猫木の変な挑戦『いろんな敦賀さんを書いてみよう。』
困惑混沌の朝。から派生する続きのひとつとなっております。


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ベッドの上、上半身を起こす。
彼方此方に走る痛みと違和感を噛み殺して、隣に眠るひとを見下ろす。
無防備にスヤスヤと眠る彼。薄っすらと開いた口もとがなんだか子どもみたい。
なんだかよくわからないうちにこんな事になってしまったけれど………敦賀さんと私の関係は変わってしまうの?


それも、よくわからないまま。
私がお子さまだからなのかな?
………言わなくてもわかるだろうって、お約束的なそんなものなんてわからないんだもん。
どうしたらいいんですか?
どんな私なら貴方のそばにいれますか?
そんな事を考えながら、つい欲望に負けて敦賀さんのさらさらの長い前髪を撫でるようにかき分けた。
きゅっと寄せられた眉間。
どうしたんだろ?さっきまで気持ち良さそうに寝てらしたのに………と、そう思っていたら敦賀さんの唇がふゆふゆと震えるみたいに言ったの。
「……みさん…もがみさん……」
しっかりと瞼は閉じられたまま。
寝言で私を呼ぶ敦賀さん。
「どうしたんですか?」
思わずそう聞いてしまった。
「おねがい………おねがい、だから」
なんだか必死に頼み込んでいる敦賀さん。
その手が何かを探すみたいに動くと、私の手を掴む。
「おねがい………俺を、君から…消さないで」
「??大丈夫、消しませんよ。」
なんだかわからないけど、そう答える。
「……ほんと、に?」
不安気に恐る恐るそう尋ねる様子は迷子の子どもみたいで、胸がきゅーとする。
「はい、本当に。敦賀さんみたいな大きなひとをどうやって消すんですか?人体消失イリュージョンなんて使えませんよ、私。」
安心させるように掴まれた大きな手を握る。


「ありがとう、キョーコちゃん。」


眉間に出来たシワを消して、口もとを緩ませて敦賀さんがそう呼んだ。
私のことを、『キョーコちゃん』と。
熱でうなされて呼んでいたあの時のように。
「……私が?………最上キョーコが、『キョーコちゃん』…なんですか?」
震える声。
「おれ…の、キョーコちゃんは…もがみキョーコちゃんだけ、だよ?」
ふよふよと唇を少し歪ませて、不思議そうにした敦賀さんが寝言でそう言ってくれた。
「………私…が、敦賀さんの『キョーコちゃん』?………16才で、女子高生だった………え?私?」
そういえば私も4つ年下で、その時高校生だったわ。え!?えぇー??でも、君にはなんにもしないよって………言われたけど………手、出されたわね、昨日。

ーピピピピピー

ふぇ?じゃ………その頃から敦賀さんが好きだったのは……私?あれ?じゃ、あの敦賀さんがオフの日の度に連れまわしてくれてたのって、暇つぶしじゃなくて………デート……だったの、かな?
「………上さん?」
どうしよう?嬉しい!!最上キョーコ、人生で初の両思い!?きゃーーー!!どうしよう?どうしたらいいの?
「最上さん?」
ふと、呼ばれている事に気が付いたら、サイドテーブルの上に置いてあった携帯のアラームで起きたんであろう敦賀さんがこちらを心配そうに覗き込んでいた。
「あの……最上さん?」
不安そうに顔を覗き込んでくる敦賀さん。そのさらりと流れる黒の前髪、切れ長の目と鼻筋の通った高い鼻、形の良い蠱惑的な唇。滑らかな生肌全開で逞しい身体を晒している。
その、すべてがキラキラと光って見える………私の王子様。
「私と結婚してください。」
ほわぁ~んと夢の世界みたいな所へどっぷりと浸かり込んでしまっていた私の口から、ポロリと転がり出た。
びっくりした顔をした敦賀さんは、その3秒後にはニッコリと笑うと携帯を操作して言った。
「もう一回、言って?」
携帯を構えた、企む似非紳士スマイルで。
だけど、もう妖精とか天使とか王子様とかが乱舞するドリームにぎっちりはまり込んでた私は気付かないまま
「キョーコと結婚してください!」
なんて、ほわほわうかうかと………




そう、彼があの時、携帯でしていた操作は『録画』。ムービーで記録がばっちりだ。
「もちろん、返事はYESだよ。………あぁ、でも俺からもプロポーズしたいから今度させてね?……言質は取ってあるけど、承諾以外受け付けないからね?」
ふわふわぽわぽわとメルヘンな世界のお姫様になっていた私を現実へと引き戻したのは
「じゃぁ、もう一度愛を確かめ合おうね?」
そう言って、私をベッドへと沈める夜の帝王な敦賀さんだった。




もちろん、後日、正気に戻った私には逃げ道なんてちっとも残されてやしなかったのです。





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忘却を許さない俺。のコメントにてSAILEE様よりリクエスト頂きましたネタ「寝言でキョーコちゃんを呼ぶ蓮さんとソレを聞いちゃったキョーコさん」からぽちぽちと書いてみやした。
辛甘いやつと甘々いやつと考えて甘々いやつにしようとした結果がコレだよ。(´Д` )
これは、『変な敦賀さんを書いてみよう。』じゃなくて『いろんなキョーコちゃんを書いてみよう。』になってんな。


こんなんしか書けやしやせんが、猫木はちゃっかりいつまでも、うっかりびっくり朝のふたりなネタをお待ちしておりますのよ☆←もう、自分で考える気もなさげ。


↓拍手のキリ番っぽいのを叩いちゃった方は、なにやらリクエストしていただくと猫木が大喜利的にぽちぽちと何か書くやもしれませぬ。


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