猫木の変な挑戦『いろんな敦賀さんを書いてみよう。』
困惑混沌の朝。から派生する続きのひとつとなっております。


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どうして………なんでこうなってしまったのか?
あぁ、でも、悔やんでももう遅い。



上半身を起こした私の隣に眠るのは、すぅすぅとこぼす寝息さえ悩ましいような色気に満ちたひと。
そんな彼を見下ろして、心臓がきゅうっと絞りあげられるように痛んだ。
そっと、彼を起こしてしまわないようにそっと、そのさらさらとかわいい感触の黒髪へ指を伸ばしてさらりと撫でる。
「だって………きっと、最後………だもん。」
癖になってしまいそうなその指触りの髪から指を離す。
小さく小さくつぶやいた私の言葉だけが部屋に落ちていた。




寝室にしてある部屋、このマンションの一番奥の広い部屋。
その部屋にあるたっぷり収納な大き目のクローゼット。
その奥の奥、淡いピンクのワンピースを抱き締めた私は縮こまるよう身を小さくしゃがめて………息を殺していた。
かたかたと震える身体と涙で滲む視界、どうせ時間の問題なのだろう………これから直面するであろう恐怖に脅えながら。




凹凸のない悲しい身体にシーツを巻き付けるみたいにしてそろりとベッドを抜け出し、クローゼットを開けたのはそのワンピースを取るためだった。
淡い綺麗なピンク、ふわりと広がる優しいラインがかわいくて、でも、首もとをホルターネックのように飾るリボンが大人っぽくもあるデザインに一目惚れをしてしまった私。なかなかに勇気のいるお値段だったけどそれでも、欲しかった。
こんな素敵な服を着こなせるような女の子だったなら………彼の隣に立てるような気がしてしまったから。
告白するならこのワンピース。すんなりとそう思ったの。
地獄まで持って行くつもりだった鍵の壊れた箱の中の恋心、それを出してしまおうと決めた。だって………敦賀さんにとってはお酒のせいでの失敗だったかもしれないけど、私にとっては昨日の夜は違うんだもん。
どうせ距離を置かれてしまうのなら………敦賀さんに私の恋心を伝えたかった。
昨日の夜は私にはとても幸せな事だったとそれだけでも知っていて欲しかったの。



でも、だけど………
命綱かのように縋り付くみたいに抱きしめたワンピース。それを取ったらお風呂へと行くつもりだった私に聞こえた、低い唸り声。
え!?敦賀さん、起きちゃうんですか?待って待って!まだ心の準備が不完全です!
その上、私、シーツ巻いただけっ!!
どんな顔してろって言うのよ?無理っ!!
思わず飛び込んで隠れてしまったクローゼットの中。




「んん……キョーコ?」
寝起きの掠れた声がクローゼットの外からくぐもって聞こえた。
ドキリと痛いほど心臓が高鳴る。
へ?え?!キョーコ!?
敦賀さんの声で呼ばれた私の名前に顔が焼けてしまいそう。
「……最後ってどういう事?」
ぼそりと聞こえる低い声に、ガタガタと身体が勝手に震え出す。
なんで?………とってもお怒りでらっしゃる。
「逃げられた?………くそっ!こんな事なら『はじめて』だからって手加減なんてするんじゃなかった!それこそ、お姫様でも抱いてるつもりで必死で優しくしてたのに………全力で消耗させて指一本も動かせないようにしてやるんだった!!」
そんな恐ろしい事を苛立たしげに吐き捨てた敦賀さんがドタドタと寝室を出て行く気配がした。
な……に?今の?どういう意味?
ぐるぐると思考の渦に飲み込まれる私の耳には、「キョーコ!」と私を呼ぶ声とバタンバタンと扉を開けてまわる音が届く。
しばらくすると………
「キョーコ、でておいで。」
そんな落ち着いた低い声が聞こえた。
えーーーと、クローゼットから?どんな顔して??
動けない私に、さらに低い声が
「靴もあったし、鍵も財布も携帯も置いてある………いるんだろ、キョーコ?」
そう言われましても………だって、シーツの下、裸なのよ?!
「ふぅーん、出てこないんだ………キョーコはhide and seekがしたいの?………じゃ、見つけたらキョーコが言ってた『最後』の意味を教えてもらうよ?返答によっては、もう許さない。攫って縛り付けて閉じ込めてでも離さない。最後なんてそんな事、絶対に許さないよ?」
ハイドアンドシーク……かくれんぼ?
いや、そんな事より敦賀さんは何を言って?さらう?とじこめる?
………カタカタと震えが止まらないのは何故なのか。
ひどく不穏な気配がクローゼットの扉の隙間から滲み込んできているみたいだった。
ワンピースを抱きしめ身体を小さく縮め、クローゼットの奥の奥の角の行き止まり。その壁にめり込んでしまいそうなくらい押し付けた背中にじわりと伝う冷たい汗を感じる。



ヒタヒタと………ゆっくりゆったり、追い詰めるのを楽しむような足音。
キィィと高く軋む音がして、目の前のクローゼットの扉がゆっくりと開いて薄暗いクローゼットの中に細い光の筋が差し込んで来るのを、息を飲み震えながら、瞬きひとつも出来ないまま見つめるしか出来なかった。
扉が開き、唇だけに歪んだ笑いを乗せたひとが覗きこむ。
クローゼットの中に低い低い声が落とされた。





「みぃつけた」





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↓拍手コメにてかほ様よりちょうだいしたネタ

キョーコちゃんがおうちのなかでかくれんぼしてやり過ごそうと言うところを蓮さんがホラー風に追い詰める」

より、ぽちぽちと作ってみたものとなりやした。
ホラー?これって、ホラー?(´Д` )?
なんで猫木のとこの蓮さんはこうも発言が不穏なのか?


いつまでこの変なシリーズやるつもりなのやら?楽しい?大丈夫なのか?
猫木は結構楽しいよー。( ´ ▽ ` )ノ



↓拍手のキリ番っぽいのを叩いちゃった方は、なにやらリクエストしていただくと猫木が大喜利的にぽちぽちと何か書くやもしれませぬ。


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