猫木の変な挑戦『いろんな敦賀さんを書いてみよう。』
困惑混沌の朝。から派生する続きのひとつとなっております。


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誰もいなかった…………。
ひとの気配のない、一人暮らしの私の部屋。


身体の痛みと下腹部の違和感がなければ、夢だったと思ってしまいそうなくらい。
酔った勢いとはいえ一晩を共に過ごした女を放って帰るようなことをする方じゃないと思ってた。


酔った男を一人暮らしの部屋に招くなんてふしだらな女だと思われたのかも………
それでも、昨日ベッドに引っ張り込んだのは夜の帝王な敦賀さんだったのに。
敦賀さんだって男の人だもの………男性の欲求的にムラっときた時に手近にいたのが私だったとか?
噂に聞く『ヤリ逃げ』ってのをされたのかしら?
でも、紳士な敦賀さんよ?
「ごめんね」って、優しく微笑んで労ってでも、君は違うんだよってオーラで解らせるくらいはしてくれそうじゃない。


それとも、私みたいな地味で色気のない女を抱いてしまった記憶なんて目を背けてなかったことにしたかったのかな………
だって、あんなに嫌われてて嫌味だっていっぱいで、君は範囲外だって釘さされて…………でも、優しくていつも助けてくれて、慰めてくれて癒されて敦賀さんを追いかけて行くんだって、いつも勇気付けてくれる………こんなに好きなのに………
ちょっとは嫌われてないって思ってたのに………ふたりのはじめての朝さえ一緒にはいてくれない程度なんだ………


気が付いたらぼろぼろと涙が頬を濡らしていた。
胸が痛い。
シーツに顔を埋めたら、ふわっと敦賀さんの残り香………この香りと痛みだけが敦賀さんが置いていってくれたもの。
こんなに胸が痛いのに………それさえ、愛しいと思う自分が愚かで涙がとまらない。



その時、ガチャ…バタンと玄関の方から音がして誰かが部屋に入ってきた。
誰?
入って来た人はドタバタとちょっと走って寝室の前まで来てそうっとドアを開けた。


昨日着ていたまんまのヨレヨレの服に寝ぐせでところどころ跳ねたボサボサ頭の敦賀さんがいた。
「キョーコ、どうしたの?なんで泣いてるの?」
私のいるベッドへ来ると、驚いたように心配したようにそう聞いてくる。
(あなたにヤリ逃げされたから悲しくて……なんて言えない。)
そう思って固まる私の頬に手を添えて
「身体、辛い?大丈夫?ひとりで寂しかった?ごめんね。キョーコが起きる前に帰ってこれるつもりだったんだけど、ひとりにしてごめんね。」
ふわっと抱き寄せてくれた。


「………これ、取りに帰ってたんだ。」
そう言って、彼はビロードの小箱を開ける。小粒の…でも、すごく綺麗なきらめきのピンク色のダイヤとコーンみたいな蒼い宝石の埋め込まれた銀色の細い指輪。
「あと、これもね。途中で買ってきたんだ。」
差し出された赤い薔薇の花束。
「愛してるよ。俺と結婚しよう?」
私の左手を手に取るとその薬指の付け根へ唇を落とす。
「何年も何年も君に片想いをして、この指輪だって随分前から用意してたんだ………君の気持ちは昨日の夜に教えてもらったから、もう逃す気なんてないけどいいよね?」
見たことないくらい神々しく嬉しそうに笑う敦賀さん。その真剣な眼を見て、演技じゃないって思えたから………





さっきまでとは違う涙を浮かべて、疑問符が付いてるだけでほぼ断定的なその問いにうなずいた。



 

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とりあえず、あんま壊れてない王道的な感じのやつを。
さぁ、次からは壊れた蓮さんな感じのを書いていきましょうかしらね。
( ´ ▽ ` )ノ




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