湖都様からいただきましたリクエストにお応えしようとしてみたものの………どうだろ?



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「っ!!………どうしてっ!!」



愛しい姫。
艶やかに長い黒髪をひとつに括り、すっと真っ直ぐに真っ直ぐに伸びた背中へ流して座している。
片手で抱きあげてしまえるほどに軽いその身体。けれど、それを決して蓮に許してはくれない強い強い意志を含めた眼差し。
小さな窓、暗い日の射さぬ部屋。
最低限の調度品、壁一面にあるのは………格子檻。



座敷牢の奥、ちんまりと座っている小さな娘が纏うのは粗末な白の袿。
白……その色合いはまるで罪人のようでもあり死装束のようでもあり、蓮の顔を歪ませる。
違う!違う!!彼女に似合うのはあんな白さではなく、もっと明るいあたたかな色合い。
明るい色が似合うと商い者から買い揃えては、数が多過ぎると叱られた愛しい思い出が蓮の頭を巡る。
格子檻を掴む蓮の手にギリギリと力が入っているのが、その指先の白さから見て取れた。
愛しい娘、彼女と祝言をあげ夫婦となる筈だったのに………
蓮が妻にと望んだ姫のキョーコは、ただ困ったような顔に薄い笑みを浮かべ、でもキョーコへと伸ばす蓮の腕にしっかりはっきりと首を左右へと振るう。
キョーコの白い顔、まるい頬の横で震える黒髪。
白の着物、その膝の上に揃えられた手の中にあるのは………一振りの懐剣。
キョーコの手の中、そっと握られた飾り気のない懐剣。そこに刻まれていたのはただひとつ『最上』の家紋。
キョーコが、ただひとつ生家から………実母から持たされた忌まわしい呪い。




「どうして?最上が……最上がキョーコに何をしてくれたと言う?………俺は、ただキョーコがキョーコだけがっ!!」
がすっ!と格子木に打ち付けられた蓮の拳が派手な音を立てる。
悲壮な表情を見せている蓮にキョーコは眉を寄せ瞼を伏して、けれどその鈴のなるような声は告げる。
「なにも………ただ、この懐剣しかくれない『家』と『母』でした。でも、私………『最上』の姫にございます。」
その小さな身体、白い手、声にさえ震えはない。
その頬をひっそりと伝うひと粒の涙。




頑強な格子檻、その檻に鍵は掛けられてはおらず扉さえ開いていた。
けれど、キョーコが牢から出ることはなかった。




キョーコ自らそこへ入りそして、彼女を連れ出そうとする蓮を拒んでいるのだから。
ただ一振りの懐剣、そして蓮の目から隠すように背後に忍ばせた小さなびいどろ瓶ひとつだけを持って。




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↓拍手ボタンの「これはもしや!!」な番号を叩いてくださいました湖都様からのリクエスト。
お待たせいたしてしまってすいませんでしたー。
(´Д` )


見てわかっていただけますでしょうか?
時代ものでございます。
いや、本当、知識の薄さにげんなりげんなり。それっぽい事を拙い語彙でしれっと書くと思われますが猫木の作り出したもの故、間に受けられないよう生ぬるい目でご覧くださいまし。


そして、長めガッツリとのご希望でしたが、なにぶん大喜利的なものですのであまり練り込めず………ごめんなさい。



↓拍手のキリ番っぽいのを叩いちゃった方は、なにやらリクエストしていただくと猫木が大喜利的にぽちぽちと何か書くやもしれませぬ。


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