「はぁぁ~~~~」
肺の中に溜め込んでいた息を全部、思いっきり深い特大のため息が深く澄んだ青い空に溶けいった。
装備さえ出来ない剣がずっしりと肩に重い………。
突然ですが、俺『勇者』になりました。



ふらりと出奔していた『勇者』の蓮の唐突なる帰国。
早々に『勇者』をやめると宣言して『勇者』の証たる宝剣を俺に押し付けた蓮は、「ではそういう事で。俺の『魔王』が寂しがってたらかわいそうなんで帰りますね?……『王』も、愛の使者を自称なさるならまさか邪魔などなさいませんよね?」なんて、威圧するような笑顔を振りまいてあっと言う間に消えやがった。
残されたのは宝剣と呆然とする俺、なんか企んだ顔の派手なアラブななりの国王。
これは、きっと悪い夢なんだ………なんて現実逃避する俺。
だって、蓮の次に強いとか言われてもちょっと氷結系の魔法が得意なだけの極平凡な『魔法使い』なわけだよ!?魔物の討伐ランクが高いのは、キリングマシーンとかの『機械系』をクラッシュしちゃう特殊体質なだけなのに!?
そんな俺に、ニヤリと笑うターバンで髭の『国王』は何かを投げ渡す。


「社、面白そうだからお前ちょっと『魔王』のとこ行って来い。んで、そいつで経過報告よろしくな、『勇者』よ。」


ぽいーっと軽ーく投げ渡たされたのは深い紫の水晶球。
映像通信の魔法の封じられたそれ。
つまり、単身赴任で出歯亀して来いと………


悲しいかな宮仕えの身。
「なんで俺が次の『勇者』じゃないんすか!?……つーか、宝剣のない今ならあいつに勝てる!?」
「あー、やめとけやめとけ。敦賀くん、素手の方が強いから………んでも、どんな美人ちゃんに迫られても釣れなかったあいつがねぇ?そんな『魔王』ちゃんは美人なのかなぁ?ちょっと興味があるね……」
なんて、俺には装備も出来なやしない重いだけの宝剣を羨ましがる村雨くんとお前は絶対来るな!!な貴島くんに見送られて、ここへやって来たわけですよ。




贅を尽くされた装飾の城。煌々と灯るランタンの灯りと暖炉の火で、明るく暖かい室内。
正直な話、もっとおどろどろしいところだと思っていたけど………
ほんのちょっぴり耳とか爪がとんがってたり肌の色がカラフルだったりなだけで、その身に人には滅多に宿らない力な魔力をなみなみたっぷりと宿してるのがわかるけど世間で言われてたような血も涙もない極悪非道な感じには見受けられない。
試しに侍女っぽい子に「人を食べるってほんと?」なんて聞いてみたら、「もーーー!!言語が通じて意思の疎通が出来て、しかも!煮ても焼いても不味そうなのをなんでわざわざ好んで食べなきゃいけないのよ!!食糧難でもなんでもないのに!!」って怒りながらこの国の食料自給率について延々と語られてしまったよ。




でも、まぁ……そんな事はこれから待ち受ける驚愕とか恐怖とかほんのちょっぴりの揶揄いにニヤつく気分なんかの前ではほんの些細な事だったわけなんだけどね。




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あれ?
終わんなかったよ……中編にてございます。
(´Д` )


すんなり纏める文章力が欲しいなぁ………



↓拍手のキリ番っぽいのを叩いちゃった方は、なにやらリクエストしていただくと猫木が大喜利的にぽちぽちと何か書くやもしれませぬ。


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