仮にもプロの女優としてあるまじき大根な演技をしている。
だけど、他にどうすれば?



長い睫毛に縁取られた黒の瞳、その目に見つめられているのが絡みつくみたいで恐いなんて。
「おなかがすいてるんだ。」なんてそんなヤリでも降ってきそうな事を言った敦賀さん。その笑顔の先輩に私が返せる言葉なんて「で……では、スープを温めるから少しお待ちください。」としかなく、カタカタと身震いする私のその不自然さにも、彼は素知らぬふりで目を細めるだけだった。



キッチンで鍋に火を入れている時、カトラリーや食器の準備をしている時………食事を一緒に取るためにテーブルを挟んで向かい合って座っている今。その所々節々に、敦賀さんの視線を感じた。
貼りつくみたいなぞわりとするその視線を、気付かれぬようにこそりと辿ればそこにいるのは、私の知らないひと。
よく知っていた筈の『先輩』の笑顔で微笑んでいるのに………私の苦手な夜の帝王みたいな濃密な色気や甘さはなく、でも仄暗く滴るみたいな妖艶な気配を含んだ瞳をしたひと。
何を食べようと、砂を噛んでいるみたいだった。味なんてそんなのよくわからない。
スープをなんとか流し込む私と対照的に、空腹を口にした彼は一口一口小さく、でも、上品に綺麗に食べ進めている。
………食事ひとつ取ってもやっぱり違う。彼らはもっと豪快に、お好みあんぱんなんてカロリフルなものに噛り付いていたと、コンソメスープの表面を見つめながらそんな事を考えてしまっていた。
「……誰の事を考えてるの?」
低い声が、かけられた。思わずにびくりという大きく身を震わせてしまった私が、そろりと目をあげると
「全然食べてないけど、考えごと?今日、告白されてた『彼』のことでも考えてるの?」
ずいっと、大きな手に握られたサラダのプチトマトの刺さったフォークが私に向けられた。それがまるで、恐ろしく冷たい刃物みたいに思えて背中に嫌な汗を感じる。
「…ぃいえ、そんな……光さんの事を考えてなんて」
突きつけられたフォークから目が離せないままにそう言えば
「そう……光さん、光さん……ね。」
シルバーのフォークが、プチトマトの刺さったままにテーブルの上へと置かれた。
ぎっと軋むみたいな音がして、椅子から立ち上がった敦賀さんの指先が私の頬を撫で下ろす。
「君の頭から『彼』を追い出すには……こんな跡くらいじゃ足りなかったみたいだね。」
指先が私の後ろ髪をわけ、すぅっと今日、彼が強くくちづけたその紅い跡をなぞる。
その指先を酷く熱いと感じたのは、私が凍えるみたいに身を震わせていたからなんだろうか。



ゆっくりと近付いてくる大きなひとから逃れたいと心臓が痛いほどに早鐘を打つのに、私は身動きひとつ出来ないでいた。




✄ฺ----✄ฺ----✄ฺ----✄ฺ----✄ฺ----✄ฺ----✄ฺ----✄



もうこれ短文って長さで終わる気配がないとです。。(´д`lll) 


さて………ねぇ?
これからどこへ行きましょうか?
なんかね、通常のままがんばるか、限定方面へ突っ走るかで悩んでます。
どっちがよろしおす?←聞いてどうする。


限定方面へ行くと、なんかねちっこい感じの調で教な話になりそうでいやんだなぁ。
(((( ;°Д°))))

あ、たくさんのいいね!ありがとうございます。
なんとかブチ切りにせずにがんばろうかと思いました、たぶんがんばるかとたぶん。


↓拍手のキリ番っぽいのを叩いちゃった方は、なにやらリクエストしていただくと猫木が大喜利的にぽちぽちと何か書くやもしれませぬ。


web拍手 by FC2