昔々あるところ。

最上キョーコと言う名のかわいらしい女の子がおった。

キョーコは 「蓮」と言う名の雀?に懐かれ、かわいがっておりました。




ある日、いつもなら目の届く範囲にいる蓮がいなくなってしまい、キョーコは心配して探し歩いていました。

「れーーん?あれ?どこに行っちゃったんだろう?」

うろちょろと蓮を探して彷徨い歩いていると

「ひぃ………助けて!」

と、言う悲鳴とピィーーと言う鋭い鳴き声が聞こえきました。

聞き覚えのあるその声のする方へとわたわたとキョーコが向かうとそこには、眼鏡をかけた顔色の悪い男とその肩にとまった蓮いたのでした。

「あの、すいません。その子……うちの蓮がなにかなさいましたでしょうか?」

と、キョーコが尋ねると肩に睨みつけるような蓮を乗せた男、社倖一はちょっと震える声で言いました。

「いや………この雀?が洗濯のり食べちゃってさ」

「申し訳ありません。後でうちの洗濯のりを持って来ます。蓮ったら、いつも食べなさいって叱るまでたべないのに………」

キョーコがぺこぺこと頭を下げていると、社の肩に乗った蓮が何かを急かすようにその髪を一筋咥え引っ張り出しました。

「痛っ……わかったよ。………あー、キョーコちゃん?あのね?この悪さをした雀?の舌を切ってしまおうかと思うんだけど、いいかな?」

と、ますます顔色を悪くした社は手にした糸切りバサミをキョーコに見せました。

その手はなぜか小刻みに震えていました。

(なんでだろう?………蓮より社さんを助けなきゃって思うのは………)

と、不思議に思いながらも

「そんな………ただでさえちっとも自主的にお食事なさってくださらないのに。お願いです、蓮の事を許してあげてくれませんか?」

キョーコがそう頼むと、助かったとばかりに押し付けるように肩の蓮を渡してくる社。

心底ほっとしたような顔をした社に、頭を下げて礼を言うとキョーコと蓮は帰路に着きます。

そのちいさな背中を守るように寄り添い周りを威嚇するように睨めつける蓮とキョーコには「助かった………胃が、胃が痛い。」とつぶやく社の声は届かなかった。



家に帰りつくと、自作の洗濯のりとお裾分け用に自信作の煮物などを持って社の家へととって返すキョーコ。

そこで、お詫びにと洗濯、夕飯作りなどをこなしていくキョーコと、ぴったりとへばり付くみたいに片時も離れない蓮。

(あぁ、キョーコちゃん騙してごめんね?)

と、そんな事を後ろめたく思う社に見送られ家に帰ったキョーコ。



その夜、キョーコはふにふにとくすぐるように髪や頬を撫でる手の感触に目を覚ましました。

なんと、そこには黒い髪と瞳をした大きな見目麗しい男の人が覗き込むようにキョーコの顔を見下ろしています。

「ふぇ?……誰?」

「びっくりさせてごめんね?俺、雀の蓮だよ。」

「いや………あなたは雀ってより猛禽る」

「雀だよ?キョーコの雀の蓮。」

キョーコの言葉を遮ってそう言い切る男。

「だって、どう見ても鷹とか鷲とかの猛禽類で、雀とか無理…」

「す・ず・め、だよ?」

にっこりと笑っているのに、凄まれているように感じてキョーコはこくこくとうなずく。

「今日は助けてくれてありがとうね?御礼に雀のお宿に招待するからついてきて?」

と、そう言った蓮に抱き上げるように運ばれて辿り着いたお山にある雀のお宿。




美味しい料理と見た目もかわいい甘味、雀?たちの歌や踊りで歓迎されたキョーコ。



一晩が開け、キョーコが帰らなきゃっと言うと蓮がふたつのつづら?を出してきて言います。

「御礼にこのふたつのつづらのどちらかをあげるよ。」

と、そう言った蓮が指し示すふたつの物。

それを見てキョーコは引きつったような顔をしてしまいます。

(どう見てもどっちもつづらじゃない。)

ちいさな方は辛うじて箱の形をしていますが、高級オーラを放つビロード貼りのそれは、ベタベタな恋愛ドラマなどのお約束的なあのアイテムを入れるそれにしか見えません。

あとは、薔薇の花束と一緒に膝まづいた男なセットされれば完璧なありがちプロポーズのシーンが完成されるたぐいの物。

そして、もう一方の大きな方はどう見ても箱ではありませんでした。

ドレスを着せられたトルソーの上から隠すように別の大きな大きな布を被せた、みたいに見えるそれ。

その被せられた布の下からは、輝くビーズや刺繍、フリルに飾られた白いサテンのドレスの裾が広がって溢れています。

女の子なら誰もが一度は憧れるその純白のドレス。

あとはベールとブーケと白いタキシードの男、さらにチャペルと神父が揃えば完璧にウェディングなそれ。

さぁさぁ、はやく選べとにっこりと笑顔でプレッシャーを掛けてくる蓮から、きょどきょどと目を逸らし

(どっちって………どっちを選んでもどっちもどっちって感じで………恐い。)

だらだらと冷や汗を浮かべたキョーコが恐る恐る

「いや、どちらもご遠慮……」

と、そこまで告げると

「キョーコ?『金の斧銀の斧』ってお話、知ってる?池に落としたのは金の斧銀の斧どっち?って女神に聞かれるお話………………正直者は金の斧と銀の斧と落とした普通の斧がもらえるんだよ。」

にったりと笑みを浮かべた蓮が語る。

「欲深くなくて謙虚なキョーコには大きいつづらと小さいつづらの両方と………俺をあげるよ。」

そのどこか悪い物を感じる笑顔ににじにじと逃げようとするキョーコの腰を捕まえ、抱き寄せてそう囁く蓮。

その姿は、匂い立つような色気と飢えた男の欲を滲ませるようで

(いやぁーーー!!夜の帝王がご降臨遊ばしてるーーー!)

と、顔を赤くしてふるふると震えるキョーコを満足気に抱きしめ

「キョーコちゃんに助けてもらって、切り落とされなかったこの舌も……下も使って、ちゃんとご奉仕するからね?」

と、嘯くとキョーコのピンクの甘やかな唇へと舌を這わせた。




つづら?の中身も雀?もみんなみんな君にあげる、と猛禽な瞳だけが語る。





終わっとけ。



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猛禽類な方(セクハラ親父風味)を自作自演マッチポンプな詐欺的に押し付けられたキョーコちゃん。って、感じの猛禽編でした。
(´艸`)*

猛禽類に凄まれて脅される社さんが不憫だ。

こーゆー馬鹿っぽいのをいろいろととりとめもなく考えるの楽しい。あと、ぽちぽちと作る時間がかからないのが良い。笑


以上、小鳥と猛禽でした。





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