猫木の変な挑戦『いろんな敦賀さんを書いてみよう。』
困惑混沌の朝。から派生する続きのひとつとなっております。


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いや、本当にあり得ない失態だ!!
呆然とただ立ち竦んだまま何も出来ずに、出て行く彼女を見送ってしまっていた。
その手を取って抱き寄せる事も、追いかける事も出来ないで
愛しの彼女のぬくもりの気配と香りに満ちた部屋の中、俺はかつてない程に落ち込んでいた。
もう、膝でも抱えてしまいたい。



ちょいと焦ったみたいな彼女に起こされたんだ。
「すいません、起きてください敦賀さん。私、これからお仕事なんで出かけないといけないんです。この部屋オートロックなんで鍵とか考えないでいいですから、休憩してから帰ってくださいね。」
なんて、いつも通りの後輩な感じで。さらっと言うだけ言って去って行った彼女と取り残された俺。
はじめてのふたりの朝は腕に彼女を抱いて目覚める彼女にくちづけて、照れて恥ずかしがるその様子を堪能する……なんて、考えてたのに、すっかり寝過ごしてどうする!
………ちょっと待て、昨日の記憶があやふやなんだけど、俺しっかり彼女にアフターケアしたか?終わった後にすぐに寝てしまうなんてそんな事しでかしてないよな?ピロートークは男のマナーだぞ?ちゃんと、腕に抱いて甘く愛を囁いてはじめての彼女を労ったか?………思い出せない。何年も想ってやっと手に抱けた彼女なのに、なにやってんだ俺は!?
昨日の夜の俺をぶん殴ってやりたくなって頭を抱えそうな時に、テーブルの上に彼女の作ってくれたであろう朝食が見えた。
出かけの際の焦る様子と動きを思い出し、それでも残してくれた彼女の優しさに口もとが緩む。
今更、諦める気なんてさらさらにないんだから………どう挽回するかだ。
そのためにも、俺は携帯であの人へと連絡をつけた。
その後、残したらきっと恐ろしい形相で叱られるよな、なんて思いながら朝食に手を伸ばした。




スタジオの片隅、目立たないように出来るだけ気配を殺して彼女の仕事の終わりを待つ。
カットの声が掛かると同時にセットの中の彼女の元へと向かう。
俺を見て、心底驚いたといった表情で固まってしまった彼女の目の前へと。
「お疲れ様、キョーコちゃん。歩くのまだ辛いでしょ?俺が運んであげるね。」
そう言って彼女の腰から縦に抱き上げる。周り中からの悲鳴に我に帰った彼女がわたわたと弱く足掻きだした。
「じじじ自分で歩けますぅ~!降ろしてくださいっ!!」
「でも、キョーコちゃんちょっとがに股で歩くのヒョコヒョコしちゃってるよ?俺のせいでごめんね?だから、今日は俺がキョーコちゃんの付き人になるから。」
真っ赤になった可愛い顔を覗き込んでそう言うと、さらにさらに赤くなる彼女と周りからの大きなざわめき。
気にする事もなく、魂の抜けたみたいになってしまった彼女を抱いたまま監督やスタッフなどへと挨拶に回る。
「では、京子は次の仕事がありますので、お先に失礼させていただきます。」
もちろん彼女に歩かせるような負担はかける気もないから、抱き上げたままで彼女の楽屋へと着替えと荷物を取りに行く。今着てる衣装は、とても彼女に似合う可愛らしいものだったので買い取ったし何の問題もない。
あちこちで燃え尽きたみたいに白くなってる馬の骨どもを知らぬふりで彼女を抱えて歩く。
その日それからの京子の仕事の全ての移動は俺の車、もしくは俺。
「今日の俺は、キョーコちゃんの付き人だからね。なんでも言って?欲しいものはない?なんでもしてあげるよ?」
そう自分でもわかるくらいに緩んだ笑顔と甘い声で言う。
反応は「じゃぁ、今すぐここから帰っていただけませんか?」としっかりはっきり書いてある顔での「付き人なんて恐れ多いです」なんてセリフだったけど、それは笑ってうやむやに。
役に入った京子がその身の疲労などないかのように動くのを見守り、撮影が終われば自分でヒョコヒョコと動きまわろうとするのを捕まえては「俺のせいだから」「昨日、無理させてごめんね?」と、有無言わさずに抱いて運んだ。
最後の収録では貴島に「身重の新妻を過剰に気遣う心配性極まりない旦那みたいだ」だなんてからかわれたけど、笑顔で黙らせておいた。


「疲れた………なんか異常に疲れた。あぁ、私の芸能人生はきっともぅおしまいね……幾千幾万の敦賀ファンにイジメられて消えて行くんだわ。」
なんてぐったりと沈み込むキョーコちゃんの頭を撫でる。
「お疲れ様。大丈夫、大丈夫。みんな『いくら顔が良くてもアレはない。』って言ってたから」
キョトンとした顔で俺を見上げるキョーコちゃん。それはもう一瞬たりとも離すまいと構い倒し、奪われまいと馬の骨を威嚇してまわり、顎が外れそうなくらい恥ずかし甘い言葉を囁く俺を見てみんなそう言っていたから。
抵抗を諦めたキョーコちゃんを腕に抱き上げてエレベーターへと向かう。



愛車を停めてある地下駐車場、そこであいつと出くわしたんだ。
「てめぇ、キョーコになにしてやがる!?」
キョーコちゃんを抱き上げたまま歩く俺を見つけて不破がそう叫ぶ。
「なによ?挨拶もなしに、いきなりうるさいわね!!」
「キョーコ、お前なにそいつに捕まってやがる!?何してやがんだよ!!」
いつもの言い合いになりそうな所でにっこりと笑って彼に告げた。
「やぁ、お疲れ様、不破くん。昨日の夜に、俺がキョーコちゃんに無理させちゃったから今日は1日京子の付き人やってるんだよ。」
はぁ?って顔をする不破などもう目もくれずに
「歩けなくなるまでしちゃって、ごめんね?今夜は俺の部屋に帰ろう?そっちの方がお風呂もベッドも広いし。昨日、散々汚しちゃった髪も身体も全部洗ってあげるから、一緒のベッドで同じ夢を見ようね。」
そう腕の中のキョーコちゃんに言う。
薔薇色に染まった彼女がフルフルと左右に首を振ってるけど見ないふりで愛車の助手席に詰め込んでシートベルトで固定してしまう。
ぱたぱたと追いついた不破のマネージャーが「いやぁ!尚!!顔っ!顔が仁王像になっちゃってる!!」なんて悲鳴をあげてるのを聞きながら運転席へと滑り込みドアを閉める。



「さぁ、おうちに帰ろう?」
1日ずっと彼女と一緒にいて、彼女との仲を見せつけて周り、最後に一番目障りな馬の骨に知らしめる事が出来て、ご満悦な俺はにっこりと助手席の愛しい彼女に笑いかけてからエンジンを回した。




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叱責する人とヘタれな彼。のコメにてゆうぼうず様よりいただきましたネタ

「ガニ股ヒョコヒョコ歩きなキョコたんと甲斐甲斐しく世話焼く蓮の会話の端々が耳に入り、松太郎が仁王になったり、周りにバレちゃって公認になる」

よりぽちぽちと書いてみたものとなっておりますが、誰だこいつ?
(´Д` )


猫木は、はじめてほにゃららな次の日にマラソンで3キロ走った記憶があります。
走ってる間ずっと、旦那をぶん殴ってやろうと考えてました。
。(;°皿°)



↓拍手のキリ番っぽいのを叩いちゃった方は、なにやらリクエストしていただくと猫木が大喜利的にぽちぽちと何か書くやもしれませぬ。


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