猫木の変な挑戦『いろんな敦賀さんを書いてみよう。』
困惑混沌の朝。から派生する続きのひとつとなっております。


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電子音が鳴っていた。
腕の中から抜けて出て離れていく、ぬくもり。
幸せな………とてもあたたかい満ち足りた眠りから覚めていく。



「はぁぁぁ!?なんなのよ!?なんであんたなんかに朝っぱらからそんな事言われなきゃなんないのよ!!相変わらず常識ってもんが欠如してるわね……はぁ?テレビ??なんのことよ……?」
薄く開いている寝室のドアの向こう側から聞こえてくる、顰められた君の怒声。
すぅっと、胸に灯っていたあたたかいぬくもりが消えていく。
取って代わるように、胃の腑の焼けるような黒い炎が奔る。
彼女があんな対応をする相手なんてひとりしか思い浮かばない。
当たり前のように彼女の愛を受けておいて、それを利用するだけして簡単に捨て彼女を傷付けておいて、尚彼女を自分のものだと言い張り纏わり付く目障りな羽虫。
あんなやつには……否、誰にも渡さない。
彼女は………頷いてくれたんだ。戸惑い震えながらも、俺を拒絶しないでいてくれた昨日の夜に。
あの憎むべき馬の骨に鉄槌を……知らしめてやろう、彼女が俺を選んでくれたと。
そう思ってベットから抜け出ようとしたその時に、サイドテーブルの上に置かれていた俺の携帯が鳴った。
液晶画面に映し出された名前に舌打ちをしたい気持ちになった。
通話ボタンを押して電話に出ると………
熱狂と大音量のサンバのリズムに思わず、耳元から携帯を離した。


「な、にこれ!?……」
愕然とした彼女の声。何事かと寝室から出ると携帯とリモコンを持ち、呆然と立ち竦むシーツを巻き付けた彼女と………
『敦賀蓮と京子、熱愛発覚!!昨晩、ドラマ・映画からバラエティーにと幅広く活躍する人気タレントの京子と、抱かれたい男No.1な芸能界一イイ男実力派俳優の敦賀蓮が京子のマンションへと仲睦まじ気に寄り添って入っていくところがスクープされました!』
と、興奮気味に語るキャスター。
耳から離したところに持ったままだった携帯からは
『でかしたぞ、蓮!!俺は、猛烈に感動しているぞぉ~!幸せになる資格がないだとか、薄っぺらい上辺だけの付き合いを「愛」だなんて勘違いしてやがったお前が初スキャンダルだ!しかもあの、最上君とっ!!「愛」を拒絶するだなんて悲しい悩める愛の子羊なラブミー部のラスボスを籠絡するなんてな!!もちろん、記者会見から結婚式披露宴まで俺がバッチリしっかりプロデュースしてやるからなっ!!』
なんて、そんな浮かれに浮かれた狂喜乱舞なカーニバルの真っ最中であろう所属事務所社長の弾みまくる声。
「はぁ!?誰か、ダミーホ女ですってぇぇぇーー!?」
携帯片手に般若の形相になっている彼女と……俺の手の中の携帯、それを見て唇に笑みが浮かぶ。


ひょいっと君の手の中から携帯を奪い取る。俺を見上げた君が怯えた表情で固まる………なんでかな?俺、笑ってる筈なのに。
まぁ、いいや。
彼女の携帯と俺の携帯。それを、上下逆に入れ替えて向かい合わせに合わせる。
『はぁ?!あんた誰だよ?キョーコ出せよ。』
『あぁん?お前こそなんだ?』
ふたつの携帯間でやり取りされている会話。そんなふたつの携帯をそのままにソファーの前のローテーブルの上へと置いておく。
存分に手のひらの上で踊ればいいさ。
これで、彼女のまわりにちょろちょと目障りな馬の骨も排除出来るだろう。



よし、これで俺の頭を悩ますふたつの声がなくなった。
すっきりとした気分で、君を腕に囲い込む。
「ねぇ、キョーコちゃん?この騒ぎだし、きっと君も俺も今日は仕事にならないと思うんだ………だから、この熱愛スクープが本物になるように存分に君を口説けるね?」
コツンとおでこをくっつけてそう告げる。
赤く染まる頬と耳。そんな反応が可愛くて愛しくて嬉しくて、ついかぷりと耳に噛み付く。
「記者会見しなきゃならないけど、交際会見にする?それとも、婚約とか結婚会見にしちゃおうか?」



どちらにしろこの腕から逃がす気なんて全くないよ?






おまけ。
携帯間の会話。
『おい、キョーコ!てめぇ聞いてんのか?敦賀なんぞに跪きやがってっ!!約束通り、お前京都に帰って一生中居になりやがれ!!』
『小僧が!大人しく聞いてりゃ図に乗りやがって……跪くだと?愛をなんだと思ってやがる!!その上、うちから俺のお気に入りの秘蔵っ子を取りやがる気か!?いいだろう、やってみやがれ!全力で相手してやる。』


不破尚、決して敵にしてはならない恐ろしい男を敵にまわす。





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さて、あっちにこっちに彷徨っております感満載のこのシリーズにございます。
叱責する人とヘタれな彼。のコメにてSAILEE様よりいただきましたネタと
↓拍手コメにて葉月様よりいただきましたネタ

「いっそのこと社長も乱入。サンバ隊を引き連れきょーこさん宅突撃、ご近所騒然→そのまま記者会見→社長プロデュースで結婚式決定!」
「社さんの立場を松(あえて『まつ』呼び)へと置き換える。お持ち帰りしたキョーコが(食われてないか)心配してやって来る。」

のふたつを複合してバッサリと削りに削った感じのものにてございます。
ふたりとも電話のみで出しちゃって、蓮さんによって矛先を逸らされちゃえばいいんでないかな?と。Σ(・ω・;|||


いや、だって……社長とか松とか部屋まで持って来るのも大変だし、出すと長くなった末に、オチというか話の真ん中が蓮さんからズレちゃいそうで………せっかく、リクエストいただいたのにすいません。
ね?一応これ、敦賀さんシリーズだから、たぶん。猫木には大風呂敷を畳む技量がないのであります。初期は、キョーコ視点、朝の部屋の中のふたりオンリーでいく予定でしたもの。
(´Д` )


でも、いろいろ考えてもらったネタで書いてみるの楽しいっす!
このシリーズで30本以上話書いてるのかと、我ながらビックリいたしました。
5~6本書けたらいいやって予定しかなかったんでやんすよ。


↓拍手のキリ番っぽいのを叩いちゃった方は、なにやらリクエストしていただくと猫木が大喜利的にぽちぽちと何か書くやもしれませぬ。


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