喉を空気が塊で通り過ぎる音がした。


その後に敦賀さんが絞り出すように言う。
「でも………それでも、キョーコをはなしたくない。キョーコがいないと………もう、息も出来ない………」


はなしたくない?息も出来ない………?それは、ほんとに………最上キョーコですか?
だって、あなたの心にいるのはキョーコちゃんなんでしょ?


後悔?しましたよ。だって………だって、キョーコちゃんなら朝に横でため息ついたりしないんでしょ?その腕に抱いて神々しい笑顔で微笑むんでしょ?
そう思ったら………知らなければ良かったって………敦賀さんに抱かれてその腕に囚われる喜びなんて知らなければ………あの幸せな夜がなければ………
お祝い出来なくても………横にいられなくても……泣いて縋って困らせたりしないって思ってたのに………
敦賀さんをとらないでって思ってしまった。まだ、見たこともないキョーコちゃんを妬んで羨んで………
でも、私じゃ敦賀さんは幸せになれない。………ため息ばっかり。


「ふぇっ………はなしって………ふぇぇ…」
気がついたら子どもみたいに泣きじゃくってしまっていた。
敦賀さんが両手を押さえ込んでるから顔も隠せない。
しあわせ…だった…のに……あい…されてっ…るって……おもっ…のに…ため息、ついてたもん………つっるが…さん…あさ、ダメ息ばっかで………だきしめても……くれな…ぃ」


涙で視界が滲んで敦賀さんがどんな顔してるかわからない。
きっと、ここまでお子ちゃまだと思ってなかったって………呆れて、困ってるんだわ。そう思うのに泣き止むことが出来ないくてグスグスと鼻を鳴らす。


ふと両手にかかる重さがなくなった。と、思ったら苦しいくらいにぎゅうぎゅうと抱き込まれてた。
「いやぁ………も、やなの……ほかのひとの…かわりは…やな…の」
いやだと訴えてるのに、敦賀さんの腕に更に力が入って身じろぎも出来ない。




「ごめん………ごめん。俺が、不安にさせた………ごめん」




この人は何を謝っているんだろう?
その時、敦賀さんが震えているのを感じた。






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