エレベーターのドアが開いたその瞬間から………久遠の頭には、ぽんっと花が咲いてしまう。
それはもう、外面大人紳士な『敦賀蓮』なんてものはバリッとその辺に脱ぎ捨てて、にへらっと笑ってスキップさえしてしまいそうな浮かれっぷりである。
まぁ、仕方がないのかもしれない………
彼は長年のじったりじったり長期戦な構えで挑んだ愛しくも手強いラブミー部のラスボスを籠絡したばかりの、アツアツラブラブ新婚さん真っ最中なのだから。




『はれんち・ばれんち・さぷらいず☆』




ウキウキとカードキーを押し当てて解錠したドアを開く。
「ただいま。」
帰宅した自宅の奥へと胸焼けしそうなほどに甘ったるい声をかければ、パタパタとスリッパの音もかわいらしく久遠の目に入れても痛くない愛しい愛しい新妻のキョーコが廊下を玄関へとやって来る。
顔面の崩壊が止められない久遠はそんなキョーコを熱烈ハグするべくその腕を開く………が、それはキョーコの
「ストップですっ!!」
との言葉にぴたりと止められてしまう。
久遠の手がギリギリ届かない範囲で立ち止まったキョーコは、ニヤリと笑う。
「さぁ、今日の私はちょっぴりいつもと違います!さて、どこでしょう?」
ぴっと人差し指を立て決めポーズなキョーコとふむっと考えじっとキョーコを見つめる久遠。
現在新婚さん真っ只中なヒズリ家でのちょっとしたブームが「ぷちサプライズ」な悪戯じみた驚かせ合戦であった。(キョーコの器用な手作りびっくり箱や久遠のヤケに本格的なマジックなど。ただし、高価なプレゼント等のものは新妻により禁止)
「髪型?……メイク?……エプロン?違うな、いつも通り完璧にかわいい。」
新妻にデレデレでさらっと甘い言葉を吐く夫はキョーコの些細な変化も見落とさない自信があります。
そんな久遠の鋭い観察眼でキョーコをチェックしますが、変化を見つけることが出来ません。
むぅっと難しい顔をする負けず嫌いな久遠に、にやっと嬉しそうに楽しそうに笑うキョーコ。
「わかりませんか?」
そんな事をいたずらっ子みたいに囀るキョーコがかわいらしくて久遠の手が伸びますが、それをスルリと
「触っちゃだめですよ?」
なんて躱したキョーコは久遠の肩をグイッと引き寄せてその耳もとにぽそりと囁く。
「実は………今、履いてないんですよ?」
………はいて?と、かたまる久遠。
言うだけ言ったキョーコはくるっと踵を返し
「きゃぁぁ~~」
と、パタパタと廊下の奥へと走って行ってしまう。
ひらひらふわふわとキョーコのフレアーな膝丈スカートが揺れている。
あの下………履いて、ないの?
キョーコの引き起こした「ぷちサプライズ」を理解してしまった久遠は片手で顔を隠し、もう片手に握っていた鞄はとさっと床へと落下してしまいました。
赤く染まった頬を隠した手の下で
「あぁ、もぅ………これは、俺も負けてられないね?」
なんて宣う。
新妻から夜の帝王だなんて呼ばれてしまっている顔で。





そんな久遠がこの後にどんな仕返しの「サプライズ」をキョーコに仕掛けたのか………それは、ふたりのみぞ知る事であった。








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ひっそりこっそりお持ち帰りフリーなものとなっております。


猫木の妄想駄文書き散らしブログ
「晴れなら空にさじなげて。」
開設半年と10日記念。(半年は気が付いたらさらっと過ぎてました。)
フリーにするのもどうなの?な破廉恥キョコさんになってしまった。
持って帰ってくれるひとがいるのかどうかわからぬままにフリーなお話です。
ヽ(*・ω・)人(・ω・*)ノ


はれんちかわいー感じのが書きたかったんだけど挫折したものでやんす。
バレンチVALENTI→イタリア語で勇敢な、度胸のあるといった意味の言葉です。


↓拍手のキリ番っぽいのを叩いちゃった方は、なにやらリクエストしていただくと猫木が大喜利的にぽちぽちと何か書くやもしれませぬ。


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