余って返ってくれば、即ゴミ箱行きです。

ドンブリと同じサイズくらいご飯が山にはみ出した超大盛りを……ユミコがおばちゃんに届けます。


どや?

ええ?

どないなんや?

喰えるんか?

喰えるんなら喰うてみいやっ!!


心の中で大声で叫びます。

届けたユミコが一言二言やりとりをした後……首を傾げながら帰ってきました。

ユミコ     「タロちゃん……。」

タロウ     「なに?」

ユミコ     「『眠いからワタシ30分寝ますから。ご飯はその後食べますから。』って言って……
         寝ちゃってるわよ……。」

タロウ     「はぁ??????」


そりゃいったいなんてルール?

そりゃいったいなんてプレイ?


10分……15分……20分経った頃……。

ムクリと起きて焼きそばと味噌汁を完食。


そして又寝てしまった模様。


更に10分ほど経った頃……


ユミコ     「もう下げたら?」


とユミコが提案。


タロウ     「いやいい。」


即返答。


ユミコ     「でももうご飯カピカピだよ。」

タロウ     「でもいい。」


見るとドンブリのご飯は更に一口二口食べた様子はあるものの……未だに超巨盛りになってます。

結局今のところ……茶碗一杯すら食べていません。


ユミコ     「でも箸だって袋に収まってるわよ。御馳走様の意思表示でしょ?」

タロウ     「まぁ普通はそうだが……帰るまで置いといて。」


そう……もし黙って下げたら……「今から食べるつもりだった」なんて言われかねません。


「おかわり入れます」って言ってるにも関わらず、超巨盛りを要求し……

定食屋で、当たり前のように居眠りできる感覚が普通じゃありません。


何を言い出すかわからない相手は、最後の最後まで放置です。


更に20分経過……。

おばちゃんムクリと起きると帰り支度を始めました。


そして……


おばちゃん  「お勘定。」


と実にサラリと言いやがりました。




え?ご飯ですか?

カピカピになって山のまま鎮座してますよ。



かなりカチンときてます。

かなりムカーっときてます。


そりゃうちは通常……「大盛り・おかわりご自由に」としてますよ。


経営的にはビックリするような大食漢が、たまに襲撃したりしますよ。

でもね……残さず食べて……満腹になって「御馳走様」って帰ってくれりゃあ嬉しいもんですよ。


「大盛り・おかわり自由」にしてて良かったなとさえ思いますよ。





その真逆をこのおばちゃんは、やりやがりました。






昔々、ハナばあちゃんが……「ご飯粒残すと目が潰れるよ」なんて言ってましたが……

このおばちゃん……七生潰れてもおかしくないくらいに、ご飯を残しやがりました。

「幾千粒のお米たちよ……お前たちの仇は必ず取ってやる。」


そう心に誓い……


タロウ     「合計で1080円になります。」


とサラリと言ってやりました。


その瞬間……おばちゃんの顔はムイッとなって……


おばちゃん  「そんなに高かったですか?」


と喰い付いてきます。


タロウ     「ええ……焼きそば定食が780円と……ご飯の追加が300円です。」


千円札一枚で足りると思っていたのでしょう。

右手にお札が一枚、握られています。


おばちゃん  「でも、ご飯の大盛りとおかわりは自由なんですよね?」

タロウ     「ええ……その通りですけど。」

おばちゃん  「だったら『ご飯の追加300円』っておかしくないですか?」


常識外れな挙動を散々しておきながら……自分の権利は要求しまくりです。

こんな人は、てっきり「あの人」だけかと思ってましたが……こんな年代の人にもいらっしゃったご様子です。


タロウ     「ええ……確かに『大盛り』と『おかわり』は自由ですけど……

         アナタは大盛りでもおかわりでもなく『超巨盛り』をご注文されてますので……。」

おばちゃん  「え?」

タロウ     「メニューには無い……いわゆる『裏メニュー』ってヤツですかね……。

         なので値段も何も書いてありませんが……………何か?」

おばちゃん  「……………。」


当然そんなメニューはありません。

今作りました。


だいたいどんな大食漢でも「おかわり入れますから」と言えば受け入れるもんです。

そりゃ温かいご飯のほうが旨いですし……要は一緒なんですから。


タロウ     「いやぁ……完食されてたら、大盛りおかわり扱いにも出来るんですけど…………ねぇ?」


付加疑問文でプレッシャーをかけます。


おばちゃん  「……………。」


しばらくブーッとした顔で考えた後……千円札と80円のチャリ銭をカウンターに叩きつけるように払いました。


タロウ     「ありがとうございました~。」


お米と経費の仇はとりましたが……なんとも気分の悪い大盛りバトルでした。





皆さんもお店に入った時は、お店の立場も考えて行動する事をお勧めします。


「お客さんだから」と偉そうにする客。

「お金払うから」とわがまま放題の客。


確かに「お客様は神様です」なんて考え方もありますが……一方で需要と供給の五分五分でもあるのです。


早く馴染みになりたいなー。

早く顔を覚えてもらいたいなー。


なんて思うのならば……「お店に好かれるお客さん」になる事が、一番の近道だったりします。






11月20日追記


なんだかご飯の量で、随分意見が分かれていらっしゃるようなので……

山田屋のご飯の量一覧をアップしますね。


ちなみに今回は「焼きそば定食」でしたが……

通常、下記のご飯の横にメインディッシュ・味噌汁・漬物・一品(付いたり付かなかったり)があります。



女性が「~~~定食」を頼んだ際の通常サイズのご飯がコチラ……

手前の元禄箸と比較して頂ければ……「ごく普通の茶碗に一杯」ってのがお分かりになるでしょう。


ちなみに焼きそば・焼きうどん等の「炭水化物系定食」では、女性に「定食」はお勧めしていません。

単品でも充分だからです。


それでも「定食」をご注文された場合は、この茶碗でお出しします。




続いて……通常男性が「~~~定食」を頼んだ際のご飯がコチラ……

普通のドンブリより一回り大きいサイズです。

定食系(生姜焼き・トンカツ等)の場合は、なんとかなりますが……

「炭水化物系定食」では、男性でも残す人がいます。


今回のおばちゃんは、スタート時に「大盛り」と注文されましたから……

「女性の大盛りサイズ=男性の通常サイズ」と判断して、最初にこの量をお出ししました。



この時点でご飯の量を比較しますと……

こんな感じになります。


うちの通常盛りはぶっちゃけ……事務仕事の男の人にはちょっとしんどい量です。




で……最後に肉体労働系や大食漢が「大盛り」と言って注文するご飯がコチラ……

通称「Qちゃん盛り」と呼ばれているシロモノです。

男性用通常盛りの約2倍(当社比)の量が入っております。

ちなみにこの量でも「おかわり」と言う大食漢が、月に2~3度は襲来し……山田屋の米びつを脅かします。


今回このおばちゃんが無謀にも挑んだサイズです。




ご参考までに。




明日は本編……「第二段階」