猫木の変な挑戦『いろんな敦賀さんを書いてみよう。』
困惑混沌の朝。から派生する続きのひとつとなっております。
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モノラルでなくステレオで、私を呼ぶ麗しのボイス。
いつもなら、その喜びに狂喜乱舞だったり、真っ赤になって表情筋が崩壊な間抜けヅラを晒す自信があるのに………
なのに…………
あぅぅぅぅぅーーーー。
だらだらと額に嫌な汗を感じています。
遡るは今朝の困惑と混沌渦巻く目覚めの時のこと。
私の寝室そのベッドの上、私の背後で未だ眠っている敦賀さん……
どうしたらいいの?なんて、思い悩んでいたその時、耳に入って来たのは
『♩ ♪ ♫ ♬ ♩ ♪ ♫ ♬ ♩ ♪ ♫ ♬ 』
遠くから響く……あれはっ!!
がばりと跳ね起きてギシギシと違和感を訴える身体にシーツをくるくると巻き付けると、音のするリビングへと急いで移動する。
だって、響くあの着信音は!あれは、滅多に電話なんてしてくれない麗しの私のっ!私の、愛しい大親友♡のモー子さん専用着信音なんだもの!!
ソファーの前のローテーブルの上に置きっぱなしだった携帯電話を手に取り、着信ボタンを押して耳に当てる。
「モー子さぁん♡おは…」
『もーーー!気の抜けた声で挨拶してる場合じゃないわよっ!!あんた、敦賀さんと一体どうなってるのよ!?』
実力派女優の素晴らしい肺活量から繰り出される声量が電波を通じて耳に突き刺さる。
「っつ!?なっんで、敦賀ひゃん!?」
いきなり飛び出して来た先ほどまで頭を悩ましていたお方の名前に驚く私に、モー子さんは言ったの。衝撃の言葉を……
『あんた、TV見てないの?あんたが敦賀さんをお持ち帰りしたって……今、すごい騒ぎなのよ?』
「え…………」
さぁっと頭から血の気が引くのが解った。ぶるぶると震える手でリモコンを押す。
液晶テレビに映し出されていたのは………昨日の夜、酔っ払いになった敦賀さんを支えてマンションへと入る私。
「ぃや……そんな……私とスキャンダルだなんて……敦賀さんの名前に傷を…」
どうしよう……どう償えば………
目の前が暗くなるみたいな気がする。
『ちょっと!聞いてるの?キョーコ!?…………キョーコ!!オスワリッ!!』
耳に飛び込むコマンドに、ビクッ!スチャッ!!っと条件反射のように頭が考える前に身体が正座をして、目の前のローテーブルの上にスピーカーホンにした携帯を置く。
『落ち着きなさいっ!!あんた、毎年毎年あんなべったり誕生日前から張り付かれて日付けが変わると同時な一番乗りで薔薇の花なんて気障なもん渡されながら祝われて、更にはどう見ても高そうな宝石なんてど本命なバクダン贈られ続けといて……まだ、敦賀さんの名前がどうとか言ってんの!?まさか……無理矢理に既成事実作られたりなんて…』
モー子さんがブレスも抑揚も完璧な立て板に水な勢いで言い立てるその内容に、目が白黒しそうになりながらも…はっ!破廉恥!!と、わたわたとひとり慌てていると……
「無理矢理だなんて、ひと聞きが悪いな……」
耳もと、その吐息さえ感じれそうな極至近距離で、魅惑の低音なお声が……
するっと剥き出しな私の肩に綺麗に筋肉の乗った腕が後ろから絡んだと思うと、トンっと背中が暖かなものに包まれる。
『………無理矢理ではなかったと?その割にはその子、まだ解ってないようですけど?』
携帯からひんやりと硬く冷たい声がする。
「少し強引ではあったかもしれないけど、手荒な事はしてないよ。……昨日一晩中、あんなに伝えたのに……まだ、足りなかったかな?」
携帯に向かってそう平然と言っている敦賀さん。
なんででしょう?ビリビリと張り詰めた空気がしています……
って!敦賀さんの指が……妖しく私の唇やら耳たぶなんかをなぞる。ぞわぞわする。
足りなかった?なんて聞いて来る、何故かなんだか、やらしいような如何わしいような……破廉恥なその声。
思わせぶりに這う指が私の鎖骨を滑る……のを、目で追えば………そこには一度だけ兄弟を演じたあの時に刻んだ事のある独占欲の痕がっ!!
ピキョッと硬直する私を置き去りにしたまま……
「大丈夫、琴南さんに心配されなくても、責任は取るよ?」
『あら……大事な“私の”親友のキョーコことですもの……あやふやなまま既成事実なんぞを作りやがる男なんかに、安心して任せられるとでも?』
「随分と酷い言われようだね。愛しい“俺の”キョーコのことだからね……これからちゃんと伝えて、責任持って大事に幸せにするよ?」
『こんな大掛かりに外堀を埋めて逃げ道を塞いで置いて?』
「なんのことかな?」
『敦賀さんはめの壊れたザルだって聞きました。それに、貴方みたいな図体が泥酔してたら、キョーコみたいな細身の女ひとりで支えきれるとは思えません。……なにより、ちゃっかりキョーコの腰なんて抱いてやがりますもの。』
「少し、思い込みが激しいんじゃないかな?」
なんでかしら?こ……怖い。
ふるふると身体が震える。
背中にじったりと嫌な汗が滲むみたいで、この場から逃げたいのに……蛇に睨まれたカエルみたいに動くことが出来ない。
『キョーコ、あんた今すぐうちに避難して来なさい。』
「ダメだよ。昨日、無理させちゃったからね……責任持って俺がケアして守るよ?まさか、俺を置いて行ったりしないよね?……キョーコ?」
ふふふふふ、なんて笑い合ってるのに……ピリピリバシバシと、背後にいるお方と目の前のローテーブルに乗った携帯の間に見えない火花が激しく散ってる気がします。
そんな私を挟んで
「……キョーコ?」
『キョーコ……?』
あぁ……
繰り返し私を呼ぶ、麗しの声が……ふたつ。
ど……どうしよぅ?
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粘着ストカVSツンデレ友情
(`皿´)ノファイッ!!
↓拍手コメントにて、みーれ様よりいただいてましたネタ
「1 モー子さんから電話が来た。慌ててか寝ぼけて取ったらスピーカーON 気づかないで会話してたら「あんた敦賀さんとどうなってるの?」どうって、隣にいたーー!
2 モー子さんにお弁当を届ける約束を思い出したキョーコさん。慌てて準備して「すぐに戻って来ますからーー!」と蓮様放置で出発。戻って来た時の蓮様は大魔王か凹凹か。」なんですが…………
ツンデレクールなモー子さんが、朝から恋バナな電話をする……?
庶民的なイメージを嫌うモー子さんが、それも食べ過ぎちゃいそうなうまうまキョコさんのお弁当を強請るだろうか……?
な、疑問によりちょいと逸れまして