例えるならば……うん。情けないかもしれないけど、美味しそうでうさぎちゃんな獲物を狩る気満々で襲いかかった狼の鼻っ面に、うさぎからスパーン!と清々しいほど綺麗に強烈で重い予期せぬ反撃のキックをくらったみたいな感じ?




「あー!もう、なんですか、お酒くらい!?日本国憲法でもこっちでも州法でも飲酒は合法ですがっ!?」
本気でビビられる……少なくとも、顔色をかえて竦む、そんな蓮の予想をあっさりと裏切ったキョーコは堂々とそう言い切ってみせた。
大体、ちょっと放っておいたら何にも食べずにがばかばお酒だけ飲んじゃう久遠に言われたくないです、なんてブツブツとさも不満気にこぼし続ける。演技の上でなければ顔にわかりやすく出る嘘をつけないキョーコが。
「は?……なにを言っ」
思いがけないキョーコからの強い反論に、キョーコをソファーへと押し倒そうと伸びていた蓮の手は止まり、混乱のままに漏れた蓮の疑問の言葉さえバッサリと断ち切って
「いくら先生が尊敬に値するゴットファーザーっぷりであっても!!なにも其処まで先生を越えようと目指さなくてもいいでしょうが!何ですか!!お仕事でラブシーンがあったら不貞腐れるし、ちょっとショーちゃんから電話があったくらいでも不機嫌、この前なんて少し帰宅の予定時間から遅れただけで誘拐されたかもしれないなんて大騒ぎして!!」
私はご立腹です!とありありと顔に出して、ジトリと蓮を睨んで続ける。
キョーコの口からポンポンと立て続けに溢れるあり得ない言葉に混乱の坩堝に落ちかけている蓮を置き去りに。
「それにっ!!誰かれ構わずにその色気でタラし込んで来ちゃうのは、久遠の方でしょうが!!」
この隠れ遊び人!!と、ずびしっと蓮の鼻先に人差し指を突き立ててさえみせる。
そうして、蓮の心臓を貫く衝撃のあの言葉を口にしたのだった。



重過ぎると……ウザいとさえ、蓮へとはっきりと言い切ったキョーコ。
それはつい先ほどまで蓮の中で渦巻いていた怒りの炎などやすやすと余裕で消し飛ばす、痛恨の衝撃。
「なんなら、こんなのが貴方のパートナーなの?とか、あの頃はお互い幼くてすれ違ってしまったけど今なら大丈夫。私たちやりなおせるわ?なんて言って来た貴方の元彼女さんたち、アルファベット順に上げて行きましょうか?」
すぐに胸の大っきなナイスバディさん方に囲まれて腕に絡みつかれてる癖に……なんて言いながら心当たりのあるような名前を数えて片手の指を折っていこうとするキョーコ。
「…………なのに、すぐに大魔王になるし!本当に!ほんっとぉ〜に、恐いんですからっ!!」
事務所の社長曰く薄っぺらい過去の彼女たちとの付き合いと、身勝手な独占欲で可哀想なくらいにビビらせまくった記憶が蓮を苛む。
わたわたと大人紳士で完璧たる敦賀蓮にあり得ぬ程に取り乱しはじめる蓮。
それはそうであろう。何がなんだかさっぱりと不明で摩訶不思議ではあるが、彼女が最上キョーコである限り……唯一無二の愛しいキョーコに厭われる訳にはいかないのだ。
更には、今のキョーコの状況がこの前に蓮が出演したドラマの1シーンと被って思えるのだ。なんとも恐ろしい事に「実家に帰らせていただきます!」なんて台詞へと続くそのシーンに。
もちろん、蓮はキョーコにそんな事を言われたくなど微塵もない。
だから、蓮はソファーに座るキョーコを宥めるように恐る恐るに告げた。
「えと、あの、嫉妬しないようにするから……」
キョーコがグアムでアサシンと呼んだあの上目遣いのキュン殺な顔で。
だから嫌いにならないでくれと、そう縋ろうとした蓮から目を逸らすようにキョーコが顔を伏せる。
「嫉妬しないなんて……なんで!?」
深く俯いた黒い髪がふるふると震えていることに驚いた蓮の手がキョーコの肩へと彷徨う。
そんな蓮の当惑よそに、キッと強く蓮を咎めるみたいな眼差しを投げて、キョーコは言う。
「私だけって、キョーコにだけって言ってたのに……」
行き場のなく彷徨わせた手もそのままでいる蓮へと
「久遠は…………私だけに嫉妬してないとダメなの!!」
あの、蓮の心臓を貫く涙目の琥珀色の瞳で。
自分にだけ執着していろと……言い換えるならば、蓮へとキョーコからの独占欲を示すみたいな事を。





その衝撃たるや、まるで心臓へとまっすぐに直撃する雷のようだ。





もう本当にこの娘は、どうしてくれよう?と赤く染まっているだろう顔を片手で伏せて隠すようにラグへと視線を落とす。
その時、パチパチと目の前に放電がチラつくような感覚が蓮を包む。
「いやぁぁ!!妖精のチョイ悪帝王化、反対っ!!」
くらりと眩暈のするような不思議な感覚の一瞬の後、響いたキョーコの悲鳴。
蓮が顔を上げれば、ソファーの上、先ほどまでドレス姿のキョーコがいたそこにいたのはきょときょとと周りを見渡し、へ?ぇ?あれ??と、困惑した様子の栗色の髪のキョーコで。
着ている白いワンピースはこの前蓮がよく似合うと褒めたもので、栗色の髪は1週間前に見た時と同じ肩の上で左右に揺れている。化粧気の薄い大きな瞳がソファーの前に膝をついている蓮を映す。
あぁ、最上さんだ。と、無性に安心したような気持ちが蓮の胸を満たす。
なにがどうなっていたのか、さっきまでの大人びたキョーコはなんだったのか、蓮には全然なんにもわからないままではあるのだけど……
とりあえず
「うん、最上さん。ただいま」
今ここに確かにキョーコがいると確かめるように腕に抱き寄せたぬくもり。
唐突な蓮からの抱擁に少し驚いて身を硬くしていたキョーコだったが、やがてもぞもぞと少し恥ずかしげに蓮の腕の中から蓮へと告げた。
「……おかえりなさい、敦賀さん」
と、蓮が誕生日にとキョーコに強請った願いを叶える言葉を。







冷蔵庫の中にひんやりと冷やされているキョーコのハイクオリティな手作りで、つやつやピカピカでビターな遅れてきたバレンタインのハート型のチョコレートが
衝撃となって蓮の心臓をがっちりぎゅっと貫いてみせるのは、このしばし後の話。





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2周年の記念的なの「な2がなんでも!?」にていただいていたリクエスト。


たまこ様より
「両思い蓮キョで久遠クン(ここ重要(笑))の独占欲が強すぎて重すぎ、ウザいと愚痴るキョコちゃん」


で、ここ重要!な筈の久遠くんとキョコさん部分を2分の1な半分に……
ふたりの内なひとりの久遠くんがいなくて、成立後なキョコさんおひとりにしちゃった感じなものとなっておりやす。
(((( ;°Д°))))
思いっきりリクエスト改悪だーね!
たまこたん、ごめんなさーい!!許して?ダメ?
ペコm(_ _;m)三(m;_ _)mペコ



んで、この前のキョコ誕と言い、都合良くタイムトラベルさせ放題してますのも……強引こじつけでありまする。同じよーなネタを繰り返すがっかり残念脳にすいませぬ。


この蓮くんは暫くは理不尽な嫉妬で怯えさせたりしないように、でも不安に思われたりしないようにって大事に慎重にヤキモチ焼こうと無駄な努力するかと思われます。笑
( ´艸`)



↓拍手のキリ番っぽいのを叩いちゃった方は、なにやらリクエストしていただくと猫木が大喜利的にぽちぽちと何か書くやもしれませぬ。


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