8200番目の拍手を叩いてくださったトモ様よりのリクエストにお応えしようと、えんやほら………と。



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やれや、やれ
歌えや踊れや
ここは儚き幽玄の泡沫。
世迷えや世迷え、ぬしもわっちも
あいやゞ今宵腕の中、逝くとこまでいきましょうかや?




「お前に似合うのは、そんなきつい緋色ではない………」
いつものようにそう言って、優しく笑う男。
けれど、キョーコが応えることなど出来ずただその首を振るだけしか出来ずにいた。





廻廊にくたりと寄りかかるようにもたれかけ、そっと吐き出すようにふぅっとキセルを燻らせる遊女。
情事の後の気怠さを隠しもしないしどけない乱れた緋色の襦袢姿。
膝の上に甘やかすみたいに男の頭を乗せていた。
「お前は………いつも空を見ているね?…籠から出たい?」
汗で乱れた白粉の乗った頬に伸びる男の指と掠れた低い声。
「ぬし様にはわっちは余程に籠の鳥のように見えてありんすか?……違いんす、ここは籠なんぞとは違いんすよ。」
紅の乗った唇が妖艶に笑みを刻む。
「わっちは鳥なんぞではありんせん。わっちは、緋色の太夫。ここ吉原の下賤な鬼女にございんすよ。」
だから、いいのだと…眉をしかめる男の望みを否定するようにほっそりとした首を振る。
抱きよせる男の腕、その勢いに揺られ結い上げた髪に刺した銀ビラがしゃらりと涼し気な音をさせる。
この籠の世界からキョーコを身請けようと望む男、蓮のその願いを否定してみせるキョーコ。
その涙と笑顔、そんなものを見た者は数えるほどにしかいなかった。




まるで豆でも売るかのような簡単さで幼いキョーコはある秋口にほんの端た金と引き換えに女衒に売られ、この吉原の忘八に売り渡された。
禿として付いた太夫は、その冷たい瞳と態度と裏腹にキョーコにこの廓の世界で生きるための術のすべてを教えてくれた。
キョーコが姉と慕ったその太夫、キョーコの前に緋色太夫と呼ばれていた美緒はキョーコに諭していた。
「ここ吉原は、男の天国女の地獄。ここの女はみなこの金魚のようなもの………」
美緒姐の白い指がびいどろの金魚鉢の淵を叩く。カツンと鳴る爪と跳ねる赤く揺らめく金魚の尾。
「わっちは、そんな女は嫌。だから、わっちは地獄の鬼女でいい………誰も愛さぬ鬼でありんす。」
緋色と黒、そんな色を好んだ美緒姐。
そんな美緒太夫もキョーコが15の歳になる冬に、肺を痛めて儚く冷たくなってしまった。
そして、キョーコが数えで16になる春。艶やかな黒に金の刺繍の俎帯に緋色の振袖を着て、キョーコは突き出しの道中を男衆の肩を持ち三枚歯の下駄を鳴らし見事7日の外八文字の披露をしてみせた。




美緒のあとを継ぎ、緋色の太夫と呼び声高い太夫へと瞬く間に上り詰めた。
そんなキョーコと羽振りの良さと秀麗なかんばせと粋な振る舞いで吉原でも噂となる蓮が出会ったのは、そんな肌を刺すような寒い年の瀬を迎うる頃だった。





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↓拍手8200番目の拍手を叩いてくださいましたトモ様からのリクエスト

花魁キョーコさんと、お殿様蓮さん」

からぽちぽちと書いてはみたものとなります。ありんす言葉とか猫木のうっすい知識で書いたてきとーなパラレルにてございやす。
………こんな感じでどうでしょう?
これを前編とした後編っぽいのも考えてはみたものの、この暗い感じでよいものやら?と、疑問が。


もっと、ラブいちゃっとしたもののが良いのかしら?それとも、このまんま後編にしたほうが良いのやら?と、謎にございんすけどどうざましょう?
(´Д` )


→後編に続きやんす。


↓拍手のキリ番っぽいのを叩いちゃった方は、なにやらリクエストしていただくと猫木が大喜利的にぽちぽちと何か書くやもしれませぬ。


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