薄曇りの雲の隙間から僅かに差し込む登り始めたばかりの月の光とヘッドライトが、暗く乾いた灰色に沈むアスファルトを照らしている。
空港から首都中枢部へと繋がるハイウェイを走るその車内の空気をはっきりと形容する事を許されるなら、恐らくただ一言『重っ苦しい』となるのだろう。




「……れんくん?」
ハンドルを握る男が私語厳禁な雰囲気の中、重たそうな口を開き後部座席で窓の外を眺めている男へと呼びかける。
「……………………なんですか?」
呼びかけられた男は、実にこの男らしくなくサングラスを掛けた視線を窓の外を眺めたままで低く投げ遣りに吐き出すように答えた。後部座席の隅っこで、珍しくその体躯を丸めるみたいにいじけさせて不貞腐れたようにして。
世に春の陽射しのようだなどと謳われてるとは思えぬ程に、愛想も笑顔のひとつもなく。
「あぁ〜、その…………えと、まぁ……お前が凹むのも分かるから、此処では存分にヤサグレててくれてもいいんだけど…………キョーコちゃんには当たるなよ?」
本来なら、買ったばかりのピカピカの新車のシートにカビとかキノコとかにょきにょきと繁りそうなどんよりジメジメ空気を発生させる大男など歓迎出来ようもないが……そこはまぁ、異色なる芸能界で更に取り分けて、トップたる代表取締役を筆頭に何かとキャラの濃ゆいのが集まったLMEなんて事務所に所属し、且つとある少女に関する事にだけはキュラキュラフラッシュスマイルから闇の国のお方までの意外過ぎた振り幅を持つ俳優のマネージャーをこなし取り扱い危険物の扱いに長けて慣れた感のさえある社は、薄いビニールの手袋に包まれた手でハンドルを握ったままで言う。
待っててくれてるんだろ?それまでにちゃんと機嫌治せよと、今この車が向かっている先である目的地のあの高級マンション最上階ワンフロアな部屋で蓮の帰りを待っていてくれているこの手の掛かる担当俳優の不の感情には特に敏感な彼女を思いやって、蓮のガス抜きをはかる。
「わかってます。」
と、そうはっきりと口にしたのだけれど……
社がチラッと見やったルームミラーの中では、寸分変わらずにぐたっと窓の外を眺めるそんな姿さえやたらと絵になる男が、はぁぁぁぁぁぁぁ……と深い深ぁいため息を吐き出すのだった。






パリからの半日に近いフライトの前に、キョーコから届いたキラキラデコメで飾られたメール。
後部座席に座る蓮の横には、欲求と財布の許すままにあれもこれもと購入してしまうとふるふると恐縮されて受け取りを拒否された上にぶつくさとお小言を降らされたりなどされてしまうからと、数は少ないけれどキョーコの趣味どストライクだろう物をと厳選されたお土産の入った数点のショップバック。
きっと笑顔で出迎えてくれるだろう彼女。





そんなキョーコとの久方ぶりの逢瀬。
逸る気持ちもある。なんと言われようとも、一目なりともキョーコに逢いたい。
彼女の笑顔を見て、話をして、触れて、そんな時間をどれほど蓮が待ちわび望んで来た事か。
なのだけれど…………
神に逆らうだなんて事を過去に胸に秘めた罰だろうか?なんたって今こんな時に……




あぁ、もう本当になんの拷問だろうか……
勘弁してくれ。





遅めな時間帯もあり、すいすいと流れる車の波に乗ってスムーズに煌々と光る夜景に煌めく都内某所な蓮の自宅へと向かい、悩める男を乗せた車は走るのだった。




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ふてくさ蓮くんをキョコさんの所へと運搬中なやっしー。
40巻のドライバーやっしー、かっこよい❤︎ですなぁ。
旦那さんが家にいやがるから、まだCDは聞けないままな猫木にございます。
_(:3 」∠)_


だらだらと好き勝手に捻じ曲げながら続けておりました、辺境の地な我が家の2周年記念企画的な何かの「な2がなんでも!?」でのリクエストものですが……
たくさん頂いたリクエスト、全てにお応えは出来てはおりませんが
一応、今回のこのお話でラストとさせていただくつもりな予定となっております。





| 壁 |д・)
さて、たぶんこれまで以上に捻じ曲げこじ付け好き勝手やりたい放題するよー!!←ちょっと待て



↓拍手のキリ番っぽいのを叩いちゃった方は、なにやらリクエストしていただくと猫木が大喜利的にぽちぽちと何か書くやもしれませぬ。


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