猫木の変な挑戦『いろんな敦賀さんを書いてみよう。』
困惑混沌の朝。から派生する続きのひとつとなっております。


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キッチンは私のお城でテリトリーで………戦場である。
エプロンをして腕まくりをした私は、彼を撃ち倒すべくフライパンを手に取った。



「うわぁっ!!」って、そんな敦賀さんの口からは聞いた事ないような声をあげて、鍛えられた腹筋を駆使してまるでバネ仕掛けのオモチャみたいにぴょんっと見事に………
敦賀さんは飛び起きたの………隣にいる私を見て。
きっと………傷付いたって顔を見せてしまったの。
だから……だから、ずっとこの優しい先輩は甘い甘い夢みたいなものを見せてくれようとしてるんだろう。
でもね?本当に貴方に恋を………二度とするはずのなかった恋をしてしまっている私には、そんな夢も……辛いの。
だって、いつかは覚めるんでしょ?




「だから!最上さんが好きだって言ってるじゃないか!!」
ぼさぼさの寝乱れた髪を掻き毟るようにグシグシとかきながら敦賀さんが叩きつけるように言う。
「天然タラシでコマシな隠れ遊び人の敦賀さんの言う事なんて信じられません!!」
もう尊敬する先輩への礼儀など構ってなぞいられない私も同じ強さで言い返す。
「遊び人なんかじゃない!!どれだけ俺が君を、君だけを想ってきたか………タラシ込みたいのもコマシたいのも君だけだっ!!どうしたら信じてくれるんだ!?」
もういい加減にしてほしかった私が叩きつけた挑戦状………それを、敦賀さんは真っ向から受けて、それで………



心底驚いたって顔を見せたひとに、にっこりと笑ってみせた………困った時に私が貼り付ける中居スマイル。
「おはようございます。二日酔いで気分が悪いとか頭が痛いとかはないですか?」
すらすらと台本に書いてある台詞を読むように私の口から言葉がこぼれていく。
そんな私を見下ろした敦賀さんは、目を丸くしたままコクコクと頷く。
「では、朝食の準備をしちゃいますね。」
そう告げてシーツを身体に巻きつけてベッドを降りた。着替えてからキッチンへと向かう途中で焦ったみたいな敦賀さんに捕まって
「驚いたりなんてしてごめん!夢だと思っていたから……」
なんて心底すまなそうに謝られる。
「大丈夫ですよ?そりゃ、私なんかが横に寝てたらびっくりしちゃいますもんね。」
悪い夢………だったのかな、敦賀さんにとっては………
ズキリと胸が痛む。
「違う!!違うんだ……いつもの、何度も見た俺の願望が見せる夢だと思ってたんだ。最上さん………君が好きなんだ。」
あぁ、なんて……なんて優しくて、残酷なひと。だから
「信じられません。」
にっこりと、にっこりと貼り付けた中居スマイルで告げたの。
そこからはもう、なんだろう?売り言葉に買い言葉?みたいに、私を好きだなんて言い張る敦賀さんと信じないとそう譲らない私。
最終的にたどり着いたのは
「どうやったら、何をすれば信じてくれるんだ!?」
「そこまでおっしゃるなら、私が今から作ったものを敦賀さんが完食してくれたなら、信じましょう!!」
なんて、この完全無比で完全無欠なお方の唯一の弱点『食』をついたものだった。
「君が信じてくれるなら、君が望むなら………どんなに腹がはち切れそうになろうとも全部、胃に納めてみせるよ。」
そう言って笑ったひと。
鼻息荒くキッチンへと乗り込んだはいいものの……………
それこそ、先生のお食事係りを任された時の様に満漢全席よろしく大量に用意してやろうなんてそんな事………マウイオムライスであんなに苦しんだ姿を思い出すと出来るはずもなく………だけど、普通の量普通の食事を召し上がっていただく訳にも行かず………
少し迷った私が作ったのは………



おぼんに乗せたそれを見た敦賀さんの額にたらっと流れる汗が見えるようだった。
敦賀さんにとってはビジュアルだけでも結構な攻撃力があると思うもの。
ふわふわに焼き上げ積み上げたパンケーキ。ちょっとだけ贅沢して買った粒の詰まった香りの良いバニラビーンズとスキムミルクを練り込んだ甘い甘い香りと味。
もこもことうず高く乗せた生クリームの上からはキャラメルソース、バナナやイチゴなんかをごろごろと添えて。
珈琲だって当然ブラックな敦賀さんには、甘い甘い甘過ぎるスィーツ。
少し震えた敦賀さんの手がフォークを掴んだ。



綺麗に、かけらひとつ残さずになくなったお皿の上。
呆然と見上げたひとは言った。
「これくらい、まだまだだよ?………俺の大好物の方がもっとずっと甘いよ?」
ニヤリと勝者の笑みを浮かべて………顔色は、ちょっぴり青いくせに。
「大好物?そんなのあったんですか?」
食べ物に関しては感心も執着もなんにもなかった彼に思わず聞けば「知りたい?」と、ちょいちょいと指で私を呼ぶ。
ふらふらと近寄った私の顎を捕まえて、ちゅっと唇が盗まれた。


「ほら、やっぱりこっちの方がもっとずっと………甘くて美味しい、俺の大好物。」



甘く笑う敦賀さんの顔が、また近付いてくるから………
そっと、まぶたを閉じた。




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↓拍手コメにてqwerty様   マリモ様よりちょうだい致しましたネタ

「キョーコをみてびっくり飛び起きてください。 」

「必死に気持ちを伝える蓮様と信じないキョーコちゃんで口論になり、キョーコちゃんに"じゃあ自分が作ったものを完食したら信じる"と言われ挑戦することになってしまう」

よりぽちぽちと書いてみたものとなっております。
( ´ ▽ ` )ノ
蓮さんにわんさかわんさかはち切れんがばかりに食べさせてやろうかと思いましたが、かわいそうなので甘味責めに。
したら、こんなことになってしまいもうしたっす。こんなんですいやせん。
(´Д` )



↓拍手のキリ番っぽいのを叩いちゃった方は、なにやらリクエストしていただくと猫木が大喜利的にぽちぽちと何か書くやもしれませぬ。


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