ざわざわと騒めく声を聞きながら階段を下る。
是非にと答辞を頼まれてしまった式典のピンと引きしまった空気からは一変した、元々からあまり揃う事も少ないクラスメイト。別れを惜しむよりも、既に仕事としての活動があったせいか学生という肩書きからのあっけらかんとした開放感の方が強く感じられる。
校舎を出ると、少しだけ肌にまだ冷たい空気とやわらかな春の陽射し。小さなグラウンドの横には校門まで続く桜の小道。
『芸能クラス』なんて特殊なクラスを内包した高校故に、校舎の外にには見送りの在校生や来賓の父兄に混じったマスコミの姿。
グラビアアイドルや歌手、最近話題のCMに出演したタレントなど知名度の高い子を見つけては囲んで捕まえている。
そんな光景を横目に、通り抜けようとしていたそんな時に……




薄紅色の花、ひらりひらりと風に遊ぶ。
そんな夢見草の淡い景色の先
『卒業式』とレタリングされた看板の立つ校門に滑るように止まった車。
焦ったようにドアを開けて……姿を見せた男。




驚きのざわめきに黄色い悲鳴と瞬くフラッシュ。
彼が……いつもの『敦賀蓮』の、あの温和でやわらかな春の陽射しみたいな笑顔を浮かべていたのなら、きっとあっと言う間に群がる群衆でもみくちゃに囲まれてしまっていただろう。
だけど……唇に笑みもなく、思い詰めたような真剣な瞳が近寄りがたい張り詰めた空気を漂わせていた。
誰かを探すように走った視線が
黒い瞳が、まっすぐに私を映す。
『最上さん』と、彼の唇がそう動いた。
人の合間を縫うように、歩いて来る。




「…………ど、うして?」




震えた声が、茫然と立ち尽くす私の喉からこぼれ落ちる。
だって……
だって…………何も言わなくても
まるで、示し合わせたみたいに
同じ事務所のただの、『先輩』と『後輩』。
その枠から出ないように
はっきりと、その一線を。
そして、傍目にはわからないくらいに
さり気なく、互いを避けて……
この半年を、別れた筈なのに
どうして……今……





「君をさらいに…………なんて言えたら、かっこつけれたのかもしれないけど、情けない事に卒業のお祝いも花さえ用意出来てない。」




らしくなく強張ったような、低い声。
数歩ほどの距離に立ち止まった敦賀さん。






「まだ……君の『答え』は、『破滅と絶望の序曲』のまま?」







 ஐ〰ฺ・:*:・✿ฺ ஐ〰・:*:・・:*:・✿ฺ ஐ〰
 
 


| 壁 |д・)…………後編でまとまんのかなぁ、これ?
 



↓拍手のキリ番っぽいのを叩いちゃった方は、なにやらリクエストしていただくと猫木が大喜利的にぽちぽちと何か書くやもしれませぬ。


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