ひぃぃぃ!?わわわ、私、こんな事態を望んだ訳ではございませんーーー!?



後ずさろうとする私の肩を抱く腕が逃げ道を塞いで、顎を捕らえた大きな手のせいで顔を背ける事さえ出来ないでいる。
そんな私の鼻先5センチメートルな至近距離に突き付けられた神の寵児たるお方の整った美貌。
いつものやわらかな笑みのカケラもなく……恐ろしいほどに真剣な色をした黒の含有率の高い瞳が視線を逸らすのさえ許さないと、まっすぐに私を見る。
どうして!?
そりゃ、確かに……確かに、私……いいなぁ〜なんて言っちゃったけど!?
ちょっ?……ちょっと!?どこ行くの!?お、置いて行かないでよぅぅぅ!!






「君ね……芸能人で、何より女の子なんだから……そんな顔しないの。」
あぁ!もうっ!!思い返すも腹立たしい!あの関西訛りの妖精もどき!人がせっかく親切心で助けてあげたってのにぃぃぃ!!なんて、事務所のフロアーを踏み鳴らしていた私を窘めた低い声。
いくら妖精のコーンの話を聞いてくださってる敦賀さんにとはいえ……
実は、先ほど光る蝶々のような関西弁をあやつる妖精もどきを救助致しまして。その奇妙生物がお礼に願い事をひとつ叶えてくれるだなんて言うものだから、つい……妖精さんの姿が見えるようになりたいとか魔法が使えるようになりたいなんて零せば『あかん!本気の目や、本気で妖精とか魔法なんか信じとるでこの子!嬢ちゃん、あんたほんまおもろいな!!』なんてひーって苦し気なくらいに大笑いされちゃって。
じゃぁ、その、出来ればもう少ぉぉぉーしくらい色気が欲しいかな?って願えば『んーーー?嬢ちゃん、ペチャパイやもんなぁ〜。でも、ええか?嬢ちゃん。大事なんは、おっぱいの大きなやないで!?大きさよりも、形と感度やろ!?やたらサイズだけにこだわるよーな男は大概が甘えたダメ男かマザコンや!騙されたあかんで?』なんて、微妙に過去の古傷を掠めた妖精もどきは……よりにもよって!
ふわふわひらひらとキラキラに光る羽根で飛びながら『そやなぁ……大きくしたってもいいけど、そないな初モノ開発の楽しみを嬢ちゃんの彼氏から奪ったらあかんやろ?』だなんて破廉恥な事をまるで親父みたいな嫌らしいニヤニヤ笑いの気配で、あからさまにボリュームに乏しい胸もとをっ!!
思わず、怨キョたちの総攻撃で蹴散らしてしまってもしょうがないじゃないですか!?
……なんて洗いざらいに話をする訳にもいかずに
「おはようございます!珍しいですね、こんな時間に敦賀さんと社さんが事務所にいるなんて……」
と、そう挨拶の重要性を叩き込まれた先輩へと、誤魔化すみたいに勢い良く頭を下げた。
共演者のトラブルでスケジュールの変更が出てね、とにこやかにそう教えてくれた敦賀さん。
「俳優部に顔を出したら、ちょっとこいつを休憩させてやれる時間が出来そうなんだけど、後でラブミー部に寄らせてもらってもいいかな?」
社さんがそう言ってくださってたから、この前少しだけ奮発して購入したコーヒー豆をおろそうかな?なんてウキウキでラブミー部の部室へと向かっていた、その時……
背後からはしゃいだ高い女の子の声が聞こえたの。
振り返った私が見たのは……
嬉しそうに敦賀さんの胸におでこを擦り付けて、ぎゅぅって腕の中におさまっている。
私に背中を向けたまま、遠ざかって行く敦賀さんたちの御姿を、そのままぼんやりと見送って




敦賀さんの、その腕の中がどれだけいい匂いがしてあったかくてドキドキするけど安心してしまえる場所か……知ってしまっていた私の口から思わずに溢れた羨望のその小さなつぶやき。





足取り重く辿り着いたラブミー部の部屋のパイプテーブルの上に、どさっと肩から通学用のカバンを置いた。
その中から、ふわんっと……
怨キョたちが追い払った筈の、あの光る妖精もどきな彼がゆっくりと飛び出て来て言ったのだ。
『嬢ちゃんの願い……叶えたるで』
メルヘンな見た目を裏切る関西言葉で、確かにそう。
その次の瞬間には、眩しい光に瞼を開けていられなくなってしまっていたの。
瞼の裏に浸透する光の洪水が収まった気配に、恐る恐るに目を開いた私が見たのは……
さっきまで見下ろしていた筈のパイプテーブルの天板の裏っかわ。
見上げる形へと変わってしまった目の前の光景に首を傾げれば、その拍子にさらりと視界に掛かった私のものな筈の前髪の色は、見慣れた明るい茶色ではなく真っ黒な黒髪だった。
え?と戸惑って手を上げれば……指の短い小さな幼い手のひら。




訳もわからずに混乱する私の耳に、部室のドアをノックする音が聞こえていた。




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妖精もどきの中身、ぇろ親父疑惑☆




| 壁 |д・)…………たぶんまだ、リクエストくれた方も自分のリクエストからの話だとバレてないと思われる改変っぷり。笑
もしかすると、この話終わらせてから最後にリクエスト内容とこじ付け方を書くまでバレずにいれるんじゃないかしらー?
付け加えるならば、満足して頂けるものになる気配が微塵もないよぅ。
( ´艸`)←笑いごとじゃない



↓拍手のキリ番っぽいのを叩いちゃった方は、なにやらリクエストしていただくと猫木が大喜利的にぽちぽちと何か書くやもしれませぬ。


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