かほ様からのリクエストにお応えしようとがんばってはみたりしたり……


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声を大にして言いたい!言ってしまいたい!!心ゆくまで反論してしまいたい!!
キョーコは耐えるようにぎゅっと手を握りしめていた。


「はぁ~ん、かっこいいよね~!!」
「ね?背だって高いし、身体も鍛えてて……仕事もバリバリに熟すエリートで、フェミニストで優しいなんて」
「本当、完璧だよね!敦賀部長!!」
きゃぴきゃぴと、高い声が黄色く囀る。女が三人寄れば姦しいとは、よく言ったもので………ここLME商事の休憩所でもそれは変わらずに、ただ最上キョーコだけが胸の内でひっそりと話題の人物を誹っていたのだった。


確かに背高いわよ!顔見て会話するだけで首が痛くなるくらいに!身体だって、鍛えてるんでしょうとも!大っきな生き物なんだからもっとゆったり動けばいいのに、こっちは必死で走ってるのに優雅な歩行でぴったり付いてくるし!仕事はバリバリだろうけど、フェミニストどころか天然のいじめっ子だわっ!!それに………それにっ!!
セクハラ大王なんだからぁーーー!!!
声を大にして言いたい!!けど、言えない!!キョーコは、そんなストレスフルな休憩時間を過ごすしかなかったのだった。




事の起こりは遡ること3ヶ月ほど前となる。キョーコは前々より希望を出していた部署へと移動が決まって張り切っていた。
自立してしっかりとひとりで生きて行くのだと決めたキョーコは、仕事に生きようと心に刻んでいたのだった。
そう、顔だけいい男なんかに振り回されてたまるもんですか、と。
会社の花形とも言える部署へと配属されたキョーコ、その上司となった男が敦賀蓮そのひとだった。
最初こそふとしたすれ違いから反発した事もあったが、仕事に真面目で心遣いの行き届いたキョーコを蓮はかわいいと、そう思うようになっていった。
だけど、キョーコは入社当初からことあるごとに宣言していたのだ「顔のいい男なんて信じられない!!」と。
顔の造形の整っただけの俺様な幼なじみに振り回されて過ごしてしまったキョーコの幼少期からの長い時間。やっと、あいつを振り切ったのに、いまさらまた顔だけ男に騙されてなんかなるものか!と、そうキョーコは何故かアクの強い美形ばかりに気に入られてしまい降りかかるアタックをバッサリ切ってまわっていた。
当然、顔のいい男筆頭な敦賀蓮からの遠回しなアピールからもキョーコは厳密に距離を取っていた。
それは、とある事件をきっかけに崩壊させられてしまうものだったのだけれども………



「ち、ちちち近過ぎますっ!!敦賀部長!!」
人気のない資料室。
「この企画書製作したの最上さんだよね?ちょっと、残ってもらっていいかな?」なんて綺麗に笑って宣告された残業。
分厚いファイルがぎっちりと詰まったラックの隣の壁へと背中をめり込んでしまえとばかりに全力で押し付けているキョーコ。
そのキョーコを逃さないようにと左右に肘をついた蓮は、密着一歩手前なんて言えてしまさうな距離で追い詰めた獲物を甚振るように目を細めていた。
「せっせせせセクハラですぅー!」
迫り来る男から距離を取ろうと必死に目の前の壁のような胸を手で押すキョーコがひそめた声で訴える。
「どこが?………俺、まだ、最上さんに指一本触れてないよ?」
熱く見つめてくるその目が!余裕を浮かべて笑む唇が!なによりその夜の帝王と表すべきだだ漏れの色気が!!貴方の存在そのものがセクハラです!!
心の中でそう叫ぶキョーコ。
「どうせ………俺ので、すぐにふにゃふにゃに溶けちゃうくせに………」
濡れたみたいな低い声がキョーコに降ってくる。
「いかがわしい言い方しないでくださいっ!!ふにゃふにゃしちゃうのは……部長の!!」
「うん、俺の匂い、そんなに好きなんだ?」
にんやりと悪く笑った蓮がふわりと緩くキョーコを胸に抱き寄せる。
あ!あぁ!!だめ!はやく逃げなきゃ………強制敦賀部長セラピーが!!
頭の中でだけ全力抵抗で抗うキョーコの身体からはふにゃりと力が抜けて行く。
うっとりしだしたキョーコに蓮が意地悪気に囁く。
「ねぇ?最上さん、嗅覚って一番本能に直結した感覚なんだってさ。俺の匂いがそんなにいいなら………最上さんの本能は俺を求めてるって事じゃないかな?そろそろ、諦めたら?」
そんな問いにキョーコはただ、頬を赤く染めながらふるふると小動物のように首を左右に振り続けてた。





「蓮、お前、何を企んでるんだ?」
「………いきなり、人聞きが悪いですね、社さん。」
にこりと笑って見せる蓮と、不審な眼差しのままそれを見やる社。
「その笑顔はなにか良からぬ事を企んでる時の笑顔だぞ。」
「いやですねぇ、ただ今度の出張の同行最上さんに来てもらおうかと考えてただけですよ………ハプニングとかアクシデントで帰れなくなったり………なんて、いいですよね。」
にこりとにこりと綺麗に笑みを深める蓮、それを見て社は、ハプニングやアクシデントがなかったら無理矢理にでも起こすつもりだ!こいつ!!と、怖気っていた。




だってさ?
全力で立ち上げた新企画、部署の全員総出でひっちゃかめっちゃかのてんてこ舞いな忙しさ………そんな時期を乗り越えて、満身創痍な屍みたいになったキョーコが転がっていた休憩所のソファー。同じく休憩に来た蓮はそれを見つけて新入りなのにがんばってくれたもんなと、スーツの上着を脱いでキョーコの身体に掛けてやった。
深い疲労に眠り込んだキョーコは、その蓮の上着をぎゅーと抱きしめて顔を埋めて、ほにゃりと笑って「いい匂い~」なんて寝言を零した。コロンなんて使う暇もなかったほどの忙しさに、蓮の香りしかしないだろう上着に頬ずりなんてしてのけて。
そんなかわいいものを見せられて、どうにかしたくならないわけがないじゃないか?なんて蓮は、今でもその事を思い出すとキリキリとストレスを感じる。




「もうさ?はやく俺に堕ちちゃえばいいのにな。」
ぼそりと誰にも聞こえないようにつぶやいて………
蓮は、キョーコに今度の出張を知らせに行く。



その背中はウキウキとした気配が滲んでいるようだった。




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↓拍手の4444番目の拍手を叩いてくださったかほ様からのリクエスト

蓮さんとキョーコちゃんのオフィスラブ、悪い上司蓮さんに騙され絡めとられちゃうキョーコちゃんがみたいです」

から、ぽちぽちと書いてみたものの………なんだこれ?よくわからないものと成り果てました。(´Д` )
あんまり悪っぽくもないし企んでないセクハラ蓮さんと匂いフェチキョコちゃんな事に………オフィスで働いたことなかとなんでオフィスラブってオフィスラブって難しのなー。(´Д` )

もいっこリクエストいただいたやつもぽちぽち書いてみたりしてるんで、ゆるしてやってくだされ。


南、暑いです。(´Д` )


↓拍手のキリ番っぽいのを叩いちゃった方は、なにやらリクエストしていただくと猫木が大喜利的にぽちぽちと何か書くやもしれませぬ。


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