UMA駐車場にて---その1--- | 【続】ネコ裁判  「隣のネコも訴えられました。」

UMA駐車場にて---その1---

2006-03-26 14:41:48


駐車場内には


・当駐車場内での盗難・事故につきましては一切責任を負いません

・騒音等、近隣の方への迷惑となる行為はおやめ下さい

・当行ご利用の方以外の駐車は固くお断りします

・営業時間(平日AM9:00~PM3:00)外は閉鎖いたします


                                 ミミズクトントンUMA銀行


と書いた看板がデカデカと設置してある。


入り口には発券機と開閉式のバーが設置してあるが、実はここ一年ほど使われていない。

それもそのはず……開閉機があってもバーが付いていないのだ。


随分前に店に来るUMAの行員さんに話を聞いた事がある。




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行員さん   「半年で3本もバー折られちゃってさぁ……。」

タロウ     「えっ……!!そんなにも!?」

行員さん   「そうなんだよ……とてもじゃないけど『上』に

         新しいの設置してくださいって言えないんだよね……。」


一体バーがいくらするのかはしらないが……

あんなものは普通に使っていれば何年だって保つ物だろう……。

それが半年で3本……。


ワタシだって半年で「包丁3本買ってくれ」とは言い難い。


タロウ     「でも……なんで折られるのよ?」

行員さん   「まぁ……断定は出来ないんだけどね……。」


と前置きした上で……


行員さん   「営業中に停めた客が、車をそのままにしていってさ……

         閉店すると機械の電源落としちゃうだろ。」

タロウ     「うんうん。」

行員さん   「そうしたら出れなくなっちゃうじゃん。」

タロウ     「そりゃそうでしょ。」

行員さん   「それで折って出て行っちゃうんだよ……。」


あらま……。

そんな単純な……。


タロウ     「そんな簡単に折れるものなの?」

行員さん   「それがさぁ……安全面の配慮から……結構弱いんだよね……。」

タロウ     「そうなの?」

行員さん   「テコの要領で『ポッキン』だよ。」


ご愁傷様である。


行員さん   「まぁこれも断定は出来ないんだけど……。」

タロウ     「ふむ……。」

行員さん   「金曜の夜あたりに飲み屋に行く客じゃないのかな……。」


確かに……。

駅前なので飲み屋・飯屋は山のようにある。


有料駐車場もコインパーキングもあるが、そんな小銭をケチる奴がいるものだから

こんな被害を生む原因ともなっている。


いや……そもそも飲み屋に来るのに車ってのはどういう了見だろう。


タロウ     「じゃあさ……鎖か何かで封鎖したら?」

行員さん   「そうなんだけどさ……そんな事して門柱までぶっ壊されたら、

         それこそ『上』になんて言うのよ。」


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そんな話を思い出しながら、駐車場の入り口をチェックしてみると……

門柱と門柱の間に鎖は張ってあるのだが……


真ん中部分の3mほどが地面にダラリと着いてしまっていて、全くその役割を果たしていない……。

車通り放題なのだ。


「一応閉鎖してますよ」のポーズなのだろう。

閉鎖しないわけにもいかないが……門柱を壊されても困る……。


そんな微妙な状態なので、こうする事にしたのだろう。

苦肉の策・大人の方便ってやつだ。




で……問題は「どうして川畑の車がUMAの駐車場に停まっているか?」という事だ。


良い風に考えて……「銀行で用事中」。


ちょっと待て。

今日は日曜だぞ。


良い風に考えて……「キャッシュコーナーで用事中」。


ちょっと待て。

それなら別にUMAの駐車場に車を入れる必要も無いではないか。


川畑の駐車場はココから西へ歩いて1~2分。

川畑の住んでるモロコアパートだって東へ1~2分。


普通なら自分の駐車場に車を入れて行くだろう。

どうにも腑に落ちない。


そんな事を独り考えていると……。


ユミコ     「あっ!!タロちゃん。早かったね。」


とユミコがやって来た。


川畑の車を見るなり……


ユミコ     「やっぱりまだ停まってるじゃん。」


と一言。


タロウ     「えっ!?……って事は……さっき言った『すごい発見』って?」

ユミコ     「まぁまぁ……。」


と車に近づくユミコ。


ユミコ     「やっぱりずーっと停まってるわ。」


と助手席側のタイヤの上を指差す。


ユミコ     「ほら。ここに石が乗ってるでしょ……二つ。」


見るとアスファルトから剥がれたであろう小指の爪の半分ほどの小石が二つ。


ユミコ     「さっき見つけた時に置いておいたのよ。」


と得意気に解説する。


タロウ     「さっきって?」

ユミコ     「うん。一回目に細川さん家から散歩に出た時よ。」

タロウ     「って……事は一時間くらい前か?」


ユミコはケータイを取り出して時間を確認すると……


ユミコ     「それくらいかな。」


……と。


ユミコ     「ひょっとしたらキャッシュコーナーでも行ってんじゃないのかなって思ってさ。」


考える事は同じようだ。


ユミコ     「でも一時間もキャッシュコーナーって……。」

タロウ     「ありえんでしょ。」

ユミコ     「でしょ。」


ケータイをいじりながら……


ユミコ     「って事は……。」

タロウ     「って事は?」

ユミコ     「ココのほうがアパートから近いから停めてるって読むのが普通でしょ。」


確かに。

川畑宅から駐車場までは3分ほどかかる。


ちょうどその中間地点に位置するUMA銀行の駐車場。

確かに川畑宅からは数分ではあるが近くなるだろう。


だがそんな理由だけで、他所様の駐車場を無断で使ってよいものだろうか……。


ユミコ     「タロちゃん今日……川畑の駐車場ってチェックした?」

タロウ     「いや。」


と即答すると……


ユミコ     「ダメダメねぇ……。」


とバッサリ。


ユミコ     「ちょっとコレ見てみ。」


と差し出すケータイの画面。


ユミコ     「ほら……コレ。」


見るとUMA銀行に停まっている川畑のBMW。

御丁寧に車全体が写っている物とタイヤの上に石が乗っている物の2枚。

撮影時刻は13:42となっている。


ユミコ     「で……コレがその直後の川畑の駐車場。」


車の停まっていない川畑の駐車場。

撮影時間は13:44。

これも御丁寧に別方向から2枚。


ユミコ     「いやね……別の車が停まってるのかな……と思ってさ。」

タロウ     「別の車って?」

ユミコ     「ほら……友達が来てるとか……。」

タロウ     「それならそれで有料に停めさせればいいだろう。」

ユミコ     「それかほら……川畑ちゃんが無断駐車されちゃってるとか……。」

タロウ     「いや……それでも……。」


例え川畑が無断駐車されちゃってるとしても……

それが即ちUMAの駐車場に無断で停めても良いとはならないのだが……。


それなら少しは気持ちも分かる。


ユミコ     「いやぁ……そういう可能性もあるかと思って、行ってみたんだけどね。」

タロウ     「なるほど。」


まぁ川畑がUMAの駐車場に「少なくとも1時間は無断駐車してる」事は証明されたわけだ。


ユミコ     「写真撮っとこ。」


同じように全体とタイヤの写真を撮るユミコ。


ユミコ     「で……タロちゃん。」

タロウ     「はい?」

ユミコ     「今、川畑の車、チェックした?」


いやまだだ。

でも「まだ」なんて言うとまた「ダメダメ」だとか「トロい」と言われそうなので……


タロウ     「俺も今来たところだからさ。」


と濁す。


ユミコ     「ふ~ん……じゃあ……ココ見てみ。スッゲービックリするからっ!!」


と車の屋根を指差す。


タロウ     「っっっっっ!!!!!!!!!!!!!!!!!!」




以下次号……「UMA駐車場にて---その2---」